町長に聞く ─ 人口減少と様々な取り組み
各方面の産業弱化と少子化を防ぐための政策とは
人口減少がもたらす影響と長期的な視点での計画と取り組み
インタビュー:西村 穣(にしむら ゆたか)
中標津町長
少子高齢化と人口減少による地域への影響は、数十年前から課題とされ、数々の議論や対策が取られてきた。しかし、その波は止まることを知らず、自治体では更なる対応と対策に迫られている。
人口減少 ─ その対策とは
一番の問題は人口減少であり、国立社会保障・人口問題研究所が出した将来推計人口の数字を見ると、その減少は道内一律ではなく、札幌周辺に人口が集中しています。
人口の減少傾向がますます深刻化する中、地方が今後どのように対応していくかは非常に重要な問題です。亡くなる方が多くて「ただ減る」だけではなく、生まれてくる子供が少ないという状況が問題視されています。
中標津町では、年間約300人の人口が減少しました。そのうちの約130人は自然減、つまり亡くなる人が生まれる人よりも多く、残りの約170人は、進学などで地域を離れる人と考えられます。
このような状況は道内のどこでも見られます。中標津町単独ではまだ減少率は低いのですが、周辺の町との連携が深い町であるため、将来に向けて大きな影響が出る可能性があります。
このような影響を考えながら、単に次の一手を考えるだけでなく、将来に向けてどのような問題が発生するかを考える必要があります。その問題に対応するために、さまざまな政策や事業を展開する必要があります。これらが今後の課題と考えています。
そのため、長期的な視点での計画や取り組みが必要です。今後、間違いなく、さまざまな領域でのダウンサイジングが必要となるでしょう。
例えば、学校の数や施設なども同様です。これらの施設は、圧倒的に町民が利用しているものが多いので、必要な施設やサービスを適切に提供するためにも、適切なダウンサイジングが求められます。
存続すべき施設やサービスもありますし、それらを維持するためにはどのように対応するか、という議論が重要です。このような議論は職員の中でしっかりと行われるべきですし、それをうまくまとめることが大切です。
職員が内外の状況を十分に把握し、地域のニーズや資源を考慮しながら、持続可能な解決策を模索することが必要です。このプロセスは地域の発展と繁栄にとって重要な役割を果たします。
産業と地域経済への影響
第1次産業は地域経済の基盤として非常に重要です。町や地域としては、経営は各々が行うものですが、長期的な視野で考えると、道内の第1次産業の生産額が重要な指標となります。
例えば、根室管内の第1次産業の生産額は道内の約10%に相当します。次に十勝とオホーツク地域が大きな生産基盤を持っています。その他にも、空知地域や上川地域なども大規模な生産基盤を持っている地域です。これらの地域は豊富な資源や産業の多様性を持ち、地域経済に多大な価値を生み出していると言えます。
地域経済で生み出される利益や資源をうまく活用する場所は重要です。農業や産業における機材や資材の供給、そして、その他の活動や業務における需要を満たすために、地域内に適切な施設やサービスが必要です。
また、地域内で利益や資源を使って地域内で生活を豊かにすることも重要です。農業機械を買うために遠くまで行くことや、食事に行く場所がないのは不便です。
第3次産業は、地域経済において非常に重要な役割を果たしています。特に中標津のように商業基盤が整っている地域では、これらの産業が地域の発展や住民の生活の質向上に貢献しています。そのため、これらの産業を維持することはとても大切です。
しかし、人口が減少してくると、これらの産業に従事する労働力が不足してきます。特に第1次産業の労働力も含めて、地域全体の労働力が減少すると、商業やサービス業にとって大きな影響が出てきます。このような状況を考慮して、地域経済の持続可能性を確保するためには、労働力の確保や育成、また効果的な人材の活用などに取り組む必要があります。
こういった課題に対処するためには、さまざまなアプローチが必要です。海外の人材の活用はひとつの方法ですが、積極的に受け入れることが難しい場合もあります。そのため他の地域からの人材を呼び寄せることも検討に値します。
人口ピラミッドの変化を考えると、将来的に労働力が減少していくことが予想されます。このような状況下で、労働力を確保するためには、教育や技術トレーニングの充実、働き方改革や労働環境の改善など、内部からの取り組みも重要です。また、地域の魅力を高めて若者や外部からの移住者を引き寄せる施策も必要です。地域社会全体で協力し、人口減少や労働力不足に対処するための包括的な戦略を構築することが重要です。
人口ピラミッドの変化は、どこも少子高齢化が顕著に現れ、逆三角形となっています。中標津町の人口ピラミッドは、やや不均衡であり、特に40代の層に膨らみが見られ、これは良い傾向です。
このような年代の膨らみは珍しいです。人口ピラミッドが偏りを示すことは、将来的な社会構造や労働力の問題を考える上で重要な情報となります。
しかし、女性の数が圧倒的に少なく、これが少子化の一因となっています。少子化の原因はさまざまな要因が関与していますが、地域において女性の数が減少していることは、生まれる子どもの数も減少する要因となります。特に札幌以外の地域では、このような傾向が顕著です。このような状況を踏まえて、地域全体での対策や支援が必要です。
少子化による影響とその対策
少子化の原因についてはさまざまな見解がありますが、そのひとつとして子供を産み育てることへの対策です。子育て支援や育児休暇制度、保育施設の整備など、子育てを支援するための政策や施策が不十分であったり、利用しにくかったりすることも少子化に繋がっています。
また、働き方や生活環境の変化も少子化に影響を与えていると考えられます。経済的な不安定感や働き方の選択肢の制限、住宅事情の厳しさなどが、子供を持つ意欲や子育てをしやすい環境の確保に影響を与えているということもあります。
女性が大学を卒業して社会に出る場合、その地域に帰ってきて活躍できる場が限られていることも問題です。多くの企業や組織がまだまだ男性中心の組織文化であり、女性が管理職や幹部に昇進する機会や環境が不足していることが、女性の活躍を阻害しています。
女性が自己実現やキャリアを追求するためには、その地域や社会での活躍の場が充実していることが重要です。女性の働きやすい環境やキャリアパスを整備し、企業や地域社会が女性の活躍を積極的に支援することが必要です。また、男女平等を推進する文化や制度の見直しも重要です。
確かに、過去には女性が子供を産んだ後に職場を辞めることが当たり前とされていた時代がありました。これは「産休明けに復帰しない」、「子育てのために仕事を辞める」といったステレオタイプな考え方が浸透していた時代です。
しかし、近年では女性の社会進出や働く女性の増加に伴い、このような考え方が変化してきています。法律によって産前産後の休暇や育児休暇が整備され、企業や組織も女性のキャリア支援やワークライフバランスの改善に取り組んでいます。
女性が仕事と家庭の両立をしやすい環境が整備されることが、社会全体の発展にとって重要です。しかし、子供ができて休暇を取ることで給料が減るという現実があります。育児休暇や産前産後の休暇を取ることで、収入が一時的に減少することは、多くの女性が直面する問題です。
このような状況が子供を持つことの喜びに繋がらず、むしろ罰ゲームのように感じられることがあるという指摘もあります。
女性が安心して子育てと仕事を両立し、自分の生活やキャリアを選択することができるような社会の実現が求められています。
このような問題に対処するためには、政府や地方自治体、企業、地域社会全体が協力して、子育て支援や働き方の改革、住宅環境の整備など、包括的な対策を取る必要があります。
現在、中標津町では町内の中学校を卒業する段階で、およそ70%の生徒が管内の高校へ進学します。
また、生まれてくる子供の数が減少していると、将来的に学校の生徒数も減少することは確実です。例えば、今年生まれた子供は、16年後には高校生になります。
行き来のある4町で見ると、令和5年度の管内4町の6つの高校入学者数は合計で341人ですが、この子供たちは平成19年に生まれた子供たちで504人いました。転出したり高校を管外に求めて32%減少しています。
同じように、令和4年に生まれた子供264人が令和20年度に高校に進学すると仮定しますと、同じ率だと180人になります。1クラス30人としても6つの高校に6クラスです。
この数字を見ても、学校ごとの運営や教育の質を維持するためにはどうすればよいか大変難しい問題です。
将来に向けて、地域の特性やニーズに合わせた教育や社会インフラをどのように整備していくか、そしてどのように進学者数や生徒数を確保するかについて検討が必要です。
人口減少に伴うさまざまな課題に対処するための施策や支援がさらに重要になります。
人口減少の背景にはさまざまな要因がありますが、地域ごとの特性やニーズに合わせて、地域全体での取り組みが必要です。
(取材/2024年1月15日)