ホタテ、秋鮭などを水産加工・販売している丸イ佐藤海産。
昨年12月に新社長として専務取締役の伊勢健氏が就任した。
現状の課題や今後の展望について話を聞いた。
インタビュー:伊勢 健(いせ たけし)
株式会社 丸イ佐藤海産 代表取締役社長
コロナ禍での就任
現状と課題
野付の中学校を卒業後、高校は立命館慶祥高等学校に進学。そのまま内部進学で立命館大学経営学部へと進みました。卒業後は紹介予定派遣でYKK AP株式会社で仕事をしました。紹介予定派遣というのは、お互いのマッチングが良ければ1年後派遣先の正社員となることができます。資料作成やExcelの使い方など、YLL APでは学ぶことが多く、かなり勉強させていただきました。1年後正社員のお話をいただきましたが、地元企業での就職を希望し、佐藤海産に入社することとなりました。入社後2年間は売り手の勉強として、築地市場で出向というかたちで働いていました。
その後野付に戻ってきて、工場で現場作業員として働いていました。現場で働いている際に、作業を省力化できる部分が見えてきて、現場の改善に取り組みました。時間の使い方も段取りを重視し、準備の仕方を変えたことで生産力が上がりました。
現在180名のスタッフが在籍しており、一人ひとりの5分が改善されるだけで、年間で考えるとすごく多くの時間が節約できます。現場の効率化で、生産力が上がったことで会社はよい方向に向かっていきました。
50名ほどの外国人実習生がいるので、コロナウイルスの影響で国に帰れなかったり、国内に入って来られなかったりという問題はあります。販売に関しては、飲食店さんが苦しい状況ですが、海外ではコロナウイルスの影響で漁に出られないですとか、工場が動かないということもあり、ホタテに関しては原料不足です。
国内のホタテは海外に輸出が進んでいるので、国内からも海外からも引き合いが強い状態です。
尾岱沼はホタテの水揚げに恵まれています。これはひとえに野付漁業組合様をはじめとする地域に住むみなさんが海の環境、漁業の環境をよくするための努力を惜しまなかった結果だと考えており、甘みが強く大きい野付のホタテは北海道のトップブランドといっても過言でもありません。
しかし、温暖化の影響なのか近年は鮭の来遊が減少し、苦戦する一面はありますが、いろいろな課題を乗り越えてきた尾岱沼はきっと打開策を見出すのではないかと思っております。
トンネルフリーザーでの作業
帆立のセリの下見
ブラッシュアップで効率化の向上を
適正価格適正品質というのがすごく好きで、売り上げを無理に伸ばすとか、減らすとかそういうことではなく、あるべき会社でありたいです。上を目指す矛先が売り上げなのか、数量を増やすのか、人を増やすのか、そこを見違えないようにしなければいけません。
売り上げを増やすことだけが会社の成長ではなく、ニーズに合うものを作れる会社になれるかどうかが、本当の成長だと思います。品質のよいものを欲しい人にいかに上手に届けていくかが、会社の維持につながるのではないかと考えます。
社内にはまだ改善点があり、売り方、仕入れ方などのブラッシュアップを重点的にすることで、売り上げも伸び、利益も上がっていくと思います。会社の磨き上げを進めていくことが、社長になってやらなければいけないことです。
水産加工は、人手不足という問題があります。機械化が進み、省力化もしています。環境も工場内に空調を完備するなど快適さは年々進化しています。すばらしい水産資源がある尾岱沼の企業として地域人口を守れるよう、しっかりと雇用体制も整えていきたいです。
地域における会社の役割
佐藤海産は、漁師の方々が命を懸けて漁獲していただいた貴重な水産資源を、プロの目利きで値決めし、競りで購入します。その水産資源をお客様のニーズにあうように生産、加工しています。2006年に対米ハサップ、2017年にEUハサップを取得し、海外との取引にも対応してきました。
海と陸が一体となって尾岱沼の海産物の魅力を世界に広めていく役割を担う会社でありたいです。
(取材/2021年8月20日)