別海町生涯学習センター 町民の第3の居場所とは
別海町中央公民館の老朽化を受けて建設された「みなくる」。
込められた思いと全容。
インタビュー:石川 誠(いしかわ まこと)
別海町教育委員会 次長/生涯学習センター建設準備室長
坂下 貴幸(さかした たかゆき)
別海町教育委員会 生涯学習課 主任
生涯学習センターはどのような施設になるのでしょうか
元となる別海中央公民館は建てられてから50年以上経っていて、老朽化が顕著なことが一番大きな建設の理由です。教育関係の施設としては公民館や給食センター、スポーツ施設などがあるのですが、その優先順位の中で中央公民館の順番が来て、今回の生涯学習センターの建設となりました。
ホールに関しては、観客を何人収容できるようにするかを決めることが大きな課題でした。どうしても隣町である中標津町の文化会館をイメージしてしまいますが、それに対抗するような形は考えませんでした。中標津よりも小さく600人が収容できるものになりました。ホールがある施設としてはすでにマルチメディア館がありますが、収容人数は150人です。ただその規模もそれはそれで利用価値があるので別館のような位置付けになります。
公民館としての利用が主となりますので、ホールの他に会議室や活動室などが入ります。部屋数としては中央公民館の諸室とほとんど変わりありません。あと今まで木工室や陶芸室のような専用の部屋はありませんでしたが、今回いくつかの専用室を作りました。例えば陶芸室に関してですが、同じ別海町内で尾岱沼の東公民館と、西春別の西公民館には陶芸室があってそれぞれに陶芸サークルがあります。町民の方で他町へ行って陶芸サークルに入っている方も結構な人数がいらっしゃるということで、別海地区にも陶芸室を作ろうということになりました。
その他には、正面玄関から入ってすぐに大きなガラス張りの親子活動室という部屋があります。乳幼児とその保護者の学習会を開催するだけではなく、常にオープンの状態にして親子が自由にくつろげる場所になればと思います。
ホワイエには小中学生もいれば、おじいちゃんおばあちゃんもいて、子どもたちがキャッキャ遊んでいる。そんな、ぬくもりのある施設にできればと思います。ホワイエの壁面にはとても大きな本棚が設置されます。町内には図書館がありますので、そこまでの規模ではありませんが、全部で2千冊ぐらい置こうと思っています。本は我々行政職員が選ぶのでなく「こういった本が欲しい」「こういうものを揃えてほしい」という町民の声を聞く組織を作り、図書館の司書にも選書に携わってもらおうと考えています。
施設で使用する備品等についても、来館者の利便性を第一に考えて選定していて、ホールの椅子のサイズは通常よりは大きなものを採用しています。幅を持たせるため、既製品の中でも最も大きなサイズを選定することで、質の高い鑑賞環境を目指しています。
また、当館はユニバーサルデザインを採用した施設になっています。利き手を意識したバリアフリートイレや音声案内、補聴システムなどを採用しています。
4月1日のプレオープン後は、施設の通常利用ができますが、今進めている外構工事が終了した後の10月23日がグランドオープンになります。
別海町生涯学習センター みなくる 平面図
当初計画していた予算よりも増えたと聞きました
ここ数年の資材と人件費の高騰が原因です。予算の組み直しをする必要がありましたし、新型コロナウイルス感染症の影響で海外の工場が閉鎖となったために、資材の到着が遅れて工期の延長もありました。
飲食店などのテナントも入るのでしょうか
センターの周辺には、飲食店や、書店、小売店などが既にあり、施設内に同じようなものを取り込むことは考えていません。むしろセンターの利用者が周辺の個店により良い影響を与えられればと考えています。
また、センターとマルチメディア館、ぷらとの3つは別海地区の中心部に隣りあう形であります。商工関係はぷらと、マルチメディア館は中高生をターゲットにした施設とするなど、周辺の個店と3つの公共施設が連携する形で別海町の顔となる地区にして行きたいと考えています。中でも、マルチメディア館は中高生の居場所づくりを目指して、今後公共施設としてのありかたを含めて検討を行っていく予定です。
愛称である「みなくる」はどのように決まりましたか
一昨年に町民に公募した431案から15案に絞り、社会教育委員や学生、町民からの投票も踏まえて「みなくる」に決定しました。ロゴマークは、別海高校の美術部と協力して、町内でデザイン会社をやっている方を講師に招いてワークショップ形式でロゴマーク案を作成しました。いくつもの高校生の案の中から笑顔を模したデザインを原案として採用して、講師の方がブラッシュアップする形で、今のロゴマークができました。
センターの運営は中央公民館の方が行う形になるのでしょうか
今までの中央公民館の職員がそのまま管理と運営を担当します。現在役場内にある生涯学習課や地域で活動されている別海町社会福祉協議会、別海連合町内会などの事務局も入ることになっています。
町民の方々にはどのように利用して欲しいと考えていますか
施設を利用している人の気配が外に届くような設計をしていますので、気兼ねなくふらっと来ていただけるような、いつでも気軽に利用できる施設として、多くの方に来館してほしいと考えています。センターも街中の賑わいを作る一つの施設として、例えば学校帰りの子供たちが勉強をしたり読書をしたり、あるいは館内の無線LANを利用するなど、家庭でもない、学校でもない、第3の居場所として様々な場面で利用してほしいと思います。
(取材/2022年1月20日)