星の子保育園
役割を終え30年の歴史に幕。
歴史を振り返って思うこと
インタビュー:八城 良子(やしろ りょうこ)
星の子保育園 園長
子育て支援をはじめてからどのくらいの年数になるのでしょうか
学校を出てから札幌で障がい児コロニーで25年お仕事してきました。その後主人が定年になり、平成2年に中標津に来ました。
はじめに学研の幼児教室を行っていたのですが、通ってくる生徒のお母さん方や僻地に仕事に行く学校の先生、看護師さんから夜が遅くなったり、日曜日も仕事でお子さんを預けるところがなくて大変だという話を聞く機会が結構ありました。そのうちにその人たちのニーズに少しでも応えられるようなものを作れないかなと思い、翌年の平成3年に保育園を開設することにしました。
最初は自宅で学研教室と30名が定員の星の子保育園を並行してやっていました。またほぼ同じ時期に町立中標津病院の看護師さんの保育室の開設委託を受けて「ぽっぽ保育所」の立ち上げを手伝い、運営の委託も頼まれました。町立別海病院の保育室をお手伝いしたこともあります。
あれから31年が経ちました。
昔は中標津保養所温泉の近くにあったと思います
自宅が中標津保養所温泉旅館の近くにありました。幸い広い住宅だったので保育園として使用しました。学研の教室はアズ・プラザ(現在のローソン中標津東7条北店)の2階を教室といたしました。その自宅が星の子保育園の最初の園舎です。
その翌年の平成4年に松實武夫さん(釧根開発株式会社前社長)と中標津のパーティーで偶然知り合ったのですが、保養所温泉の近くに、70名定員で保育園を用意してみようという話になり、そこが2番目の園舎になります。
その後、松實さんが亡くなる前に今度介護施設を建てるから、同じところに100人は受け入れ可能な保育園を作ると言ってくださり、3番目の園舎が平成16年に完成しました。「子どもと老人が戯れる姿を俺は望む」とおっしゃっていました。夢だったのかもしれません。これが今の星の子保育園です。その時はもうお体を悪くしていて、亡くなる直前に完成しました。そして現在に至っております。
園長先生が子供と接する際や運営でこだわってきたことはありましたか
これは仕方のないことでもあったのですが、当時はまだ働いてる人が幼稚園を利用できないような時間で終わってしまうので、うちのような遅くまでお子さんを預かれる所が必要だったんだと思います。
長崎屋の前に、グリーンハウスさんという託児所がありました。託児所として11人ぐらいお子さんを預かっていたんです。そこを辞めることになったということで、11人の園児をここに託したいという話があり、お受けすることになりました。当時はお父さんお母さんが心配のないようにお受けするのが私の役目なのかなと思いました。
最初から遅い時間まで預かることを続けてきました。個人的に預かる方はいたと思いますが、保育園として町に届け出てるところはなかったと思います。また、生後3ヶ月の0歳のお子さんから預かっていた園も他になかったと思います。
この園は認可外保育園ですが、お子さんを預けるのに困ったお母さんの駆け込み寺みたいなところもありました。だからこそできたこともありました。今だから言えますが、一人親の家庭は経済的な面もあるし、家庭の愛情が充分受けられないお子様については、関係公共機関や釧路の児童相談所と連携して、少しでもいい方向へ行くように行動できたと思います。形としては保育園ですが、幅広く子育て支援に関われたと思います。
中標津町だけでなく、近隣の町、羅臼町からも朝早く登園したお子様もおりました。あそこに預ければ間違いないと思っていただいていたのであれば嬉しいですね。
思い返せばもともと福祉の仕事をしていたことが関係しているのかはわかりませんが、社会福祉的な仕事もしたい気持ちから半分ボランティア的なところもあったのかなと思います。
今も昔も一貫して変わらないのは、「自分がされて嬉しいことは絶対に人にもしてあげよう」「自分がされて嫌なことは絶対に人にしない」ということと、「手も足も身体もそれぞれ役目があってついているものだから粗末にしちゃいけない」といことをお子さんに教えてきました。
今年度で園を閉めることになった理由をお聞かせくださいますか
これまでご父兄と職員のご協力をいただきやってきましたが、国の幼児教育の方針が次々と改正され、今は認定こども園で遅い時間まで預けることができるようになりましたし、土曜日でも預けようと思えば預けることができます。私たちのお役目を終えたと思えたのが大きかったと思います。30年という区切りのよいタイミングで、自分の中でけじめをつけようと思いました。役目を終えたと思えたことで、もうそろそろ引退してもよいと思ったのが、閉園を決めた理由になります。
今お預かりしているお子さんが閉園後にどうすればいいのか、町に閉園を伝え相談に乗っていただきました。閉園の話をしたときに、ご父兄の皆様に「お疲れさま」とか「いままでありがとう」と言ってくださる方ばかりで本当に嬉しかったです。
中標津町では認可外保育園が、個々の方針で豊かに運営されています。町にとって大切な保育の場でもありますし、見守っていただければと思います。
伝えたいこと
星の子保育園の30年間、地域の皆様、卒園児の皆様とご父兄の皆様、関わってくださった職員の皆様、支えてくださいましてありがとうございました。感謝いたします。
(取材/2022年1月21日)