地域を襲うコロナショック
コロナと戦う地元企業
標津サーモン科学館

地域を襲うコロナショック<br> コロナと戦う地元企業<br>標津サーモン科学館

「遊びにいく」「往来」の自粛の中でも工夫が活きた1年。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、長期間にわたって休館を余儀なくされた昨年。国内でも数えるほどしかない特異な施設の1年を振り返る。

インタビュー:市村 政樹(いちむら まさき)
標津サーモン科学館 理事長・館長


この1年でコロナの影響はありましたか

 昨年、北海道からの休業要請で3月2日~31日臨時休館となりました。休業要請は4月に一度解除になりましたが、4月18日から再び臨時休館という形をとり5月26日まで閉館。書き入れ時であるはずのゴールデンウィークにお客様にご来館いただくことができませんでした。当館としてはできるだけお客様に来館していただきたいところなのですが、国や道の要請、町の要請に従って開館日については設定していますので、自分たちでどうにかできる状況ではありませんでした。

 5月27日からは通常開館となりましたが、来館されるお客様は例年に比べ、近隣の町村の方が多かったように思います。状況が状況ですので、行楽はとりあえず近場で済ます方が多かったのでしょう。そのような状況が7月くらいまで続いたかと思います。例年多くの修学旅行での来館があるのですが、ほぼありませんでした。単発的に大学の受入れなどがあったくらいです。

 4~5月は閉館期間が長かったので省きますが、6月は前年が約4,250人の来館があったのに対して、今年は約1,980人と2,000人以上減少しています。7月は1,000人減、夏休みでもある8月にいたっては約5,500人もの減となっています。9月は2,100人減、10月は600人減ととにかく来館が極端に少ない状態が続きました。

 トータルでは現時点で入館者がマイナス46%減で全体の収入は40%減、入館者収入だけを見ると50%減となっています。なにより旅行会社絡みのマイナスはとても大きかったです。外部資金の収入や、思ったより個人のお客様が動いて来てくれただけよかったかなと思います。

昨年はどのように乗り越えてこられたのでしょうか

 8月は例年標津町のお祭りである「水キラリ」があり、その際に無料入館が約2,000人ほどいるので単純に比較はできませんが、大きな減少であることには違いありません。

 修学旅行がなくなってお子さまの来館は大きく減少しましたが、GoToトラベルがはじまってから多少状況は良くなり、道外からの大人のお客様が多かったように思います。

 入館料による収入が極端に落ちることは明らかでしたので、新商品を新たに作り販売を開始しました。また、館外のアヒルを見に遊びにいらっしゃる方は意外といらっしゃいますので、外に餌の販売機を設置するなど小さなことでもやってみました。地味に収入の助けになったかなと思います。

 また、入館料の改定を4月におこないました。そのため客単価は上がっています。お子さまの来館は減りましたが、大人の来館が増えたことで、客単価のアップにつながりました。

 国や道からの助成金を受け、臨時職員の方にも休業補償を出しました。収入は大きく落ち込みましたが、助成金で多少埋め合わせできました。また、本年度は本事業とは別に、農水省の事業で他の研究機関と連携しておこなう研究や、受託事業、書籍の監修などの外部資金もありました。収支でいうと赤字ではあるのですが、なんとか持ちこたえることができたかなと思います。

 例年行なっている1月1月のお正月開館も、この状況下で万が一感染者が出てしまうという事態はどうしても避けたいと思いましたので中止にしました。

館内における感染対策についてお聞かせください

 入口をはいってすぐに、顔をモニターに映して自動で体温が測れる装置を設置しました。どこでもおこなっていることですが、職員が館内のいたるところを清掃時にアルコール消毒しています。

 例年館内ガイドをガイド協会にお願いしているのですが、距離が詰まっていたら離れてもらうよう現場で指示するようにしました。

 また、水中感染する可能性があるという話があったので念のため調べたのですが、確実性のある情報はどこにもなく、結局よくわかりませんでした。それでも、もしもの想定はするべきと考え、ドクターフィッシュやチョウザメを触った後にはアルコール消毒や手洗いを徹底してもらうようにしています。館内の色々なところにペーパータオルも置いています。

 職員には朝の体温確認と体調管理の喚起。あと強制はできませんが、感染者の多い地域にはなるべく出ないで感染しないように各自注意して欲しいことを伝えています。

 今まで多くの子どもたちが遊んでいたコーナーや、直接触れることができる釣り堀コーナーなどは中止しました。

 また、臨時休業が長期に渡ったため、年間パスポートの有効期限延長の対応をしています。

 あくまでも当館は標津町の施設なので、標津町の指針にもとづいて動いています。役場からの指示、もしくはこちらからの提案で館内での感染者を極力出さないよう注意しています。

 お客様に喜んでもらえるよう、こんな時期ではありますが、なんとかしたいと思いながらも不便をかけていることに申し訳ないと思っていますし、少し悲しく思います。