創業50周年を迎えた養老牛温泉 湯宿だいいち。
2021年7月に新社長として長谷川周栄氏が就任した。
コロナ禍で苦境の宿泊業界、どう立ち向かってゆくのか?
インタビュー:長谷川 周栄(はせがわ しゅうえい)
有限会社 湯宿だいいち 代表取締役
これまでの活動
中標津高校を卒業後、サンフランシスコのフットヒルカレッジとハワイのマウイコミュニティーガレッジに留学をさせていただきました。
語学はもちろん、マウイコミュニティーガレッジでは経営学科だったので、ホテル経営のマネージメント、アカウンティング事業から飲食の調理・配膳とかベッドメイクまで、ホテルのすべての仕事をそこで学ぶことができました。
卒業後は帝国ホテルでベルボーイとして1年間働かせていただきました。本当ならば、もう少し帝国ホテルで仕事をする予定でしたが、会社の人手不足もあり2002年に戻ってきました。
会社に戻ってきて取り組んだことは、経営ではなく接客の方でやらせてもらったので、チェックインやチェックアウト、学んできたノウハウを利用しながらマニュアルの作成やオペレーションのシステム改善に取り組みました。社外では中標津青年会議所、全国ホテル旅館生活衛生協同組合などで活動していました。
コロナ禍での社長就任
現状と取り組み
昨年は前年と比べ2割ほど数字が落ちました。今年に入り1、3、5月という緊急事態宣言があった月は厳しいですが、宣言明けになんとか盛り返しているという状況が続いています。コロナ禍で戦況としては決してよくはないですが、同業種の仲間から有益な情報が収集できるようになったので、それを基に戦略を立て、幸い今の状態であればなんとかなるだろうと思います。
アフターコロナを見据え、ワーケーションの取り込みに必要なWi-Fiの整備などを、補助金を活用しながら進めています。POS端末のシステムやOTA(オンライントラベルエージェント)にシフトして業務の簡略化も図っています。
SNSコンサルタントに依頼をして、情報発信にも力を注いでいます。インスタグラムでのリーチが1投稿1万程度まで増えたので、発信力も強化できたと思います。
サウナ改装で閑散期の集客対策
冬の集客の弱さという課題に対し、今年の冬にサウナを改装します。
ととのえ親方と呼ばれる松尾大さんのTTNE株式会社にプロデュースを依頼しました。今年の6月に北こぶし知床 ホテル&リゾートがTTNE監修で、知床の大自然を眺めることができるサウナにリニューアルオープンしました。
計画段階で具体的な話はできませんが、 大自然に囲まれた当宿の魅力を活かし、冬の集客改善につながる話題性を期待しています。
道東の魅力
地域での役割
近年、女満別─関西国際空港間、釧路─関西国際空港間、釧路─成田間とLCCの就航で関西、関東から道東への旅がより気軽なものに変化し、お客様の数は増えています。特に関西圏のマーケットが広がったことは、この地域に大きな経済効果があります。道東、知床への憧れは昔から根強く、気軽になったことで動向は加速していくと思います。
地域がないと会社も成り立ちません。社会貢献や地域商業の発展も真剣に取り組んでいかなければならない局面がきています。養老牛温泉に旅館が一件しかなくなってしまったというのは、手をつけるのが遅すぎました。1件で動くということは組合を作ることができないので、制限が生まれます。自分の責任であると認識し、それを教訓に地域でそのようなことが起こらないよう取り組んでいかなければなりません。
会社の未来
企業ブランディング
働いてくれているスタッフが、だいいちで働いていることを自慢できるような会社にしていきたいです。だいいちで働くことがひとつのブランドとなるようなブランディングを進めていきます。大手の企業と並ぶくらいの給与体制や待遇などの改善を計り、働きたい人が集まる会社にしていきたいです。自分で会社や地域のことを考えて行動できると、仕事も楽しくなりますし、生き生きとして働く姿が会社のブランディングにもつながります。
旬な情報をいち早く知り、取り入れ発信していく、スタッフがひとりひとりが考え行動できる環境を作っていけるよう取り組んでいきます。
(取材/2021年8月19日)