地域住民と向き合って保健所としての役割を
インタビュー:近藤 久史(こんどう ひさし)
北海道中標津保健所
根室振興局保健環境部中標津地域保健室 次長
新型コロナウイルス対応における保健所の役割をお聞かせください
当然感染症法に基づいてになりますが、感染者が出たときにまずは感染を拡大させないための対応を行うこと、また医療が必要な方については適切に医療につなげていくことが大きな役割となります。
病院などで検査をして陽性と判明した場合、感染を拡大させないために濃厚接触者の特定と、患者さんの隔離をおこない、病院と連携し必要ならば入院していただきます。当初は原則入院でしたが、現在では入院するほどではない場合で自宅内で隔離できるのであれば自宅で療養していただいています。
入院の必要はないが自宅では隔離できませんという場合、例えば高齢者の方が自宅にいて、隔離するような部屋も用意できないような方などは宿泊療養になります。ただ、基本的に宿泊療養施設は三次医療圏内※で1つで、釧路にしかありません。患者さんと直接同じ空気にならにようにフィルムを張って、マスク、ゴーグル、防護服を着るなど完全防護の状態で釧路までの搬送を我々がおこなっています。
療養が終わった後は基本的に患者さんではなくなっているので、そこは申し訳ないのですが公共交通機関などを使って自力で帰って来てもらっています。
発症日前2日から感染するリスクがあるので、疫学調査の中で行動歴を確認し、感染のリスクのある方については濃厚接触者という認定をしてその方も隔離します。患者さんと接触してから約2週間は発症するリスクがあるので、2週間は隔離に協力をいただいております(現在は7日間になっています)。
そうして感染の拡大をなんとか食い止めましょうということをずっとやってきました。
現在ではワクチンの接種した方が感染しずらくなっていますし、重症化は少なくなっていることがはっきり数字として出ています。
新型コロナウイルスの対応は、最初は保健所が行ってきましたが、感染が拡大した現在は、例えば感染予防の啓発は根室振興局が行うなど、北海道全体で役割分担して対応しています。管内医療機関との連携や協力はもとより、患者搬送や健康観察など振興局の職員の派遣職員の協力や各町で濃厚接触者への健康観察やパルスオキシメータ(酸素濃度を測定する器械)の配布などの協力をいただいたりしてなんとか対応してたのが現実です。
行動歴は完全には聞き取れないのではないでしょうか
もちろん100%は難しいですが、疫学調査という形で保健師の方がいろいろな経験を積んでいますので、聞き取りの仕方を工夫してさまざまな情報を飛躍的に聞き取りながら、なんとか接触した方を特定していきます。原則は電話での聞き取りです。
保健師さんの人数は決して多くはありませんが、道庁や近隣の保健所からの応援や各町の保健師さんの支援を受けてなんとか乗り切っているという感じです。
問い合わせや相談は多かったのではないでしょうか
事業者さんが、従業員がコロナになったからその後の消毒はどうしたらいいか、発熱したけどどうしたらいいのかなどご相談がありました。
最初の頃は、コロナウイルスは目に見えない、実態もよくわからなかったためとても不安があったと思います。コロナ患者への誹謗中傷に関する相談も結構ありました。
感染拡大防止のために今後おもなうことついてお聞かせください
ガイドラインは改正されるところはありますが、マスクをして、手洗い・消毒をする。適度な距離をとって普段会わない人との飲食については十分注意するなど、最初から変わりません。今後も早く発見して隔離して治療につなげていくというのは基本的には変わらないと思います。
今回のことで僕らは地域のみなさんに支えられているなと改めて思いました。正直最初の頃は患者さんの中にも協力的ではない方もいらっしゃいました。しっかりと向き合って話をしていくうちにだんだんと分かってもらえましたし、最後には、今日退院したんですと挨拶しにくる人もいたので保健所のことも理解してもらっているのかなと思っています。
(取材/2021年12月28日)
※三次医療圏
三次医療圏は、先進的な技術を必要とする特殊な医療に対応する区域区分で、都道府県単位となっている。 北海道では、道南、道央、道北、オホーツク、十勝、釧路・根室の6医療圏にわけられている。対して二次医療圏は市町村単位。一次医療圏(初期医療、プライマリ・ケア、身近な医療)を提供する区域で、おもに診療所や病院の外来医療が中心となる。