インタビュー: 菊池 憲一郎(きくち けんいちろう)
株式会社 寿宴 代表取締役
結婚式や法事、様々なイベントなどの集まりで利用されてきたウエディングプラザ寿宴が閉館し、昨年新たにエゾ鹿肉をはじめとした商材の販売を㋖菊池商店として開始。新事業を始めた経緯や、今後の展開、目標を聞いた。
ウエディングプラザ寿宴閉館と新事業を取り組みことになった経緯をお聞かせください
2020年、新型コロナウイルスの拡大に伴い、緊急事態宣言が発令され、発令後の予約がすべてキャンセルになりました。当初は年末までには回復するのではないかという期待から、我慢して乗り越えていくことを考えていました。テイクアウトのお弁当やオードブルなど、出来る事をしっかりやってきました。また、新事業として焼肉店の経営をスタートすることにより新しい業種へ参入することもできました。地域の皆さんに支えて頂いたことへの感謝はとても大きいです。しかしこの状況が収束した後のこれからを考えた時に、新しい事業を考えはじめました。
昨年は株式会社寿宴50周年の節目の年でした。長い間地域の皆様に支えて頂いたウエディングプラザが時代の変化とともに変わりつつあると感じていました。新たな事業を考える中、ここには充実した調理場と機材が備わっています。コロナ禍で新たな挑戦ができるかを模索していた中、これまで地域の皆さんに召し上がっていただいたお料理を、冷凍食品として提供する惣菜製造部門の創設を考えるようになりました。
エゾ鹿をメインの食材にしたのはどういった理由からでしょうか
2008年に中標津でエゾ鹿肉を扱う料理コンテスト『なまら旨いシカ肉料理グランプリinなかしべつ』がおこなわれ、その料理コンテストでグランプリに選ばれたメニューがあります。当社は宴会料理の一環として、シチューや炒め物など、ひと皿ひと皿の料理を通じて、地域の特産品を味わっていただきたく、エゾ鹿メニューを提供してきました。
こういった経緯からエゾ鹿を活用した料理を冷凍食品として販売することを考えました。高い繁殖力で頭数が多く、森林被害にとどまらず、酪農被害、交通被害とエゾ鹿による被害が増える中、お肉としては理想的な栄養価があるエゾ鹿ですので美味しく料理し、地域の味として多くの方に食べて頂きたいと思い、先ずはふるさと納税の返礼品として提供することを決めました。
昨年11月末をもってウエディングプラザ寿宴としての施設は閉館しましたが、新たに「㋖菊池商店」という名前で総菜製造部門をスタートすることにしました。エゾ鹿を使用した料理メニューを冷凍食品として、ふるさと納税の返礼品に登録し、新たなスタートを切りました。将来的には、エゾ鹿以外の食材もメニューに加えていく予定です。
現在はインターネットのECサイトでの販売と焼肉店の店頭販売をおこなっており、北海道のアンテナショップ等とも商談中です。これからの展開に期待しています。
現時点ではまだまだPR不足を感じるところもありますが、需要は多くあると考えています。
エゾ鹿のシチュー
カラダ喜ぶ鹿肉の春巻き
新たな事業を展開するにあたってどういった面で大変でしたか
料理の商品化です。これまでは調理場のスタッフが料理をお皿に盛り付けて、お出ししてきた料理を今度はご家庭で美味しく食べていただく様に商品の内容量や栄養成分表示、賞味期限など、ラベル表示に関する作業も考慮しながら作る必要があるため、新たな挑戦となりました。賞味期限を確定するための検査が毎月行われています。一気に大量生産することは難しいですが、着実に進めている状況です。
全ての業務を完璧にこなすのはまだ難しい面もあります。商品を広く知ってもらうための周知や、販路を増やすことが課題です。自社商品を取り扱ってくれる販売先を見つけ、より多くの人々に商品を提供できるようにしていく予定です。
現在はどのような商品を提供されていますか
現在は5種類の商品を販売しています。エゾ鹿のシチュー、醤油煮、ニラ炒め、春巻き、シュウマイです。今後も商品ラインナップを増やしていく予定です。
試食や実際買っていただいた方々からは概ね好評です。もちろん、エゾ鹿肉を食べ慣れていない人には苦手意識があるかもしれませんが、鹿特有のクセを極力取り除く為に調理過程で工夫を施して食べやすい商品に仕上げています。㋖菊池商店の『エゾ鹿入門編』と名付けております。息の長い商品にしていきたいです。皆さん応援よろしくお願い致します。
(取材/2023年8月18日)
【企業情報】
㋖菊池商店(株式会社寿宴)
TEL 0153-72-9611
標津郡中標津町東3条北1丁目8番地