創業100周年を迎えて。

創業100周年を迎えて。

創業100周年を迎えて。

地域と共に歩んできた100年
生活基盤を支える企業として今後目指すべき道とは。

インタビュー:小針 武志(こはり たけし)
小針土建株式会社 代表取締役社長


創業当初はどのような会社だったのでしょうか。

 曾祖父が野付牛(現在の北見)に入り、その後中標津に入植し大正10年に建設業を始め、今年で100周年になりました。現在は土木工事が主体ですが、当時は同程度に建築もおこなっていました。まだまだこの辺りは原野だった時代で、開墾をし、道路を作り木橋を架けるなど生活基盤の整備をおこなっていたと聞いています。中標津と共に歩んできたといっても過言ではないと思います。

100年経った今、
会社のこれからをどのようにお考えなのかお聞かせ下さい。

 社会基盤もある程度は出来上がってきたという感覚も持っていますが、やはり釧路・根室管内は高速道路網を含め、交通網の整備がまだまだ遅れています。それでも中標津町がこんなに地域の中で発展した事を考えると、やはり空港があることが大きいと思います。空港を拡充してきたことで多くの人が、短い時間で往来ができるようになりました。

 次に必要になるのは「モノ」が短い時間で輸送できることだと考えています。首都圏など都市部との間で、人とモノが同時に安全・安心に早く往来できる環境を提供するのは自動車専用道路であり、道路は市民生活や経済活動を支える重要な社会基盤の役割も果たすため、人・モノの交流の促進のためにも非常に重要です。当社もそれらの整備をより一層進めていくための一役を担っていきたいと思います。

 そのためには、技術力が伴っていなければなりません。今は人材を獲得するのも大変な時代になりましたので、なんとか若い方々に今までの技術力を継承していきたいと思います。同時に今はデジタル化が随分と進んだ世界になりましたので、そういったノウハウも活かした技術の向上を現在進めているところです。

 測量ひとつとっても、基礎の高さなどを正確に把握するために、人が木材を使って丁張(ちょうはり)という目印を設置し、それに沿って機械で地面を掘っていたのですが、現在では全て自動化されており、機械にデータを入力しておけば丁張が無くても正確に作業が出来るようになりました。今ではドローンやレーザースキャナーを使った3次元測量から3次元設計データ・施工計画の作成、ICT建機の制御データの作成・配信、3次元データを活用した施工管理・検査までを担い、工期短縮を計っています。ICT技術というのですが、そういったこれまでのノウハウとハイテクな技術の両方を活かした施工を推し進めていかなければいけないと考えています。

 ただ、ハイテクな技術だけに頼り切ってしまうのは危険で、何もわからない状態では失敗など、もしもの時に、なぜそうなったのか、どうすればいいのか対応できなくなってしまいます。

 やはり基礎技術を習得し、なぜそうなるのかを理解しないといけません。ハイテク技術も使うのは人間ですから、学習して理屈をわかった上で使いこなすことは当然です。

やはりこれまで受け継いできたものと、
これから積み上げていくものがあるのでしょうか。

 先人たちが各分野、様々な現場で苦労をして基礎を作ってきたという歴史があります。それを継承しながら、道路工事にしても海上工事にしても土木という仕事において、オールラウンドにこなせる会社でいたいと思っています。災害時の対応も色々とさせていただいていますし、道路の除雪もおこなっています。各分野におけるプロフェッショナルを今後も増やしていきたいと思います。

 ただマネジメントするのは人なので、人間の内面性など人自体を鍛えていかなければいけません。例えば、現場代理人はひとつの工事をする上では社長でもあります。だからこそ「私はそんなことを知りませんでした」なんてことは通用しませんし、自然が相手の仕事でもありますので、気象条件なども加味しながら進めていく必要があります。

 海に関していうと、地域ごとの波の立ち方や一番静穏化するシーズンを狙って工事をおこなう必要があるため、いつが適切なのかということも知っていなければいけません。現場における判断力は、日々の細心の注意と配慮が必要不可欠で、多くの現場に携わって育まれるものです。

 地域自体のこともよく知っていないとうまく事が進みません。それには農業関係の方々や漁業関係の方々と普段からコミュニケーションを取っておくことも重要なことのひとつだと思います。

 土木技術の本質は、必要な技術を集めて目的を達成することですので、変化に対応しより良いものを提案し、創造できる企業。そして、常識を揺さぶり、創造の意欲をもつエンジニア集団でありたいと思います。

コロナ禍で変わったこともあったのでしょうか。

 世界的なコロナ禍で、人が集まることが難しくなりました。私たちの業界でもオンライン会議をはじめ、IT化がこれまで以上に随分進みました。

 また働き方改革においてICTを活用した生産性向上が進められる中、発注者側の監督職員が建設現場に直接足を運ぶことなく、事務所などの遠隔地からインターネットを介して各種検査を実施する「遠隔臨場」が試行され始めています。

 遠隔臨場のメリットは、検査場所への移動やそのための調整、さらに新型コロナウイルス感染症拡大防止対策としての「3つの密」を回避する非接触型での確認が可能な点であり、受発注者双方の負担が軽減され、働き方改革や生産性向上にも繋がる側面があります。これもすでに導入されていますし、これからはより進むと思います。

 一般の方々が思っているよりも土木の世界は現在ハイテク化していると思います。

社会の変化で変わってしまったこともあるのでしょうか。

 およそ20年前までは、稚内や留萌、旭川、札幌まで行っていましたが、今は選択と集中により道東三地区、網走、十勝、釧根で施工しています。昔は全道、直接先方まで入札のため出向いていたのですが、入札業務で各地に行ったことでその地域のことを知ることができました。また、入札会場には地元の建設業者さんも当然いるので、そういった方々とお話できたりすることで、よりその地域のことを理解することができました。

 今は電子入札となり、会社に居ながら入札ができてしまうので、そういうチャンスがなくなってしまったと思います。実際行ってみないと分からないことが多くありますし、そのころ知り合った方々との親交は本当に今でも財産です。そういう機会が少なくなってしまったことは少し寂しく思います。