自宅で快適に生活するために的確な提案を

自宅で快適に生活するために的確な提案を

福祉と言っても様々なサービスが存在する中でも、あまり知られていない福祉用具のレンタル・販売。
快適な生活を提供するための心がけや、業界の将来を見越したサービスのあり方を聞く。

インタビュー:工藤 塁(くどう るい)
       株式会社中標津介護センター(アズ介護サービス ファミリア) 代表取締役


福祉用具のレンタルと販売

 介護保険制度を利用した、福祉用具のレンタルと販売がメインの業務内容になっています。電動ベッドや車椅子、歩行器、ベッド、居間に置くような手すりなど幅広く介護保険で適応となるものです。レンタルの他にお風呂の道具やポータブルトイレなど、レンタルはできないけれど介護保険で賄える購入品も対象にしています。

 介護度によってレンタルできる介護用品が決められています。また、手すりなど介護の度合いとは関係なくレンタルすることができるものもあります。介護保険制度そのものがどういった内容なのかまだ知らない方が多くて、借りられることを知らずに買ってしまうなど、事後のご相談を受けることがあります。今後こういったサービスがあることを周知していくことが、今後の課題なのかなと思っています。

 中標津町、別海町、標津町、羅臼町の4町をサービス提供地域としています。釧路まで行けば同業者の数は多いのですが、この近辺は別海町に2社しかありません。まだまだ事業所数も少ないですし、これから2025年問題と言われている、団塊の世代の方々が介護サービスを受ける時期がもう目の前に来ていますので、その時期が来たときに少ない事業所数で皆さんにご迷惑かけないでどう対応していくかがこれからの課題になってきます。

一瞬の関わりでも家族に寄り添った対応

 介護保険でレンタルや販売を利用しようとするスタートラインは、入院していた方が自宅へ帰る時に準備をしなければいけないという直前の方が多いです。直接連絡をいただく場合もありますし、役場の介護保険課を通してご相談いただくこともあります。

 前もって、こういった制度があるということを多少なりとも知った状態であれば、直前でバタバタすることを防げますし、ご家族など介護される方も気持ちに余裕を持って対応できるかと思います。コロナ禍でなかなか動きがとれない時期ではありますが、社会福祉協議会さんや役場など地域全体で周知を図ったり、催し物で町民の方への働きかけを今後できればと思っています。

 また、現状の介護保険制度では、施設に入所する条件が以前よりも厳しくなっています。入所を希望していても、介護度を満たしていないために入ることができなかったり、介護業界全般の人手不足が慢性的な課題になっていますので受け皿が少なくて入れないケースが増えています。そうなると心もとないけど自宅で頑張らなければいけない方がいたり、やはり住み慣れた家に少しでもいたいという方がたくさんいらっしゃいますので、ご本人さんやご家族の負担を少なくすることが、この仕事の役割だと思います。

 介護用品については事前にこちらから何点かご提案させていただいて選んでいただく形になっています。どのようなものなのかわからない中で、持ってきたものを使うということはないように極力心がけています。用具ひとつとっても一長一短なので、いい部分と担わない部分がありますし、住環境も皆さんそれぞれ違うので比較できるような形でご提案させていただいています。

 住宅改修は個人で対応している大工さんにお願いして対応を取らせてもらっています。今、改修の件数がとても増えてきていますが、増加に見合った人員確保がまだ伴っていないので、お待たせしてしまっている方もいらっしゃるという現状があります。

代表に就任して考えるこれからのこと

 高校を卒業してからずっと介護業界に携わっているのでもう20年になります。以前は病院で介護の仕事をしていたり、デイサービスの相談員業務など場所は変わりましたが、ずっと介護業界で仕事をしてきました。

 これまで会社を経営してきた両親が1月いっぱいで退職になるので、2月1日付で代表取締役に就任し会社も新体制になります。

 僕は基本的に物事に対して何でも最悪の事態を想定するところから入るので、どうしてもマイナスの方に気持ちがいってしまいます。ただ家族も従業員もいますし、何よりも毎日いろいろな方と接するので不安を与えたりしないように、安心してもらえるようにと心がけています。

 介護の業界で何年勤めていても、サービスを利用される方は人生の上での大先輩に当たる方々ですので敬意を払ってお仕事をさせていただいています。

 どちらかというと専門職と業者の両方の立ち位置にいる仕事です。ご本人もご家族も24時間体制で介護に向き合うので、その負担は計り知れません。私たちは納品や相談という一瞬のお付き合いしかできませんが、そんな中でも少しでも手助けしたり、言葉にして吐き出してもらって気持ちをすっきりしてもらったりと、少しでもお役に立てればと思いながら仕事をしています。

 自分もまだまだ経験不足ですけども、これからの社会を担っていく20代・30代の方たちにうまく引き継ぎをしていきたいです。そして関わる方に安心して自宅の生活につなげてもらえるようにしていくのが理想だと思っています。

 介護保険制度は2000年に制度化されましたが、3年おきに見直しが図られています。高齢化や少子化で変わっていかなければいけない部分もありますし、都市部と地方では環境や問題も変わってきますので、私たちの仕事も変化に対応していかなければいけません。税金を使う制度ということもあり、国も財源も考えるとサービスの縛りが年々増えていくことが想定されます。しかし、そのような状況でも在宅での生活を変えずに利用していただくためにはどうすればいいのかを常に考えていかなければいけないと思います。

 中標津は他地域に比べればまだ恵まれた環境下にあると思います。私もそうですが、年齢とともに親の介護の問題や兄弟間で話さなきゃいけないことはどのご家庭もあると思うので、仕事を通していろいろと勉強させていただいています。その経験や知識をゆくゆくどこかで役立てることができればいいと思っています。

(取材/2022年1月25日)