仕事で人と人とが繋がるコワーキングスペース

仕事で人と人とが繋がるコワーキングスペース

関わり方を可視化することでコミュ二ティーは加速する

インタビュー:竹下 耕介(たけした こうすけ)
一般社団法人 みらい創造なかしべつ

 2022年6月1日世界牛乳デーに、ゲストハウス「ushiyado(うしやど)」を運営する一般社団法人 みらい創造なかしべつがコワーキングスペースMILK(ミルク)をオープンした。
 在宅勤務やワーケーションなど、コロナ禍で変わりつつあるビジネススタイル。ニューノーマル時代に対応する受け皿として、コワーキングスペースが町にもたらすものとは。
 運営する一般社団法人みらい創造なかしべつの代表理事でもあり、有限会社 竹下牧場 代表取締役の竹下 耕介氏に話を聞いた。


コロナ禍での活動自粛

 ゲストハウス「ushiyado」を2018年にオープンし、旅人と地域の人が交わるイベントを2019年までは年間50件行っていました。当初の目的であるゲストハウスが町と地域のコミュニティーを作り、旅人と地域の人を混ぜ合わせて、地域を盛り上げていくということをやってきました。

 2020年に新型コロナウイルスが流行り出し、ゴールデンウィークには外から人が来ることが非常に怖がられるようになってしまいました。ゲストハウスや観光業と相性が悪い病気だなと感じていましたが、それを目の当たりにしたときに、自分たちが強みとしていたこの町を発信することや、この町に人を呼ぶことは求められていないだろうと判断しイベントを行うことは一度ストップしました。

 「ushiyado」は営業していましたが、まん延防止等重点措置の時は人が全く動かずキャンセルの嵐で厳しい状況でした。お客様がいらっしゃっても町の飲食店が閉まっていて何も紹介できないことが多かったので、長期貸しで下宿のように企業さんに提供するなど、細々とやってました。

なぜコワーキングスペースを

 ワーケーションの人や、オンラインでどこでも仕事ができる人は急激に増え、実際に宿でも長期連泊をして、リビングでパソコン片手に仕事をしている人をよく見受けられるようになりました。これはひょっとしてコロナ云々ではなく、時代が変わりつつあるのかなと感じました。そしてこの時代に必要なもので、中標津にないものを考えた時に、コワーキングスペースが無いことに気がつきました。

 以前から中標津はビジネスで来る方が多く、アポの時間に合わせて来ても、帰りの飛行機の時間まで時間があるのに行く場所がない、時間を有効に使えないという方々がいるという話もよく耳にしていましたし、「ushiyado」にも時間で場所を貸してくれませんかとお問い合わせが来ていました。オンラインで仕事の会議やセミナーにも参加できるようになりましたが、自宅では子どもが騒いでいたりして参加しづらいという声もよく聞いていました。

 カラオケボックスやカフェなど探せば場所はありますが、特化しているものは中標津町にはありません。ワーケーションやリモートでの仕事スタイルは、コロナ渦前からあったスタイルかもしれませんが、一気にメジャーになったので、それに応える場所がないというニーズを感じました。

オープンに至るまで

 コワーキングスペースの構想はありましたが、本格的に動き始めたのは今年4月からです。候補地はいろいろありましたが、「ushiyado」からも近いということ、中央町内会が好きなこともありこの場所に決めました。

 6月1日が世界牛乳デーとなっており、「ushiyado」も6月1日にオープンしたので、コワーキングスペース「MILK」のオープンも同じ日に合わせたかったのですが、まだ完成していなかったので6月1日にプレオープン、7月15日にグランドオープンしました。

 運営は一般社団法人 みらい創造なかしべつがしています。「ushiyado」設立の時には、解体工事業を営む株式会社山川と竹下牧場が農商工連携で運営するということでスタートしましたが、どこかで自立しなければならないとみらい創造なかしべつを昨年6月に設立し、今年の4月1日から運営を開始しました。

フリードリンクでちょっとした飲み物を楽しめるカフェコーナー。

雑談OK、町の情報交換なども活発に行われる交流スペース。

スペースの利用方法

 初回は入り口にあるQ‌Rコードを読み込み、会員登録と決済を登録するとすぐに利用することができます。基本はドロップインという考え方で、1時間税込330円、4時間以上だと税込1、320円で使い放題となっています。月額制の使い放題のコースも用意していて、平日だけ・週末だけで分けて、週末だけだったら5、000円のコース、利用回数多い方にはいつでも利用可能な8、000円コースの2種類用意しています。

 仕事で利用する方々をターゲットにしているので、企業がサテライトオフィスとして利用できるビジネスプランも用意しています。専用のカードをお渡しして、入り口でカードをかざすと中に入れるようになっていて、商談などで利用する際に一緒に来る方も無料で利用可能で、専用ロッカーも貸出するプランとなっています。また、個人事業主向けにここを事業営業所として住所登録登記できるようにもしています。

 みんなで交流してほしいという場所と、集中するための場所を分けたかったので、集中スペースと談話スペースの2つに分けるかたちにしました。貸し会議室として利用できるかという問い合わせもありますが、それは受け付けておりません。あくまでも、みんながシェアオフィスとして利用しやすいようにと考えています。

 人が集まって会話をすることで、新しいアイデアが生まれたり、横の繋がりができます。このメリハリをつけるのことが、まさに今のオフィスのかたちです。これを企業として取り組むことは難しいかもしれません。コワーキングスペースがそういう位置づけとなり、自分で選択をしながら、自分の心に合わせたビジネスライフスタイルを提供できれば良いと思っています。

 家具にもこだわっていて、オフィス家具オカムラさんへフルオーダーでお願いして、相談しつつレイアウトや色合いなどプランを考えてもらいました。良い道具を使って、良い空間で良い仕事をしてほしいというふうに思っていて、ここに来たら良い仕事ができる。仕事がはかどると思ってもらえればうれしいですね。

どのようなターゲットを

 ターゲットは一番わかりやすいシーンでいうとチェックアウト後の人たちです。ビジネスでこの町に宿泊した方からチェックアウト後の午前10時くらいから飛行機までの時間に行く場所がないとよく言われました。行く場所がないといっても、その人は何か仕事したいのではないかと思います。そういう意味合いで行く場所がないということであれば、まさにこういう場所が必要だと考えました。

 「MILK」にはワークフレッシュというコンセプトがあります。ここは仕事で人と人が出会うことによって、ひょっとしたら新しい仕事が生まれるかもしれない場所です。例えば町の人がここをサテライトオフィスとして利用して、どこか遠くから来た人も同じように利用していて、その人たちが全く違う業種でもこの場所で交わることによって、新しいサービスが生まれるかもしれません。

 以前から「ushiyado」にもフリーランスの人がよく来ていましたが、この2年間でフリーランスの人も急激に増え、おそらくこれからも副業が認められたり、集中して何かやりたいという人もさらに増えると思います。外から来る人はもちろん、地域の人も集まれる場所になればよいですね。

防音材を使用した個室ブース。各スペースにサブモニターが設置されている。

基本会話はせず、集中して作業したい人向けの集中スペース。

中標津の魅力とは

 中標津は新しい町なので、新しいことに対して受け入れる風土があると思います。まずはやってみようと言いながら様子を見てくれて、心配もかけているかもしれないし、大丈夫か?と言われることもあるけれど、暖かく見守ってくれる懐の深さ。それを地元にいる自分たちだけではなく、ここにたどり着いた人にも感じてもらい、いろいろなことをここでチャレンジしたり、何かを起こしてほしいなと思います。

 中標津はよくも悪くも恵まれていると思っていて、人口も約2万人と規模がちょうど良く、自分たちで何とかするという規模感だと思うので、何事にもチャレンジしやすいと思います。

この町の足りないもの

 道の駅は作った方が良いと思っています。町のインフォメーションを一元化することができ、ふるさと納税の拠点としても期待できます。例をあげると、白糠の恋問館では、道の駅の売上は改善が待たれるところでしたが、ふるさと納税を始めてからお客さんが来なくてもモノが売れるようになりました。道の駅があることによって、観光客への情報の伝達もシンプルになります。

 中標津町のふるさと納税額は現在1億円と全国的には低い方ですが、みんなで試行錯誤すれば10倍ぐらいにはできると思っています。中標津町役場に政策推進課ふるさと応援係ができ、しっかりとふるさと納税について考える係ができたということは、まず第1歩だと思っています。ふるさと納税の推進を計るのであれば、町に道の駅を作るためにという目的を共有して取り組んだ方がみなさん力が入るのではないかと思います。

 ふるさと納税に関しては伸びしろしかないですね。

今後期待するもの

 ひとつ大きな理念的なものがあって、関わり方を可視化することによってもっとコミュニティーは加速すると思っています。

 何が生まれるかわからないけれど、この場所がなければ何も生まれないですし、場所があるということは何かを生み出す可能性があると思っています。

 期待していなかったけれど、関わることで何か良いことがあったら、それが一生の思い出になる。私たちは”偶然なハッピー” といっています。「ushiyado」は、旅人が旅をテーマに地域とその人がどう交わるかということをテーマにしましたが、「MILK」は仕事で地域とどう交わるかということをテーマにしています。ここで仕事をしようと集まった人たちが交わることで、新たな関係を生み、その関わり方が次に繋がるとうれしいですね。

(取材/2022年8月1日)

【店舗情報】

コワーキングスペース MILK(ミルク)
営業時間 6時〜22時
TEL 050-3000-4480
標津郡中標津町東3条北1丁目6 2F
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