変化を柔軟に受け入れる必要性。新社長が考える工務店のあり方

変化を柔軟に受け入れる必要性。新社長が考える工務店のあり方

インタビュー:藤野 龍司(ふじの りゅうじ)
株式会社近藤工務店 代表取締役社長


長くこの地域の住宅を施工してきた株式会社近藤工務店に新たな代表として就任した藤野氏に、これからの展望を聞いた。


代表になられる前の経歴と社長就任にあたっての思いをお聞かせください

私は1996年の4月に入社し、入社後すぐにFPコーポレーションで働きながら約2年間勉強してきました。正式に近藤工務店で働き出したのが、1997年の10月からになります。その後、設計や現場管理に携わり、工務部長、常務と経験し、昨年の6月に代表になりました。

営業出身の代表が多い中、技術畑からのスタートになります。

先代の社長(現取締役会長)も、どちらかというと技術ということもあり、元々現場や技術を知っていた方が良いという所が、多少はあるのかもしれません。営業がどんなに良いこと言っても、出来上がったものが全然違ったら、話になりません。自分のところの商品がどんなもので、どんな精度なのかを知らずにやるような仕事ではないと考えています。

実際代表となり、大変なことも含めて、思っていた事とは違い、自分の考えが甘く、思っていた以上に大変だなと感じていますね。代表がここまで違う景色を見ているとは思っていませんでした。

常務だった頃から、結構任せてもらっている部分っていうのがあったのですが、背負っているものがより重くなったと感じますね。いままでは最終的に社長がいると思いながらやっていた部分があったのだと感じています。責任の所在と覚悟の違いがありました。

プレッシャーはもちろんありますが、それは良い意味で捉えており、まだまだ成長していかなければならないと思っています。

今後の展望や会社のビジョンについてお聞かせいただけますか?

業界全体において、状況的にはあまり良くありません。全国的に集客が減少しており、人口ピラミッドもこの状態ですから、新築住宅の需要が減少していくでしょうし、様々な課題もあります。

社会的には、コロナが5類に移行となり、さまざまな業界がコロナ禍前の状況に戻ってくるという風潮でしたが、コロナ禍の期間はみなさん家にいる時間が長かったのもあり、住宅業界に限ってはそんなに状況は悪くなかったと感じていました。

しかし、コロナ禍が開け、家の中から外に人の関心が向き、この業界は厳しさが増してきたように思います。どこの企業もそうでしょうけど、一番はインフレの影響が大きいです。建築業界に限った話ではないと思いますが、業績の良いところと悪いところの二極化が進んでいますし、この状況はより加速していくと思っています。近藤工務店は、もちろん前者であり続けなければいけないですし、そのための方法を考えていかなければいけないと思います。

日々ニュースを見ていると、先の見えない時代(VUCA)だと言われていますが、今に限ったことではなく、大事なのは変化に対して否定的になるのではなく、柔軟に受け入れていくことだとだと思います。変化に対してどう対応していくかを考え、その変化に対応できたところが最終的に残っていくと考えています。

もちろん変化すると言っても、これまで大切にしてきた部分を、捨ててまでとは思いません。大切にしなければいけないところは変えることなく変化させ、その中でどう対応していくことが大事だと思います。

これまで弊社を信用して建てて下さったお客様は、1,100家族以上になります。お客様にとってもし会社がなくなると、何かトラブルがあった時、誰にどうやって対応してもらえばいいのか困ってしまいます。そういった点でも、我々近藤工務店はこれからも永続的に存在しなければなりません。

また、これからも当社を選んでもらうためには、単純に変化していくお客様のニーズに対応していくことが重要だと思いますが、結局、私たちが支持されているのは、性能の良い住宅をずっと変わらずに提供してきたからだと考えています。

2023年に省エネ法が改正され、断熱等級4が最高グレードでしたが、5〜7までの新しい等級が新設されました。2025年には省エネ基準への適合が義務化され、断熱等級4が最低基準となります。国としても性能を重視していますし、私たちとしても性能が最も重要だと考えてきていましたので、当社がこれまで『高性能住宅を提供する』という方針は間違っていなかったのと思います。

当社で扱うFPの家の断熱材であるFPパネルは、断熱等級はまだ最高グレード7には届いていませんが、今後、それに対応した、仕様の変更を考えております。また、言葉では伝えられない部分が沢山あるので、実際に見て体感していただき、その性能をお客様に伝えることのできるモデルハウスの建築も考えています。

住宅を建築する際には、長く住んでもらえるような家を建てる必要があります。外側や内側の見えている部分は、比較的交換や修理が容易ですし、設備機器も一定の期間が来れば交換することが出来ます。しかし、目に見えない部分の構造や断熱性能は、簡単には変えられないので、そういった目に見えない部分をしっかりと間違いないものにしておかなければならないと考えていますし、それはこれまでもやってきたことです。

昨年に当社で建てたFPの家をリフォームさせていただく機会があったのですが、随分前に建てた家でしたが、性能面では全く変わっておらず、これまでやってきたことは間違ってなかったという確信を持つことができましたね。

会社を必要以上に大きくしたり、業績を上げることに注力するのではなく、職員にとってより良い会社にしていきたいと考えています。そのためにはより良い環境づくりや、人財として次のステージに進むための場が必要になって来ます。そういった意味では、必要に応じて新たに出店ということも考えられますし、事業の拡大ということも、今後もあり得ると思います。現状維持は衰退だと考えているので、常に上を目指していきたいと考えています。

(取材/2024年1月23日)


【企業情報】
株式会社 近藤工務店
営業時間 10:00〜17:00
定休日 水・木曜日
標津郡中標津町東5条南11丁目1