インタビュー:後閑 久美子(ごかん くみこ)
フロリナ菓子工房 代表
2023年10月、住宅街にひっそり佇む菓子工房がオープン。生ロールケーキを中心に、焼き菓子などの手作り洋菓子を販売している。
幼少期からの夢を胸に抱き、家族や社会の制約にも負けず、独自の道を切り拓いてきたオーナー。どんなお店なのか、彼女はなぜお菓子作りを始めたのか話を聞いた。
生ロールケーキ店を始めたきっかけ、なぜロールケーキを選びましたか
子供の頃からずっと抱いていた夢と目標、それは自分のお店を持つことでした。しかし、両親からはお菓子屋で働くことが許されず、高校卒業後も製菓学校へ進むこともできませんでした。そこで、広く食品に関する知識や衛生、管理のスキルを学べる短大で食物栄養学を学び、栄養士の資格を取得しました。
就職活動の際には栄養士としてのキャリアも考えましたが、自分の本当にやりたいことを再び考え、親族の反対を受けながらも短大を卒業後、洋菓子店で働くことを決意しました。結婚し北海道に移住し、子育てに専念する中で、自分のお店を持つ夢が一時遠のきましたが、子供たちの応援もあり、50歳という年齢になった今、ようやくその夢を実現できました。
お菓子作りには様々な種類に挑戦してきましたが、最初はアップルパイのお店を考えていました。しかし、なぜロールケーキに決めたのかという理由は、ロールケーキがひとつの形に完成されていて、日本で昔から親しまれているお菓子であり、老若男女に広く認知されているからです。また、生地や中身のクリームを変えることで様々なバリエーションのロールケーキを作ることができ、1人で製作販売するスタイルにも合っていると考えました。
ロールケーキはおにぎりや海苔巻きのような感覚で、一つのお菓子として完成されています。生地とクリームを組み合わせ、様々な味にアレンジできるため、お客様には親しみと安心感があり、選ぶ楽しみが広がります。形状はカットして個包装されており、選ぶ楽しみと気軽に食べる便利さを重視しています。
生ロールケーキの特徴、そのほかに提供している商品について教えてください
自宅用の購入であれば、冷蔵庫に保存することでいつでも手軽に食べられる利便性を考慮しています。また、お使い物にも適しており、自宅用とお使い物の購入比率は半々ほどです。長いものに関するご要望もお寄せいただいており、予約すれば対応可能です。
ロールケーキは製作当日に販売し、添加物を一切含まない純粋な動物性の生クリームを使用しているため、賞味期限は当日中に設定しています。要冷蔵商品であることをお伝えしていますが、購入後の保存状態は把握できません。食中毒予防のため、賞味期限を購入日当日中にしています。
素材にはこだわり、バター、小麦粉、生クリームなどは高品質な国産や北海道産を使用しています。特に卵にはこだわりがあり、味や仕上がりに影響があるため、以前は中標津のコッコ屋さんの玉子を使用していました。現在は同様の品質を持つ玉子を帯広のくさなぎ農園さんと遠軽の平岡農園さんから取り寄せています。卵の違いによる味わいの変化を楽しんでいただけるよう心掛けています。
卵白の余剰利用として、マカロンの製作にも力を入れています。マカロンは寝かせることでより美味しさが引き立つため、様々な要素を工夫し、お客様が購入しやすく楽しめる商品に仕上げていく努力を続けています。
お菓子教室のこれからの運営についてどのようにお考えですか
自分のお店を持ちたくても、子育てや家庭の事情でどうしてもできなかった30代に、少しでも自身の勉強のためにと自宅でお菓子教室を始めたのは2008年です。翌年2009年からは中標津総合文化会館しるべっと2階実習室を使って、サークル団体としてスイーツクラブを立ち上げ、お菓子づくりを教えてきました。
毎月メニューを決めて、そのお菓子を作りますが、教えるからには自分で考えたレシピでなくてはいけないと思い、自分のオリジナルのレシピを作って様々な菓子を参加してくださる皆様に伝えてきました。スイーツクラブを毎月行っていて一番良かったことは、製作後に皆で試食をするのですが、その反応を直に見ることができることでした。
ただおいしいのと、本当においしいと感じる方の反応というのは違うので、とても菓子製作においては勉強になりました。皆さんの反応から、年齢による好みだったり、地域の方々の好む味わいはどのようなものかを知り感じることができました。私が若い頃に東京で働いていた洋菓子店の味とはまた違うかたちを好まれるというのもわかり、参加してくださる皆さまから多くのことを学んでいきました。
2009年から2017年までスイーツクラブの活動は続けていましたが、子どもの進学のために北海道を離れた時に活動を休止しました。そして、それからもコロナのために再開することができなくて、6年余りも活動を休止してしまいましたが、フロリナ菓子工房を立ち上げると同時にスイーツクラブも再開させました。 長いこと休止していたにも関わらず、変わらずまた参加してくださる皆さんは、私にとってとてもありがたい大切な存在です。
お店をオープンさせてから時間的にスイーツクラブも行うのは少し大変ではありますが、そこはまた私の学びの場でもあるので、変わらずスイーツクラブも継続させて行こうと思っています。新規の方も参加しやすいように、開催日をもう少し増やしてみることも考えています。
今後どのようなお店にしたいですか
フロリナ菓子工房は自宅で個人経営をしているお店なので、多くの商品を提供することは難しいですが、逆に言えば、個人店ならではの柔軟性があり、定休日でもバースデーケーキなどのご注文を承っています。受け渡しの時間帯も朝でも夜でも、お客様と相談の上、臨機応変に対応しています。これは個人店の強みであり、お客様にとっても利用しやすいのではないかと考えています。
私が作るお菓子はシンプルで良質な素材を使用しており、お子様のおやつにもぜひ利用していただきたいと思っています。自分のお菓子で子どもを育てた経験があり、お菓子は子どもたちの心や体を育むひとつのツールとして優れていると感じています。お子様の成長や特別なシーンに、フロリナ菓子工房のお菓子をご利用いただけたら大変うれしく思います。
フロリナ菓子工房が町内外の方々にとって役立つお店であり、おいしくてうれしい優しい気持ちになるような、お菓子をずっと提供し続けていきたいと思っています。
(取材/2024年1月19日)
夢を追い求めた苦難の日々を経て、自らのお店を持つ喜びをつかんだ。地域の方々の喜びや笑顔を支える存在として、今後も柔軟かつ心温まるサービスを提供し、おいしさと幸せをお届けてくれるだろう。
【企業情報】
フロリナ菓子工房
営業時間 10:00〜15:00(売り切れ次第終了)
定休日 火、金、土曜日、臨時休業有
電 話 080-9096-0349
標津郡中標津町東10条北7丁目1