別海町まち・ひと・しごと創生総合戦略| 人口減少の克服を目指す

別海町まち・ひと・しごと創生総合戦略| 人口減少の克服を目指す

少子高齢化と流出で避けられない人口減少のスピードを緩和し町の維持・発展を目指す

インタビュー:寺尾 真太郎(てらお しんたろう)
         別海町 総務部 総合政策課 課長


「別海町まち・ひと・しごと創生総合戦略」とは何を目標に定められたものなのでしょうか

 別海町では10年に1回、総合計画を作成しまちづくりを進めています。1番新しいものでは、平成31年度から10年間の「第7次総合計画」です。「別海町まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、この総合計画をベースに作られています。町民も参加して一緒に考えながら作り上げた計画ですが、前期「第6次総合計画」期間中の平成26年度に、新しい法律が作られて、「総合戦略」を平成27年度中に作るよう国から要請がありました。総合計画が3年間残っている中で、目標が達成されていないものや、継続・拡充して行く必要がある重要な事業などを抜粋して、平成27年度に第1期の「総合戦略」を作成しました。平成31年度からは、現在の総合計画期間が始まりましたが、同様に、現在の総合計画から抜粋して作ったのが、令和2年度から開始した現在の第2期「総合戦略」になります。

 目標を掲げて達成しようという意味では同じような計画ですが、1年度ずれていることで時代背景が変わり、内容に違いが生まれているものもあります。町民にとってはどちらを見たら良いのかわからなくなり、目標への焦点がブレてしまいますし、街づくりに関する計画が2つあるのは分かりづらいです。そこで適期に一本化する検討が必要であると考えています。

 総合戦略は、全国的な問題でもある少子高齢化が進み人口減少する中で、どうやって町を進めていくのかが目標のベースになっています。色々な施策を盛り込み、最終的には人口減少の流れを緩やかにしたいというものになっています。

 社人研※の公表した推計によると、別海町の人口が平成27年に15,273人だったのに対し、45年後の令和42年には7,656人になると推計されています。これをさまざまな政策を実行することで、8,556人、大枠では「8,500人以上までの減少」にとどめたいという目標にしています。

 しかし、実際は令和2年に行われた国勢調査の数字は14,380人で、立てた経過目標の14,415人に対して30人ほど下回ってしまいました。このペースでは40年後の目標をさらに大きく下回ってしまいます。まだ詳細な分析はできていませんが、コロナ禍の影響も少なからずあるものと思います。一方で、全国的な減少自治体の傾向から判断すると、別海町は比較的、減少幅を抑制できているのではないかとも感じています。

 この総合戦略は、町だけが考え実行するものではありません。役場内、総務部長を委員長とし各課長職などで構成された「戦略委員会」で叩き台を作成し、副町長を主宰とする「戦略会議」での検討のほか、住民団体や「産・官・学・金・労・言※2」の代表者等で構成される「戦略検討推進委員会」での意見、町議会からの意見を溶け込ませ、最終的に町長決定の過程を経るという、行政と町民が一体となり策定されたものです。

 「戦略検討推進委員会」には、進捗状況を報告させてもらっているほか、時代の色々な移り変わりがある中、ニーズも変化しているため、本委員会からの意見を聞き、それを各部署におろしています。

3期の結果を受けて2期ではどのような変更がなされましたか

 第1期と第2期では、ベースとなる総合計画が変わった分、全体的に変更されています。第1期は大きなKPI(重要目標達成指標)しか設定せず、また人口ビジョンについても、平成22年の国勢調査を軸にしたものでした。当時の推計よりも人口減少が進んでいることもあり、第2期では、目標人口をマイナス修正せざるを得ませんでした。一方、各種施策についてのKPIは、その重要性から、より細かい数値目標を持たせるようにしました。

 総合計画・総合戦略を管理する総合政策課としての重要ミッションとして、現在持っている目標数値をもっと客観的にわかりやすいものにし、各種施策を実施したことで、数値がどのように動いているのか「見える化」を図るための準備を進めています。

 町が実施する事業の数値変動を見て、事業費を投じた結果の把握、逆に、事業費を投じた効果が伸びない事実の把握、これを町職員だけではなく町民にも示していくことによって「見えてくるもの」があると思います。違う視点で先の新たな事業を立案するきっかけになるものと思っています。

 現在、事務の流れなど、この取組みをスタンダードにするための準備期間ですが、確立できれば、職員も町民一人ひとりが数字を捕まえて、色々な議論ができるものと思っています。

 第2期が作られてから2年が経ちますが、近年の状況を勘案し一部見直しに着手する必要があると思っています。それまでには、全てではないかも知れませんが、何とか色々な数値を出せるような仕組みを作りたいです。

 第2期では、別海町の産業・福祉・教育の充実は当然ながら、地方創生、関係人口の増、移住者の増、何より別海町を知ってもらうことにも力を入れ、人口減少を抑えていくのが王道のストーリーです。しかし、それぞれの分野が単独で政策を進めてもなかなかうまくいかない部分もあろうかと思います。そこで、例えば、ふるさと納税で寄付をしてもらったら、返礼状に別海町の移住に関するサイトやYouTube動画へ誘導するQRコードを掲載したり、別海町の多岐にわたる魅力に関する記事を充実させるなど、うまくリンクさせて行きながら地域再生施策を進めていくことが大事だと思っています。

それぞれの戦略で結果の出ているものや課題への取組みについて

 目標を達成しているものや達成できる見込みのものはあります。しかし、最重要事項の1つである人口については、なかなか結果が付いてきていないのが現状です。
 別海町の合計特殊出生率は1.74で他の町村から比べたら高い数字ですが、それでも人口が減ってきています。平成初期には2.04の時期もありましたので、この数値まで上げていきたいという思いはあります。

 もともと別海町は、子育て支援に関しては手厚い事業を行ってきています。中学生までの医療費無償化、認定こども園の利用者負担に対する軽減をはじめ、妊娠期から母子センター助産師が地域に入り込んで妊婦さんと面談したり、母親教室を開催したり、育児不安などに対する産後ケアなど、「心に寄り添った施策」を積極的に行っています。近年は、国の施策も進み、出産・育児環境は各自治体でも良くなってきていますが、それまでは、助産師が地域に入り事業を行う自治体は全国的にみても極めて稀でした。別海町は、子育てにとって素晴らしい環境を整えてきましたが、少子化の波に飲み込まれているのが現状です。

 その他、総務省のモデル事業としてマイクロソフトがテレワークの実証実験を行なった経緯もありますが、今は撤退しています。しかし、現在のコロナ禍をきっかけとして、会社が地方に出てくる動きが活性化していますので、ワーケーション等への取組みも含めて検討すべきものと考えています。現在、別海町でも全町に光回線を敷設する工事を進めています。光回線がないと企業進出やワーケーションはしにくい時代です。全町光回線整備を完了させ、具体的な方策やプロモーション、ニーズ調査などを並行して検討する時期に来ているものと考えています。

 今年度4月から、ふるさと納税に力を入れるということとあわせて、情報化の推進を強化するために「ふるさと応援・情報化推進室」という新たな部署を立ち上げました。

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を進める上での課題はありますか?

 総合戦略は、町議会をはじめ、町民(戦略検討推進委員会)と行政が一体となって進めることが重要です。

 特に、委員会との会議で協議・提案されるものは最たるものですが、正直に申し上げ、私たち事務局の繁忙期の合間をみての開催でした。特に冬に開催すると、翌年の予算編成も大詰めを迎えており、委員会の意見が反映されづらくなります。それでは委員会に失礼ですし、出された意見に対する検討が翌々年にズレ込むことは、町にとってマイナスの要素にしかなりません。来年度からは、決算確定後の夏に1回委員会を開いて、決算状況とKPIの動向を併せて委員会に説明し、現状と展望に対する意見を伺って、新年度予算に反映させたいと考えています。

 そして年度末にもう一度開いて、委員会の意見に対し新年度予算で反映できた事項、また逆にできなかった事項、もう少し検討期間が必要な事項等について、理由をもって伝えていけるような委員会サイクルを作っていきたいと考えています。

 やはり目下の課題は、我々の取組み具合です。職員としてがんばらなければならないのは当然ですが、何より、町民みなさんと一緒に楽しみたいと思っています。

(取材/2022年1月26日)

※1 社人研
 国立社会保障・人口問題研究所。厚生労働省の施設等機関で将来推計人口を発表している。

※2 産・官・学・金・労・言
 「産」は産業界、「学」は大学等の学界、「官」は行政(国、地方自治体等)を意味します。 「産学官」は以前から使われていました。 地方創生ではそれに「金」金融界、「労」労働界、「言」言論界(マスコミ)を言う。