コロナ感染からの再出発

コロナ感染からの再出発

誤解との闘い、 新社長の闘いと教訓 

インタビュー:山崎 誠(やまざき まこと)
株式会社 前田電気 代表取締役


2020年、新型コロナウイルス感染症の拡大は未知のウィルスとして脅威となり、感染者やその家族等が不当な差別、誹謗中傷を受ける事案が多数発生した。その中で、2021年4月に新型コロナウイルスに感染した前田電気社長、山崎氏も例外ではなかった。当時いったい何があったのか、話を聞いた。


新社長の試練|コロナ感染と企業への影響

私は2021年4月に社長に就任し、その直後に新型コロナウイルスに感染するという出来事が私たちの企業に大きな衝撃をもたらしました。私は幸運にも症状は軽く、熱が1日で収まる程度でした。しかし、感染が急変する可能性もあるとの情報を受け、慎重な対応が求められると判断し入院を選択しました。

入院中、私の周囲からは感染経路や接触者に関する問い合わせが相次ぎました。その当時、感染の経緯を知りたいという欲求が広がっており、周囲の人々も同様に情報を求めている様子が鮮明に感じられました。無言の電話や非通知の着信も、頻繁に舞い込んできました。しかしながら、私自身が感染した場所や状況については把握しておらず、その説明が難しい状況でした。ところが、こうした状況の中で、噂や誤解が容易に広がってしまうリスクが明確に浮かび上がりました。

噂は次第に拡散され、私が沖縄や札幌に遊びに行ったことで感染したという根拠のないデマまで広がってしまいました。さらには、毎晩外出していたという話も広まりましたが、その実態は全くの事実無根でした。当時は業務が忙しく、遊びに行くなどということは到底できる状況ではありませんでした。

同時に、関係者がコロナ感染者と誤解される状況に直面しました。特に地域の中で、私たちと関わる人々に対する不信感が広がっている事態に困惑しました。どこに行っても、「前田電気」という名前に対する否定的な反応が増加し、私たちの企業がコロナ関連の批判の的にされ、関係のない従業員や会長にも非難が広まりました。こうした状況の中で、噂や誤解が容易に広まり、真実とは異なる情報が拡散されていく光景に私は直面しました。

再生への一歩|試練と支えの中で得た教訓

退院後、1週間の休暇を経て、私は職場に復帰しました。自分の体の状態を率直に共有し、慎重に体調管理をしながら業務に取り組むことを心がけました。しかしながら、地元のお店での経験は非常に不快でした。その場所では、しつこく詮索されたり、出来事の経緯を問われたりする状況が続きました。心理的な負担はかなりのものとなりました、その影響は大きかったです。

一方で、仲間たちからは温かい励ましや献身的な支援の声が寄せられ、私が日々の業務に取り組むための力となりました。その声は、試練に立ち向かう意欲を高め、自信を取り戻す手助けとなりました。私が出会った素晴らしい仲間たちの支えは、感謝以上の価値があるものでした。

私たちは、情報の正確性を保つことの重要性を痛感しました。正確な情報提供によって、誤解や憶測が広がるのを防ぐことができます。仕事面では実際に大きな影響を受けることはありませんでしたし、お客様は特に気にせず通常通り接してくれました。自分に関わりたくないと感じる人もいる可能性があると考えましたが、その真相については十分に理解していなかったことも事実です。目に見えない要因も存在することを考慮しました。

誤解との闘い|感染者への理解を深めて

感染者は自己感染を引き起こす意図を持っていないことを明確にお伝えします。また、自身や家族が感染し、不当な差別や偏見、そして誹謗中傷を受ける可能性を考えると、私たちはこれらの行為から距離を置くべきです。

今回のできごとは、何も悪いことをしていないのにもかかわらず、日常生活や仕事に大きな影響を受ける状況に直面しました。噂の真偽や広がり方に疑問を感じつつも、私たち自身の適切な対応が非常に重要だという認識を新たにしました。このような時には、情報の正確性を保ちつつ、冷静な判断と適切なコミュニケーションが欠かせません。

この経験を通じて、他人の立場や感情を尊重し、理解を示すことの大切さを再確認しました。他者が困っている時には、非難ではなく、共感の心を持って寄り添うことが必要だと学びました。

現実的には、こうした誹謗中傷をなくすことの難しさは否めません。しかし、このような経験を通じて、個々の意識や行動が変わることで、少しずつ状況が改善されていく可能性を信じています。他人の立場を理解し、思いやりを持って行動することで、誰もが安心して共に生活できる社会を築くことができると思います。

(取材 2023年8月17日)


今後も新たな感染症などの同じような事象は起こり得る。正確な情報と透明性を保ち、感染者や関係者への差別や誹謗中傷を防ぎ、共感とサポートを示すことが重要だ。個々の行動が社会全体に影響を与えることを理解し、他人の立場に立った思いやりのある行動を心がけるべきである。この記事が未来の試練に対してより強く、より対応力のある社会を築く手助けとなることを期待したい。