医師不足に新たな光 ─ 新クリニック開院
患者との絆を大切にし、地域医療の未来に貢献
インタビュー:久野木 健仁(くのぎ たけひと)
なかしべつ内科クリニック 院長
2024年2月13日、中標津町に誕生する「なかしべつ内科クリニック」。医療施設が不足している地域において、新たな医療の光が差し込む。なかしべつ内科クリニックはどのような特徴を持ち、患者にとってどんなサービスを提供するのか。
これまではどのように医療に関わってきましたか
出身は東京で高校までを過ごした後、旭川医科大学に進学しました。卒業後、旭川医科大学病院消化器内科に入局し、3年目から中標津町立病院で内科医として勤務させていただきました。この期間中、富沢内科医院の富澤古志郎先生には患者さんのご紹介や勉強会で大変お世話になりました。また現在の町立病院院長久保光司先生から一般内科・消化器内科として多くのことをお教えいただきました。その後、勤務先のローテーションで名寄に行った後、再び旭川医大に戻りました。この期間も、月に一度ほどの頻度で中標津に出張し、継続して関わりを持っていました。
東京出身ですが、北海道の中標津での勤務医の経験を経て、地域医療に深く関わってきました。富澤先生や久保先生からのご指導で、専門的な知識や患者ケアにおいて多くを身につけさせていただき、それが現在の職務に礎となっています。
なかしべつ内科クリニック開業の経緯
私は医学の道を進む中で、患者さんとの信頼関係が治療やケアの一環であると深く感じています。患者さんが安心して自分の気持ちや症状を話せるような雰囲気を作り上げることが、的確な診断や治療に繋がると考えています。
患者さん一人一人の状態やニーズに真摯に向き合い、専門的な知識を提供すると同時に、患者さんの立場に立ってわかりやすく説明することを心がけています。
将来の進路については模索していましたが、臨床医として外来診療に携わりたいと考えていました。患者さんとの対話を通じてやりがいを感じることがあり、その方向性を追求していきたいと考えていました。もちろん、場合によっては中標津町立病院の常勤医になるという選択肢もあったと思います。開業という道は考えていませんでした。
富沢内科医院の閉院のお話を伺い、その後、富澤先生と話し合い、ここで内科医院を開院してみないかと提案を受けました。正直、驚きと戸惑いがありました。
しかし、中標津の医療のリソースが不足しているというお話は前から聞いていましたし、実際に町立病院の待ち時間、クリニックの閉院が相次ぐ中、このままでは町の医療ニーズを満たせないとの思いから地域に貢献したいと思い至るようになりました。
北海道へ来て約20年になりますが,北海道の方と結婚し家庭を築き長く暮らすうちに、この地域での生活がとても心地よく感じられました。中標津には空港もあるので出張などの際に非常に便利ですし、おいしい飲食店も多いので充実した生活が送れる場所です。中標津で働けることには幸せを感じる一方、使命を感じており、地域の皆様の健康へ貢献していきたいと思っています。
スタッフの体制、どのようなクリニックになりますか
富沢先生のクリニックで共に働いていたスタッフが中心となり、スタート地点としては最低限の人数で始めます。看護師の不足が地域的な課題である中、必要に応じて徐々にスタッフを増やしていく方針です。看護師は5名、受付が2名と助手が1名となります。
中標津は無医村の状況ではないものの、町立病院の混雑が懸念され、患者が待ち時間に苦しむことがあると感じています。そのため、気軽にかかりつけ医として頼れ、かつ外来診療が効率的に提供できるクリニックの必要性を感じています。外来診療では、軽症で安定している患者にはこちらで対応し、専門的な治療が必要な場合は町立病院との連携を図り、住み分けを心がけていくつもりです。近隣地域でも医療機関が不足していることを感じ、新しい施設の検討が必要と考えています。
地域医療における貢献を積極的に進め、患者さんにとって気軽にかかりつけ医として頼りにされるクリニックを目指しています。現在のところ、当院は成人を対象に診療を行い、患者さんの多様なニーズに対応するためにはさまざまな施策を進めていく予定です。富澤先生も以前行っていた内視鏡の診療においても、提供できる範囲で積極的に取り組んでいきます。
町の要請に応じては、健康診断やワクチン接種などにも柔軟に対応し、そのためにはスタッフの数を増やす必要があると考えています。また、入院については施設的には部屋はありますが、長らく行っていないため、必要な患者さんは町立病院に転院することを想定しています。町立病院との連携が不可欠であり、保健所や地域の協力を得ながら、地域医療の発展に寄与していくために努力しています。
患者さんとの信頼関係を築くためにも、地域の声に敏感に耳を傾けながら医療不足に果敢に立ち向かうため、クリニックの運営には全力を注いでいきます。地域医療の発展に向けて、患者の健康と満足度向上に向けた継続的な取り組みを進め、地域社会と共に歩む医療機関としての役割を果たしていきます。
(取材/2024年1月11日)
富沢内科医院を受け継ぎ、地域の医療ニーズに応えるため、新たな一歩を踏み出した。患者にとって頼りにされるかかりつけ医として、地域社会と共に歩む心強いパートナーとなるだろう。