IT専門学校設立へ学校法人岩谷学園の活動の今

IT専門学校設立へ学校法人岩谷学園の活動の今

中標津町に高等教育機関

インタビュー:折笠 初雄(おりかさ はつお)
学校法人 岩谷学園 本部長


 神奈川県の横浜市を拠点に、中標津町で「岩谷学園ひがし北海道日本語学校」を運営する学校法人岩谷学園が、新たな高等教育機関の設立に向け活動をしている。
 昨年9月に「岩谷学園ひがし北海道IT専門学校」の設置計画を北海道庁に申請し、11月の私立学校審議会で、設置計画の承認を受けた。
 2024年4月開校を目指し、活動を続ける学園の取り組みの今を聞いた。


なぜ中標津町に専門学校を

 根室管内には、高等教育機関がなく、高校卒業後は東京や札幌に進学してしまいます。中標津町は、高等教育機関を必要としていました。誘致活動を続けてきたが、なかなかうまくいかないとのことでした。

 岩谷学園理事長と誘致の会の長谷川会長の話し合いもあり、学園としても前向きに考えていましたが、たくさんの課題がありました。しかし、誘致活動は地域経済界、さらには中標津町まで巻き込んで、町全体が高等教育機関を求めていました。学園としても町の応援や支援、熱意に打たれ、学校をつくろうとなりました。

 すぐに専門学校をつくるのは難しいので、まず日本語学校を開設しようとなりました。岩谷学園は世界にネットワークを持っていて、ブランドもあり、日本に来たいという留学生がたくさんいます。岩谷学園ひがし北海道日本語学校をつくり、留学生を呼び込んで、その先に地元の高卒者が通える専門学校を開設するという計画を立てました。今、その動きがやっと実を結んできたということになります。

どのような学校ができるのか

 正式には「岩谷学園ひがし北海道IT専門学校」という学校名で開設します。昨年11月、北海道庁から設置計画承認をいただきました。岩谷学園はITの専門学校をこれまでも運営していましたので、ノウハウがあります。

 この地域の酪農は日本一といわれる、ICTを使ったロボットや最先端のスマート酪農を導入している地域です。スムーズに対応できる人材を育てることが、地域にとって必要になってくると思います。

 「地域未来情報テクノロジー科」という将来・未来を目指した情報テクノロジーを使って、どう社会を切り開いていくかを学んでいただける学科を設けます。「農業酪農ITコース」「商工業観光ITコース」という2つのコースを設けることにより、高校生にわかりやすく、学ぶ内容が見えるよう設計しました。

 今後、若い世代がスマート酪農に携わっていけるように、地域産業の特性に合わせた農業酪農ITコースをメインに計画しています。

 中標津町はコアなタウンで、さまざまな地域からひとが集まってきます。経済人口が多く、商工業も発展していますし、ビジネスが盛んに行われています。

 商工業観光ITコースではビジネスに関するITを学び、インバウンド向けの観光にも対応可能な人材を育成できる環境を整えていきたいと考えています。

開校時期はいつ頃

 計画の承認はいただきましたが、開校には認可申請が必要です。今年の11月に開かれる予定の北海道の審議会で、計画通り準備ができていれば認可をいただけます。

 認可後、学校として生徒の募集活動を行うことができます。地域未来情報テクノロジー科は定員60名の予定です。まだ募集活動はできませんが、2月下旬から道東を中心に学校説明会を行います。岩谷学園ひがし北海道IT専門学校はこんな学校ですとアナウンスはできるので、まずは知っていただくことからスタートします。

教員の手配について

 学生数に対し、最低限必要な専任教員数は4名です。事業計画を作成し、授業内容を模索しながら、必要な教員数を割り出していきます。校長に関しては、北海道庁に校長候補者名を提出しております。神奈川県の岩谷学園から、開校前に校長が赴任する予定です。

 地域に根ざした地域で育つ専門学校を目指しています。近隣で教えられる資格がある方がいれば、専門分野の先生をお願いしたいと考えています。仕事をお持ちの方でも、非常勤で週1回ですとか、夏期のみの特別講師なども考えています。専門性のある分野については、現地の方々に頼らざるを得ません。

 専修学校では、専修学校設置基準に専門課程教育条件(表)が規定してあり、該当していれば先生になることも可能です。

 地域のため、将来に向けて人材を育てていく、想いを共有して、地元採用の先生に承継していきたいという気持ちはあります。

どのような施設に

 建設地は、中標津町東7条南9丁目の敷地1万3、118m²を中標津町から無償貸与いただき、施工は校舎の建設見積説明会を行い、地元の建設会社に見積もりを依頼している段階です。建設開始の具体的な日程はまだ決まっていません。認可申請をいただくためには、10月までの校舎完成が必要となります。建設費の高騰もあり、課題はありますが前に進めていきたいと思います。

 施設は1学年2教室必要なので、2学年で4教室と各コースで利用する実習室が必要となります。

 農業や酪農の実習は、この地域には最先端のものがありますので、施設に出向き実学を学ぶ計画です。

現在の日本語学校の状況は

 次年度は、入学定員50名に対し、51名の合格を出しました。全員入れてあげたいですが、外国人は入国管理局の許可が必要です。

 これまで2年間で82名の合格を出し、入国許可申請書類を提出しましたが、入国できた学生数は10名です。入国許可については、こちらが推し量ることはできないので、期待するしかありません。

 次年度は、モンゴル、スリランカ、ミャンマーからの応募があります。現在はスリランカとバングラディシュの生徒が在籍しています。国籍が固まってしまうと、国際性が失われるので、いろいろな国籍の人が集まって勉強するという環境が必要です。切磋琢磨するので、日本語を覚えるのが早くなります。

 町としても、いろいろな国の人が生活し、アルバイトなどをしていくことで国際性が高まり、開かれた町になっていくのではないかと思っています。

これから開校までの活動

 新たな専門学校では、2月下旬から9月まで、学校説明会の計画を立てています。学生の募集ができるのは、早くても今年の12月からなので、進路が決まっている生徒さんも多いと思います。

 専修学校設置認可後は、学校に直接出向いたり、SNSや媒体を利用して、さまざまな募集活動を展開します。校舎完成後は、実際に来てもらって体験授業や模擬授業なども計画しています。

 若い世代の就農を増やしていくためには、省力化し労働負担を軽減していくことが必要だと思います。IT専門学校なので、大変だとかきついといわれる作業の省力化を数値化し、数字を読み取ることで、農業経験がなくても、興味を持ってもらえるプログラムを考えています。酪農業は裾野を広げることに取り組まなければなりません。これからの時代のITを、うまく活用できる学生が増えてくれればうれしいです。

 中標津町は道東の中心的な町です。人口減少が少なく、人々が活気のある生活をしています。外国人学生たちが町に来ることで国際性も豊かになり、高等教育機関ができることで、若者が増えます。この町で就職してもらうことが一番ですが、この町に住んで、観光資源、自然の美しさ、経済力を目の当たりすることで中標津町のファンを増やすことに繋がります。

 私たち岩谷学園は町と一体となり、「夢が広がるまち」というPRをしていきたいと思います。

(取材/2023年1月18日)


これまでにも岩谷学園誘致の会の活動を追ってきた。学園と誘致の会、そして町が一体となり進めてきた、専修学校設立が現実となりそうだ。高校卒業後の新たな選択肢。高齢化と人口減少、地域が抱える問題に対し、明るい兆しとなることに期待したい。