認知症の医療と介護『人生100年時代』

認知症の医療と介護『人生100年時代』

認知症の定義と診断方法①

医療法人 樹恵会石田病院
院長 石田 康雄


今回は認知症の診断について説明したいと思います。
繰り返しになりますが、「認知症」 は、 脳の変性疾患や脳血管障害などによって、一旦獲得した認知・精神機能が、“意識障害”のない状態で日常生活や社会生活に支障をきたすほどに持続的に障害された状態と定義されています。

「認知機能」とは、知識を得る働き、つまり思考・判断・記憶・言語などを指します。ある対象(人・モノ・情報)を目・耳・ 鼻・舌・肌等の感覚器官でとらえ、それが何であるかを解釈したり、思考・判断したり、計算や言語化したり、記憶にとどめたりする働きをいいます。「認知症」と「認知機能」について正しく理解することは重要です。「認知機能低下」とは、 理解力や判断力、記憶力や言語理解力など認知機能に係る能力が低下している状態のことを指します。認知機能が低下することで日常生活に様々な影響を及ぼしている状態が継続している状態を「認知症」といいます。

「認知症」の診断は二つのステップで行われます。診察では先ず「認知症」であるか否か、つまり後天的で慢性の認知機能障害により日常生活に支障がみられていることを確認します(表)。この過程では、問診と神経心理学的検査(改定長谷川式簡易知能評価スケール 〔HDS─R〕 あるいはミニメンタルステート検査〔MMSE〕、前頭葉機能検査〔FAB〕、時計描画検査〔CDT〕、立方体模写、山口式キツネ・ハト模倣テスト、DASC─21など)を行ないます。「認知症」の定義、診断基準としては、国際疾病分類第10版(ICD─ 10)、精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM─5、図)などがあります。日常生活に支障が出ていない場合など「認知症」の基準を満たさない状態であると判断されても、年齢不相応な記憶障害が存在するなど認知機能障害がみとめられた場合は軽度認知障害(MCI)の範疇に入る場合もあります。加齢による健忘(正常範囲内)、薬剤誘発性、意識障害(せん妄など)、うつ病(偽性認知症)、妄想性障害、てんかん、など除外診断を行います。

次のステップは、「認知症」の基礎疾患を調べることになります。身体所見、神経学的診察、 画像検査(頭部C‌Tあるいは頭部MRI)、血液・脳脊髄液検査など必要に応じて行います。治療可能な認知症を見逃さないために、血液検査では、血液一般検査(血算)や血液生化学検査、 甲状腺ホルモン、 血液電解質、血糖、ビタミンB12、葉酸の測定が推奨されています。治療可能な内科的疾患 (代謝性疾患、 内分泌疾患、 感染症、 アルコール性等による認知症)、 外科的疾患(正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、 脳腫瘍などによる認知症)を鑑別診断します。

さらに頭部C‌TあるいはMRIの画像検査では、脳血管障害の存在、脳血管障害の部位に一致した神経症状、 段階的に進行を認めた場合は、 脳血管性認知症と診断されます。

医療法人 樹恵会 石田病院
院長 石田 康雄

昭和59年 埼玉医科大学卒
平成元年 埼玉医科大学大学院卒 学位取得
平成2年 飯能市立病院 副院長
平成3年10月 石田内科医院 副院長
平成11年1月 医療法人樹恵会 石田内科クリニック 院長

■専門医など
日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、日本肝臓病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本東洋医学会漢方専門医、日本人間ドック健診専門医、日医認定産業医、日医かかりつけ医制度研修終了、日本温泉療法医

■認知症関連
平成27年 認知症サポート医
平成30年 認知症初期支援チーム
令和元年 日本認知症予防学会専門医