二転・三転する国の方針に翻弄されながらも、
各方面の協力を得ながら取り組み続けた日々
インタビュー:高松 絵里子(たかまつ えりこ)
中標津町新型コロナワクチン対策室長
町民生活部長
ワクチンの接種が順調にいったのにはどんな理由があったのでしょうか
国より3月に高齢者の優先接種を開始すると通知があり、2月1日には接種券を発送できるよう準備していたのですが、肝心のワクチンが中標津町に提供される見通しが立たず、会場や接種体制など、今まで手配してきたことがすべてやり直しになってしまうような状況でした。
結局、4月の下旬にワクチンが来るとの報告を受けましたが、1箱(約1,000回分)のみで、到底、高齢者の数には及びません。その分は介護施設入居者並びに従事者にあてることにしました。接種は、町立中標津病院、石田病院、こどもクリニックが施設訪問にて実施をいたしました。
ようやく5月にワクチンが提供されるとの連絡があり、なんとか一般の高齢者6,000人に接種券を発送し、5月24日から接種できることになりました。こんな大々的な接種というのは今までになかった上に、3月に最初に組んだスケジュールからは丸3か月遅れてのスタートとなりました。この間、度重なる開始時期の変更に焦りと不安でいっぱいでしたが、なんとか接種にこぎつけ、ほっとしたのを覚えています。
集団接種会場の町立中標津病院、そして個別接種会場となったこどもクリニックにおいては、ワクチンの入り具合で急な日程の変更があっても、すぐに対応していただけるなど、ずいぶん支えらましたし、バックアップ体制があったのは大きかったと思います。
また、このワクチン接種が順調に進む大きなカギを握っていたのは、ワクチンです。
接種を次々進めていこうと思っても、1回目と2回目は3週間あけて打つと決まっていたので、セットで準備する必要があります。1回目打てたのに2回目打つことができないとなると困るので、1回目を接種した方のために2回目の分をキープしておかなければいけません。おそらく2回目の量が完全に手元に来るまで待っていたら、遅くなってしまっていたと思いますが、中標津町では2回目の接種分のワクチンが届く日がわかった段階で予約をとりました。接種をしている期間の途中にワクチンが来るような。ワクチンが来なかったらどうしようと寝ても覚めても頭の中がもう、ワクチンでいっぱいでした。
接種を始めて中盤になって来た頃には予定通りワクチンが入るようになってきました。1回目の分しかまだ届いていなくても、これだったら予定通り進めても大丈夫だろうと踏んで、2回目を次にくるもので当て込んで進めることができました。基礎疾患、ケースワーカー、そして64歳以下は徐々に年齢を下げて、案内をし、夏休みには中高校生の接種、9月末は、希望する全ての方に接種していただける体制を確保しました。
また、ワクチンをいかに無駄にせずに、多くの方に接種していただけるかも悩みました。1本のワクチンで6人の接種ができるのですが、人数通り予約はできていても、当日来れなくなってしまったりする方もいたので、病院に入院している方に打ってもらったり、役場の職員、エッセンシャルワーカー※の名簿も事業所から提出いただき優先接種するなどして1本たりともワクチンが無駄にならないようにしました。
実際裏側は戦場でした。予約の電話がつながらない、予約したのと違うなど、お叱りを受けたこともあります。早い時期に順調にすすめられたことを評価されているようですが、逆に、ワクチンが入ってこなかったらどうなってたんだろうと思う気持ちの方が強いです。
しるべっとの集団接種会場の体制についても、町立中標津病院、役場、保健センターから、職員を割り当て、会場を回していました。土曜日や日曜日も役場全体で取り組みました。
文化会館も行事日程が決まってたにも関わらず会場を空けていただいたり、町民の皆さんにもご協力いただきました。
会場で接種に携わってくださる看護師さんは、病院の仕事が休みの日に来てもらいました。お医者さんは町立中標津病院院長の「迅速な対応により、平日は旭川医大から出張医が、土日に関しては町立病院の医師が2名体制で対応いただくことになり、30分で約35人、1日420人打つ体制も取れました。このように、町立中標津病院の全面的なバックアップ、そして、中標津こどもクリニックさんも自分の診療を抱えながらも平日1日160名の接種体制を構築していただいたきました。私たち担当だけではとてもできませんでした。どれかが1つが欠けていてもうまくいかなかったと思いますが、やはり医療機関の協力は大きかったと思います。
ワクチンは順調に届いていたのでしょうか?
ワクチンには最後まで悩まされました。もっとちゃんと時期も提示されて、2回分の人数分が届いていたなら、接種はもっと早くできたと思います。
実は後でわかったことですが、ワクチンを接種した記録はリアルタイムでその日のうちに、国に報告するようになっています。ワクチンの提供した量も国でわかっていますので、1回目をうち、在庫のなくなった市町村には、早くにワクチンを融通するとのことでした。2回分のワクチンを確保してから打ったのでは、当然提供が遅くなるわけで、中標津町が早くに接種できたのは、そういう理由もあったかと思います。
また、ワクチンの保存にも気を遣いました。ワクチンの保存期間は、最初冷凍の状態で1ヶ月と言われていました。それが2ヶ月、半年と伸び、今は9か月となっていますが…。
ワクチンを保管する冷蔵庫に電源が入ってなくて、解凍されてしまって廃棄したニュースがよくありましたが、そこには一番気を遣いました。雷が落ちたり、停電になった時はまず最初にワクチンを確認しに行くこともありましたが、毎日それを管理していた保健センターの担当職員も大変だったと思います。
3回目の接種が間近に迫っています
今回は1回のみの接種ということで、柔軟に対応できるかなと思います。
前回は、2回1セットで、ワクチンとスケジュールを管理しなければいけなかったので、皆さんのご要望にお応えしきれないところもありましたが、今回はそれがないので、気持ちは楽です。広報1月号には案内を掲載して、2月号には日程も載せようと思います。ただ、ワクチンがまだ高齢者全員分届いていません。
コロナが全国的に感染拡大している中で「前倒しの接種を」と国からは言われていますが、中標津町では当初の予定通り、2回目の接種をしてから8ヶ月後の接種を実施します。ワクチンがないのに…という感じもあり、またもワクチンと戦っています。
また、今回はモデルナの提供になりそうとのことです。前回のファイザーの管理方法や分量等違ってくるので、間違って接種することないように、使用会場や接種日をわけるなどの工夫も必要です。これに、11歳以下の子どもの接種となると、また使用するワクチンが違うので、スケジュール調整はこれまで以上に綿密にしていく必要があります。
3回目は2月21日から接種を開始しますが、冬時期なので吹雪などの天候が心配です。吹雪で来れなくなる方の対応等、不安要素もありますね。
前回コールセンターを設置しましたが、電話がつながらず予約ができないなど、予約段階で相当ご迷惑をおかけしましたのは、今回は65歳以上の方には接種した順に時間と場所を指定して通知をします。
65歳以上の方への接種は3月で終わって、4月からは64歳以下の方となりますが、ワクチンの確保ができれば遅くても6月には接種を終了できる見込みです。64歳以下の方は、コールセンターまたはWebでご自分で予約してもらう形になります。
準備はいまのところ順調です。医療従事者、そして介護入居者・従事者の方の接種を実施しています。あとワクチンが予定通り2月に入ってくれば65歳以上の方に案内できます。
いずれにしても、やはり3回目の接種もワクチンの確保が最大の悩みとなっています。
(取材/2021年12月27日)
※エッセンシャルワーカー
特定の仕事内容を指し示す言葉ではなく、生活を維持していくために「必要不可欠な仕事」の職業の方の総称。コロナ禍では感染リスクがある中でも、私達の生活を維持するために現場で働き続けなくてはいけない人たちを指す。
抗原検査キット配備事業について
オミクロン株が猛威を振るい感染が拡大しています。これまで、「感染の可能性のある方」は濃厚接触者として、保健所が調査し、指導を行ってきましたが、重症化リスクのある新規感染者への対応に後れをきたす恐れがあることから、保健所の役割として調査の対象を同居家族等や医療機関や介護福祉施設等に重点化することとなりました。
それ以外の方や事業所は、陽性となった患者が直接連絡をすることとなり、「感染の可能性がある者」として、自主的に外出自粛・経過観察を行うことになりました。
中標津町でも、感染者から連絡があり自分は「感染の可能性がある者」となってしまったけれど、検査も心配だったらしてくださいと言われ、また検査する場所も予約も取れない状況、検査キットも買えないでどうしたらいいのかという、お問い合わせが来ています。
また、心配だからと病院を受診する方もいます。
感染の可能性があるものとして、連絡を受けた方の不安を解消し、感染の早期発見・拡大防止とともに、地域医療のひっ迫を回避し、適正な診療体制の確保を目的として、中標津町の独自事業として2月から、検査キットを無料で配布することが1月臨時会で決定されました。
検査キットが到着次第、実施していく予定です。
だれでももらえる?
感染者から連絡を受けた方やその事業所や施設の方を対象とします。キットにも限りがありますので、ただ単に不安だからという理由での配布はできません。まずは、感染の可能性がある方とさせていただきます。
また予約制になりますので、保健センターに電話で連絡をください。その際は感染経路の確認もさせていただきます。その後、接触しない方法で受け渡しを行いたいと思います。
検査は自分自身でしていただきます。