新たな居場所が人とのコミュニケーションを取るきっかけに
インタビュー:若澤 めぐみ(わかざわ めぐみ)
合同会社まおぽぽ 代表
新たに事業所を立ち上げた経緯をお聞かせください
昨年の9月末付で法人にはなっていたのですが、準備期間を設けさせていただいて駄菓子屋の開店は11月6日になります。
利用者さん(以降 まおぽぽ様の呼び方に合わせてメンバー)にもお菓子に値段のシール貼りや陳列などの準備をしてもらいました。自分たちがどういうお菓子だったら食べたいかなどをみんなに聞いたりとかもしました。店舗の準備以外でも、掃除や日常的なことでできることをやってもらい、できなくても何かチャレンジと希望することがあればやってもらっていました。
現時点では職員は私を含めて2名で、サポーターさんが1名常時来てくださっています。利用者さんは常時4名います。メンバーの年齢層は20代から50代の自閉症や知的障がいの方で、年齢は幅広いです。もしうちに来てみたいという方がいれば声をかけてくれれば全然それはOKです。通所するのに決まりごとは全くありません。
なぜ駄菓子屋をやろうと思ったのですか
正直、メンバーの障害は決して軽くはなくて重度の方もいます。日常会話ができないメンバーが数名いますし、コミュニケーションが苦手でうまく自分を出せないメンバーがほとんどで、自分たちから人に関わっていくことは苦手です。いままでの生活ルーティンや、自分が決めてきたものが崩れてしまうのは彼らにとっては大きなことです。ですからなるべく極端な変化がなく標津町のみなさまにとって何がよいんだろうということを考えました。どんな方に来て欲しいかを考えた時に、少しでも多くの方に幅広く来てもらいたかったので、駄菓子屋をすることで落ち着きました。
メンバーにとっても多くの方に来てもらった方が、自分たちをアピールできたり自信を持ってもらう機会が多くなります。とにかく知ってもらう必要があると思っていますので、私たちにとって種まきの意味もあります。
駄菓子屋を始めてからまだ2ヶ月ちょっとですが、すでに多くのみなさまに来店いただいています。テレビ放送や新聞掲載などしてもらいましたが、その影響力は大きいですね。本当にありがたいです。
ハンディのある方がやっていることを知らずに入ってくる方もいらっしゃいます。そういう時はやはりみなさん、ちょっと驚いたり躊躇したりもするのですが、でもそれはそれで事実です。すぐ身近にこういう人たちがいることを知ってもらうことは本当に大切だと思っているので現実として理解してもらいたいと思っています。
開店してからメンバーさんの様子に変化はありましたか
最初はメンバー全員が1歩2歩くらい引いてたんです。たくさんの方が来ることにも慣れていませんし、怖いのも不安も両方あったと思います。ここにいると初めての経験ばかりだったと思います。みんな引っ込み思案だったんですが、それはお客さんと時間が解決してくれました。最初の頃は裏にいて表には出てこれなかったメンバーも、今ではお客さんが来ればすぐ行くようになりました。慣れというか、人と接することが好きになったと思います。自分を認めてくれているのかなということを、なんとなく感じているところがあるのだと思います。ここに来てくださるお客さんがメンバーに気付かせてくれて育ててくださったと思っています。
私個人の思いとして、障がいの有無に関わらず共に生きてほしいです。彼らにしても、店に来てくださるお客様にしても、まだまだ共存できる未来があると思います。駄菓子が想像以上に違う世界を見せてくれました。
独自のサービスや商品もあったりするのでしょうか
「ほたまる」といって、タコ焼きのタコをホタテに変えたものを販売しています。標津のホタテ、羅臼昆布で取った出汁、標津の鮭節を使ったものです。たい焼きも販売しています。うちでは「ぽぽやき」という名前です。オリジナル感を出したくてお客さんから名前を募ったのですが、一番多かった「ぽぽやき」に決定しました。あとは「もちもちポテト」という30センチ近い長さのポテトの販売を始めました。全部単品で販売しています。この辺にないものを販売したいと思い始めました。
駄菓子屋以外にもこれからやっていきたいことはありますか
就業訓練を行う就労継続支援B型の開設を考えています。滞りなく申請が通れば4月1日からのスタートになります。
今ここにいるメンバーも私も、もともとは別の事業所にいたのですが、自分ができること、自分が輝ける場所を見つけてあげることができませんでした。
居場所はなかったのですが休まずに通所していました。このままでよいのかとずっと考えていましたし、保護者の方々も自分の居場所を見つけることを望んでいました。
私は羅臼町出身で標津町民ではありませんので、私に何ができるのだろうか、私が動いていいものなのか正直かなり悩みました。でもやっぱり目の前に困っている彼らを放っておくことはできなかったです。今の職員も保護者の方です。ずっとボランティアとして手伝ってくれていましたが、さすがに心苦しくて年明けから職員として雇用させていただきましたが、まだまだ職員の増強が急務です。
就労継続支援B型として事業が始まっても、駄菓子屋まおぽぽはそのまま残して、引きこもりの方やうまく働けない方をここで支援させていただきます。メンバーが駄菓子屋にいたいといえば、そのままいてもらいます。でも今以上の収入源がないと事業所として継続が難しくなってしまうので、総菜やおにぎり、お弁当など飲食を中心に展開していく予定です。
(取材/2022年1月19日)