インタビュー:佐藤 大介(さとう だいすけ)
佐藤計画(タスタスデザインカンパニー)代表
デザイン会社である、タスタスデザインカンパニーが、佐藤計画として安価なキャンピングカーの提供を開始した。キャンピングカー販売に踏み切った理由や、販売するキャンピングカーはどのような仕様なのか、その価格の秘密を聞いた。
なぜ軽自動車のキャンピングカーの販売を始めたのでしょうか
軽バンをベースにしたキャンピングカーの販売は、地元の人々との交流や、当麻町を拠点とするキャンピングカービルダーであるトウマオートプロジェクトの社長との出会いから始まりました。幾度かお会いして親しくさせていただくようになり、工場見学の誘いを受けました。社長はどの方にも優しく接し、工場で製造されるキャンピングカーの品質も明白に高かったです。この出会いから、彼の人柄や商品の品質に深く惹かれ、キャンピングカーの販売を始めることを決意しました。
道内にキャンピングカービルダーは少なく、特に道東地域ではその数が非常に少ないことを知りました。この地域ではキャンピングカーの修理やカスタマイズを行う会社が不足しており、その需要が高まっていました。トウマオートプロジェクトは道東に近い場所に位置しています。
地域のお客様がキャンピングカーの売買を安心して行えるよう、地元の窓口として柔軟な対応ができるような体制をとっています。特別な規則に縛られず、自由なアプローチで着手することが可能です。この柔軟性は大きな利点がある反面、同時に責任を持って取り組むことが求められます。
道東地域はアウトドアや釣りが盛んな地域であり、自然愛好家が多く存在し、多くの人々が自分でアウトドア用の車を作ったり改造したりしています。私たちプロの視点から、より効率的で快適なキャンピングカーの作り方や使い方が提案できると思います。
キャンピングーの実車を実際に目にして触ってみることができる。
どんなシーンを想定したキャンピングカーですか
このキャンピングカーは、通常は4人乗り車として使用し、シートをひくことで旅行などの際にはキャンピングカーとして楽しむことが可能です。これにより、普段の通勤や買い物などの日常生活を通常の車で行いつつ、アウトドアや旅行時にはキャンピングカーとして利用することができます。
1人旅から年配のご夫婦まで、幅広い層を対象にしています。近年、遠出する旅行の費用が高額だと感じる声を聞くことが増えました。このキャンピングカーは、小回りが利き、維持費が安く、運転がしやすいという特長を備えており、さまざまな要望に合致しています。
自分で作るのとプロが作るキャンピングカーの大きな違いは、細部への配慮と専門知識に裏付けられた技術にあります。様々な視点、気候などにも配慮しながら設計・製作します。そのため、使い勝手や機能面で非常に優れています。プロの視点からキャンピングカーを制作し、地域のアウトドア愛好家たちに便利で楽しいキャンピング体験を提供することを目指して努力をしています。
また、キャンピングカーに防災機能を備えることで、災害時にも安心して利用できるアイテムとして提案しています。
「防災」に特に焦点を当てた商品提案の背景には、震度7レベルの地震が60〜70%の確率で発生する可能性があることにあります。この情報を受けて、災害時に備えて身の回りの整備がいかに重要かに改めて気づきました。
避難所での生活や、ペットのケアに関するテレビの報道を見ながら、自分の車にも防災機能を組み込むことが、緊急時の不安を軽減する可能性があるのではないかという発想から生まれました。
仕様についてお聞かせください
このキャンピングカーには、予備バッテリーと相互充電機能が組み込まれており、走行中にバッテリーを充電することができます。電力の制御は便利な3連スイッチで操作可能です。さらに、バッテリー残量計とシガーソケット上部のLEDライトも装備されています。バッテリーの残量表示はもちろん、室内照明としても利用可能で、明るさは調整可能です。
この仕組みにより、災害時に最低限の生活維持が可能です。走行時に発電し必要な電力を供給する一方、エンジンをアイドリング状態にして電力を貯蔵することもできます。例えば、1日の運転で予備バッテリーをフル充電し、その電力で家電や照明、テレビなどの消費電力が500ワットから1000ワットの範囲で通常通りに使用できると見込んでいます。
アイドリング時間を調整することで、バッテリーの充電量を調節できます。例えばアイドリング5時間でバッテリーが満充電される場合、その時間を基準にして備蓄できる日数を計算することもできます。
サイドテーブルはペットや荷物を置くスペースとしても機能し、必要に応じてマットも選択できます。床下収納もさまざまな用途で使用できると思います。
キッチンエリアも備わっており、シンクとコンロが設置されています。シンクからは水を容易に汲み上げて利用でき、簡単な料理も可能です。キッチンエリアの充実度により、食事の調理からコーヒーを淹れるまで、快適なキャンピング体験を提供します。
このキャンピングカーの標準装備は、快適な居住環境と多彩な機能を提供するだけでなく、お客様のニーズに合わせたカスタマイズも可能です。設計段階から最低限の機能が考慮され、災害時にも利用可能な空間が確保されています。特に、他人の視線を気にせずに過ごせる環境は、ストレスの軽減に一役買います。また、今日の社会状況において、人との距離を保つことの重要性が増しており、プライベートな空間の価値は一段と高まっています。
オプションとして、地デジチューナー付きのテレビも設置可能で、ナビゲーションやバックアイカメラも提供しています。インバーターとACアダプターは、多種多様なコンセントに対応しているので家電の利用も可能です。ほかにも窓ガラスのフィルムやアンテナも提供します。さらに、ルーフキャリアに荷物の積載スペースを確保することもできます。
外部充電ポートも装備できるので、外部コンセントを利用しての電力供給が可能です。これにより、発電による電力確保が長期間にわたって可能であり、ヒーターや電子機器の使用など、日常生活の様々なニーズに対応します。
非常に安い価格帯での提供ですが、どのようにその価格を実現していますか
トウマオートプロジェクトは、車内用の家具なども自社製作しています。素材調達から仕上げまでのプロセスを一貫して管理できるため、無駄な経費を削減し、中間コストを抑えることが可能です。このコスト削減が価格を抑えるカギとなっています。
さらに、自家製の設備を取り入れることで、キャンピングカーの使い勝手や美観に対する配慮が可能になっています。具体的には、家具や収納スペースの配置を自分たちの手で調整できるため、お客様のニーズに合わせた最適なレイアウトを提供することがでます。同時に、デザインにもこだわりを持ち、外観から内部まで一貫性のある美しい仕上がりを実現しています。
価格の面でも大きなメリットを持っています。新車で190万円で購入できる価格は、家族連れにとって非常に魅力的な選択肢と言えるでしょう。通常、キャンピングカーの価格は300万円を超えることもあるため、この価格差は大きなポイントです。足や収納スペースなど、家族全員の利用や必要な要素が揃っており、家族旅行をより楽しいものにすると思います。
将来的には、レンタカーとしての活用も計画されており、幅広い用途でご利用いただけることを目指しています。
また、実際に展示車をご用意しています。ぜひ皆さんに実際に車に乗ってみていただき、その価値を実感していただければと思います。展示車を通じて、私たちのキャンピングカーがどのような使い心地や魅力を持っているかをご体験いただけます。
(取材/2023年8月19日)
【企業情報】
佐藤計画(タスタスデザインカンパニー)
TEL 080-1879-0405
標津郡中標津町南町10-18