この地域を襲う物価高騰の波|低単価商品でもコストを削減を工夫
最低限の値上げで波濤を凌ぐ

この地域を襲う物価高騰の波|低単価商品でもコストを削減を工夫<br>最低限の値上げで波濤を凌ぐ

原材料の値上げで締め付けられ大幅な収益減に
値上げかコスト削減か、判断に迷う中で出した一つの答え

インタビュー:安田 隆(やすだ たかし)
株式会社万両屋 代表


物価高騰による影響

 主要な原材料で言うと、小麦粉などの粉類で約20%、油が約50%、マーガリンが16%、マヨネーズが20%とやはり油脂類の価格がとても上がっています。牛乳や生クリームは約9%、砂糖が約7%、塩が約15%、あんが約10%と、原材料となるもので上がっていないものはありません。

 油は特に揚げ油として使用するドーナツ関係などの揚げ物が採算が合わなくなってきています。販売全体で利益を見ているのですが、揚げ物はほとんど利益がないような状態です。15キロ缶で3,000円だったものが6,000円にまで上がっていますので、消費量を減らすために油を濾してきれいにする機械を導入しました。ただ、フィルターに通す分油が目減りしてしまいますし機械代のもとがいつとれるのかという問題がありますし、濾すのに使用するフィルターなどの経費もあります。濾した後の油は酸性の度合いを測って許容範囲の中で保つようにして減った分だけ補充して使用しているので、全て取り替えて使用するよりはコストダウンしていますので長い目で見ています。

 小麦粉はオホーツク産や道南産など道内のものを使用しています。なかしべつシリーズに使用している小麦粉は中標津町の希望農場のものを使用していますが、こちらは現在値上がりはしていません。

 コロナ禍で、中国がいち早く国内の経済活動を正常化しようと色々なものを買い占め始めたのが、まず最初の価格高騰の原因になったと思います。兆候は以前からありましたが、昨年から急速に上がっています。

 国内産の原材料が不良などで少なくなったわけではありません。ただ世界情勢、最近ではロシアのウクライナへの軍事侵攻もあって世界的に原料が足りなくなり、国内産も国外へ流出し少なくなってしまいました。そうすると円安もあり当然価格は高くなってしまいます。

お客様への対応

 なんとか値上げしない方向でいきたいと考えましたが、やはり無理でしたね。そもそもうちの商品はそんなに値段が高くありません。それでもしばらくは頑張ったんですが、今回はさすがに我慢しようというところまでにはなりません。年内に2回くらいで計画して7月に、価格の上げ幅が極力大きくならないよう、10~20円ほど一度販売価格を値上げをさせていただきました。

 コロナ禍での売上の落ち込みがなければ、まだがんばれたかもしれませんが、スーパーから人が消えたぐらいの落ち込みでしたし、その上原材料の価格高騰なのでダブルパンチです。

 価格が落ち着くであろうと思われる時期に、損益分岐点を見ながらもう一度値上げをしようと考えています。

(取材/2022年8月22日)