根室管内建設業協会
業種を超え連携強化と人材育成の重要性

根室管内建設業協会<br>業種を超え連携強化と人材育成の重要性

根室管内建設業協会
業種を超え連携強化と人材育成の重要性

今年6月に新たに就任した会長に聞く─

【取材】寺井 範男(てらい のりお)
根室管内建設業協会 会長/寺井建設株式会社 代表取締役


他業種との連携を今まで以上に密に行うことが必要

 根室管内建設業協会は、根室振興局の農務・水産・林務各課の発注工事に携わっている1市4町の34社が所属しており、発注者から来る建設土木に関する様々な情報を各会社に提供・周知をおこなっています。安全パトロールをおこなって、安全に対する意識高揚に努めるための活動もおこなっています。

 また、根室管内に農業基盤整備のための予算を潤沢につけて欲しいとの要請活動を、道や振興局へ我々自ら声を発して基盤整備の重要性を訴えることもしています。仕事で農業や水産の整備に携わる気概が多いのですが、関係はまだまだ薄いと思いますし、直接連携をとることもほとんどありません。これからは産業間の連携をもう少し密にするべきと考えています。

 災害があった際には海岸や港、農道の寸断した時には要請がきます。ただ、農協さんや漁協さん、運輸の方と普段から幅広く連携していれば、緊急時に直接連携を取ることで今よりも出来ることがまだまだあると思います。そうすることで産業の発展にもつながるのではないでしょうか。

 仕事柄、一次産業の基盤整備の重要性は充分理解していますので、食料基地であるこの地域のインフラ整備を今以上におこなう必要があると考えています。ただ、範囲が広いので追いついていないのが現状です。災害時に、防災も含めて整備を急がないと人命に関わることにもなってきますので、私たちが自ら声を上げて他の業界団体さんと一緒になって海岸整備や農業基盤整備、道路整備の必要性を訴えていかなければいけません。

 開発建設部の主導でおこなう地域づくり連携会議※1があります。会議の時には、自治体をはじめ、農業・水産・観光協会・建設業協会など各業界から集まり意見交換や進捗の確認をし、計画を立てています。この地域でもそういった場を設けて、連携を深めてもいいのではないかと思います。


深刻な人手不足─人材育成と周知の重要性

 近年、建設業法※2が変化してきており、入札制度も多様化しているので各社対応が必要です。会社の経験や技術者の経験はもちろんですが、それに伴って人材の育成は常にやっていかなければいけません。しかし人手不足が深刻です。過去「コンクリートから人へ」※3という国の政策による公共事業の削減に伴い、どうしても会社は人的資源を手放さなければいけない時期がありました。また新たに雇用しても育てることができなかった時代がありました。会社の中には廃業や倒産するところもあったほどです。

 過去人材を手放し、また育てられなかったという状況の中で人手不足の状態が続いているために、現在人材が非常に不足しています。特に型枠大工や鉄筋工などの専門業者は一時期本当に居なくて困った時期もありましたし、土工の作業員であるオペレーターや土木技術職は今も不足しているので、人材確保が一番の課題と言えます。

 新卒や高校生にしてみると、端から見ていた建設業とは実際に携わってみると、大分ギャップがあると思います。仕事の内容もよくわからないのに加え、建設土木に対するあまりよくないイメージも払拭できていません。ですから、希望があれば実際の現場を見学して理解してもらうための取り組を各建設業協会でもおこなっていますし、インターンシップを受け入れて、希望があれば見て体験してもらう取り組みをおこなっている会社もあります。

 現在、雇用条件は随分よくなってきています。採用条件の中に会社が費用を負担する形で専門学校に行ってもらい、学校を卒業したら就業してもらう企業委託生制度※4を利用している会社もあります。

 今年は新型コロナウイルスの影響でなかなか集まりを持てないでいますが、懇親の場があれば、各社の人材確保のための取り組みの情報交換を積極的に行っていきたいと考えています。

 また、人材の定着率が悪いという問題もあります。給与面だけではなく、たとえば週休2日制の導入など、福利厚生の充実した働きやすい職場環境を作っていくことがこれからは必要です。屋外の仕事ですから天候に左右されることも多く、言うほど簡単ではありませんが、週休2日とまではいかなくても月6〜8休にする取り組みをはじめている会社も多いと思います。これからの建設業はそういったことに対応していかないといけないと思いますし、それを促すのは協会の役割だと考えています。

 業界の将来を考えると、若い人材を育てていく必要があります。就職する際には、親御さんの助言も結構大きいと思いますので、地域全体に理解してもらえる建設業を作り上げることができれば、親御さんもこの業界で働くことに対していいと思っていただけるのではないでしょうか。

 この業界は昔とばずいぶん変わりました。若手の人材確保のためにも今の建設業界はどういうものかを会社説明会などに積極的に参加して、しっかりと周知していくことが必要です。


IT化への対応と技術力の向上で地域を支える

 現在いる人材も技術料の向上が仕事を受注する上で非常に大事になってきます。基本的に技術者であれば資格や経験が必要で、それは今も昔も変わらないことですが、この業界の現場でも現在IT化が進んでいます。IT化された道具を使いながらおこなう施工が増えてきますので、対応していかなければいけません。非常に効率よく進められますし、人手不足の解消にもなります。場合によっては機械さえ使いこなすことができれば、それほど経験のない人材でも現場で働くことが可能になってきます。そのための設備投資や育成研修などがこれから求められてくるのではないでしょうか。

 基本的に入札は金額だけではなく、会社の経験や技術提案など色々な部分を総合的に見た上でおこなわれるので、会社として技術者個人の技術力が高ければ入札で落札できることに繋がります。それぞれの会社の技術点数(工事成績評定)※5の上昇のためにも、これからは必要になってくると思います。


※1 地域づくり連携会議
地球環境時代を先導する新たな北海道総合開発計画(平成20年7月4日閣議決定)などがスタートしたことを受け設置された、複数の振興局にまたがる広域的な連携のあり方について議論するための取り組み。

※2 建設業法
建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図るための法律(昭和24年施行、令和2年4月1日改定)。

※3 コンクリートから人へ
政権交代を果たした民主党が2009年度マニフェストで掲げた政策のひとつ。予算を組み換え、子育て・教育、年金・医療、地域主権、雇用・経済への予算充実を目指し、大幅な公共事業の削減、事業仕分けの実施をおこなった。

※4 企業委託生制度
企業委託生制度とは、企業に入社後、企業委託生として専門学校に入学し、1年間専門的な知識・技術を学ぶことができる制度。

※5 工事成績評定
公共工事において、工事が完成した段階で、発注者が工事ごとの施工状況、出来形及び出来ばえ、技術提案などを採点すをおこなう国土交通省の成績評定。