根室管内初となる高等教育機関が誕生

根室管内初となる高等教育機関が誕生

高等教育機関開校 ─ 地域活性化の足掛かりとなるか

新たな一歩で未来を切り拓くひがし北海道IT専門学校

インタビュー:松山 明彦(まつやま あきひこ)
学校法人 岩谷学園  岩谷学園ひがし北海道IT専門学校 校長


2023年11月24日付で、北海道知事により認可を受け、2024年4月中標津町に岩谷学園ひがし北海道IT専門学校(標津郡中標津町東7条南9丁目)が開校する。
酪農分野のIT技術を修得する「農業酪農IT」コースと、商工業や観光に幅広く対応する「商工業観光IT」コースがあり、定員は2学年であわせて120名。
根室管内では初となる高等教育機関、今とこれからについて聞いた。


専門学校設置認可が下りた際、どのような感想を抱かれましたか

専門学校設置に向けては、中標津町岩谷学園誘致の会をはじめ、中標津町役場、中標津町商工会、中標津町農業協同組合、計根別農業協同組合、中標津建設業協会など、地域の皆様方のご理解とご協力によって、北海道知事により認可を受け、本当にうれしく思うと同時に感謝の気持ちでいっぱいです。

そのため地域と一体となって、「中標津に岩谷学園あり」と認めていただけるように、しっかりやらなければという思いが強くあります。特に根釧地域IT拠点校としての役割を果たし、専門分野で活躍できる人材の育成を目指したいと考えています。

まだ中標津に来たばかりで寒さに慣れていないものの、この環境は素晴らしいです。時間がゆったりと流れ、その充実感が贅沢な気分につながります。最初は不安もありましたが、雪の斜面と木々が広がる壮大な風景に出会い、細かいことやスピード感ではなく、自分軸を大切にして生きていくことの重要性を感じました。流されやすい世の中ですが、自分の軸を持ち、町の皆さんと共に考えながら生きていくことが必要だと思いました。

専門学校のコンセプトについて教えていただけますか

日本で一番東に位置する専門学校になります。設置学科は、地域未来情報テクノロジー科でコースは農業酪農系と商工観光系のIT専門学校です。なお、こうした組み合わせの学校は日本初となります。学校のコンセプトである「楽しい教育」をベースに、ICT教育と現場での最先端技術を実習することで、「問題解決能力」と「実践力」を身につけるカリキュラムを実施します。その中でも、自ら主体的に考えながら問題解決と実践力を高めることができるように、ITを活用してプログラミングやメタバースなどの専門教育とプロジェクト学習、さらにはITパスポート、家畜人工授精師、ドローン検定などの資格取得を目指すことを特色としています。プロジェクト学習では、学生の主体性を育むとともに、実践力を高め、地域と連携した商品の開発などを行っていく予定です。そして学生の成果発表を一般公開して、地域の皆さん方にも聞いていただける準備を進めてまいります。

地域社会にとっては、ITを活用しグローバル社会でも活躍でき即戦力となるような人材の育成、地域産業をはじめとして専門分野での就職を目指す学生を育成し、町の活力の源となることを期待しています。

各産業界で最先端の仕事や研究をされている方々にも学校にお越しいただき、学生たちに、常に新しい情報が提供できる学びの場にしたいと考えています。

地域住民とはどのようにコミュニケーションをとり、期待に応えていく予定ですか

地域住民の中には、中標津町西竹にある岩谷学園ひがし北海道日本語学校が移転してきたとの誤解が生じているようです。まずはこの専門学校を広く知っていただくことが重要です。そのため、学校では専門学校をより身近に感じていただくための取り組みを計画しています。

具体的には、学校の施設や設備を地域に開放し、興味を持っていただいた方々には授業公開を行う予定です。これにより、岩谷学園の雰囲気や取り組みを直接体験していただく機会を提供し、学校と地域との交流を促進したいと考えています。ぜひ岩谷学園を活用していただき、地域との連携を深めていくことを期待しています。また地元の方々からの要望があれば、可能な限り取り入れたいとも考えています。

一方、教育現場で考えるのであれば、町内にある小学校や中学校とのプログラミングに関する授業などを一緒に実施したり、場合によっては出前授業を実施したり、近隣地域の学校と連携して情報に関する授業などへの協力も考えています (すでに実績あり)。

本校には、PC教室や実習室もあります。ガラスの扉を開けて廊下と繋げると 100人近くが入れるスペースもありますので、講演会など町の方々に利用してもらえるような場所にできたらと考えています。

現在直面している課題はありますか

課題は2つあります。まず1つ目は、岩谷学園が位置する道東の地での学校の認知度向上とプロモーションです。この美しい自然環境で提供される学びや経験に焦点を当て、寮や下宿、バスの運行などのインフラ整備を進めつつ、興味を持っていただける人々を積極的に呼び込むための情報発信が必要です。

この美しい自然環境のなかで自分自身を見つめ、そして自分の軸を確立することは、大きな意味を持ちます。日々が忙しく、流れに身をまかせることが多い中で、自分の価値観や目標をはっきりとし、それに向かって進むための基盤を築く重要な過程です。岩谷学園が提供する教育の特長や学びの魅力を的確に伝え、学生たちが自分の可能性を最大限に引き出せるような環境づくりが求められます。

もう1つの課題は、情報技術の急速な進化に対応することです。ITは日進月歩で進化しており、これに迅速に対応するためには外部講師や特別講習を通じて最先端の技術に触れ、学生たちが時代に即した知識とスキルを身につける機会を提供する必要があります。これによって、変化の激しい時代に柔軟かつ効果的に対応し、学生たちに最先端の情報技術を学ぶ場を提供できるでしょう。

地域の発展や産業育成、学生たちへのキャリア支援にどのような期待が寄せられていますか

中標津町に専門学校ができたことで、これまで高校までしかなかった地域に新たな学びの機会が提供されます。これにより、地元の高校生たちは他の地域へ行かずに進学が可能となります。初年度であることから、地元の方々には特に学校の存在を知ってもらい、ここで学びたいという意識を育むことが大切です。

経済的な側面でも、地元で学ぶことで保護者の費用負担が軽減されるとともに、岩谷学園が奨学金や免除制度を設けていることで、多くの学生がサポートを受けながら学ぶことができるでしょう。

また、この地域がスマート酪農やスマート農業などで大きな発展を遂げている中で、岩谷学園で学んだ学生たちがその技術や知識を活かして地域の発展に貢献することが期待されます。特にプログラム開発や技術応用に長けた学生が、地元の農業や関連産業に参画し、新たな価値を生み出すことで地域全体の発展に寄与することが期待されます。

さらに、商業や工業、観光など多岐にわたる産業分野での活躍も期待され、地元企業や観光協会と連携し、若い視点からの新しいアイディアや視野を取り入れた人材の育成が進むことで、地域全体の産業の発展が期待されます。岩谷学園は地域社会との協力を大切にし、学生たちが将来地元で活躍できるような環境を提供していくことが使命となっています。

(取材/2024年1月18日)


学生たちが将来地元で活躍できるような環境を。開校に向けての活動と取り組みについて、熱い思いと期待が感じられる。
地域社会と学校が一丸となり、学生たちが地元で活躍できる環境を築き上げることが、持続可能な未来への鍵となるだろう。


岩谷学園ひがし北海道IT専門学校
TEL 0153-72-3390
標津郡中標津町東7条南9丁目6番

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