別海の魅力をもっと知って欲しい
─周知のデジタル&有事のアナログ
インタビュー:石川 貴工(いしかわ たかのり) Next-BETSUKAI 代表
吉田 和行(よしだ かずゆき) Next-BETSUKAI 副代表
ネクストベツカイの成り立ち
成り立ちからいうと少し遡るのですが、胆振東部地震の時にブラックアウトがありました。電気がなかったら何もできません。充電が切れてしまえば携帯もスマホも使えなくなってしまい、アナログのラジオぐらいしか情報収集できるものがありませんでした。
しかし、アナログラジオを聴いても、広域の情報でしかありません。一番知りたい地元の情報が入ってこないわけです。自分の足で探さないと情報の収集ができない上、得た情報も交錯してしまっていて、正しい情報かどうかもわからない。
例えば、学校が休校にはなりましたが、休校の知らせは小中の校長先生が車に乗り合わせて拡声器で伝えて回っている。電話が使えないならそうなるよなと思いました。オール電化の家ではトイレも使えない状態になりましたが、実は中学校が避難所になっているのでトイレが使えていました。そういった情報すらまったく拾えない状態でした。
その時に、狭い地域の必要な情報を発信するアナログのラジオ局を立ち上げたいと思いました。しかし電気が復旧した後は需要がなくなってしまいます。正直、平常時にアナログラジオの放送をやったところで誰も聴かないと思います。それでも災害時に使えるアナログラジオが欲しいと思いました。
ただ、いきなりアナログラジオをはじめたとしても、放送があること自体知られていない状態では聴いてもらうことができません。まず先に知名度を上げる必要がありました。
平常時に情報を受け取る方法のメインがデジタルになっている時代ですから、アナログを宣伝するためにデジタルを活用して、まずは存在を知ってもらうためにYouTubeでの情報発信をはじめました。せっかくYouTubeをはじめるのであれば、別海という町のことを広く拡散して皆に知ってもらうために、ネクストベツカイを仲間と立ち上げ昨年の5月より活動を開始しました。
アナログのラジオに関しては、準備が整った段階で、YouTubeで宣伝しながら「何かあった時にはラジオでこのチャンネルを聴いてください」という流れを作りたいと思います。
考えているのは別海町全域に情報を発信するような局ではなく、西春別なら西春別の情報、尾岱沼なら尾岱沼の情報というように、有事の際に役立つ局です。避難所が開設されたとか、どこどこで水を配布していますなどのような、狭い範囲の情報をその地域の方が拾えるラジオ放送です。災害情報ツールとして役立つ形になればよいなと考えています。ひとつの局である必要はなく、3カ所なら3カ所に設置する形で。ただ、電波法がありますので、あまり範囲を広げると話が変わってきてしまいます。どういう形に持っていけば実現できるのかということも含めて、課題をひとつひとつクリアしていかなければいけないと思っています。
YouTubeを通した活動
YouTubeでの情報発信に関しては、基本的にはなんでもありです。ただ、名前に地名を入れて町のことを広く知ってもらうことが目的ですので、そういった面ではある程度限定された活動になると思います。活力ある人などの紹介や場所、歴史などさまざまな形で魅力的な別海を紹介していきたいと考えています。
これまで、ジーコハウスさんに足を運び取材しながら食事をしたり、ホタテ漁に密着取材として実際船に乗せていただいたり、道の駅で撮影を行ったりとしてきました。
人によって違いはありますが、反応はだいたい2パターンに分かれます。「(映すのは)やめてください」という人と、たくさんの話をしてくれて、仲良くなったり、すぐにチャンネル登録までしてくれる人と。
尾岱沼のホタテ漁に密着した時は、船団で国後島の境界線ギリギリのところまでいきました。羅臼岳よりも国後島の方が近いような場所です。船団なので無線機を使って船同士のやりとりをしているのですが、乗っているのとは別な船の方に自分たちが乗っていることを伝えてくださり、名前を聞いてその場でチャンネル登録をしてくださった方もいらっしゃいました。なかなかできない体験をすることができたと思います。
西春別駅前の公民館の事業として、子どもたちのクリスマスイベントをオンラインでできないかという相談を受けたので、生配信という形で一緒に放送しました。その時に、学区内の子どもたちに配るプレゼント抽選会をおこないました。事前に配布されたチラシの中にナンバリングし、放送中にくじを引きました。当たった人はプレゼントを取りにおいでよという形です。これはなかなか好評でしたね。上春別で廃線跡地の動画を撮ったこともあります。
動画の撮影のほか、クリスマスの時のように月に1回、独自に生放送をおこなっています。内容はその時に合った別海町の時事的なお話などを話しています。
本当にまだ手探りの状態で、何をどうすればよいのかは直近の課題でもありますし、見てもらうためにはまず知ってもらう必要があるので、どうすれば広く知ってもらえるのかを考えていかなければいけません。
ただ、ジーコハウスさんにいって動画を配信した時に少し感覚をつかんだ気がします。動画に参加してくださった方は応援してくださいます。実際、その時の動画は再生回数が増えました。自分本位の動画ではなく参加型という形で足を自分たちが運ばないと、閲覧する人は増えていかないなというのを実感しました。
やはり人と人の繋がりを増やすことが大事だと思いましたし、今後さらに多くの人と触れ合っていきたいと思います。また、撮影技術もまだまだあげていきたいですし、ドローンも使った撮影もしたいと思い、免許を取る予定です。
現在6人で活動していて、僕を含めたメインメンバー3名で企画立案、演者、動画編集と役割分担しながら主に活動しています。ほかにも学校の先生なども参加してくださっていますし、町おこし協力隊の方もサブメンバーのような形で手伝ってくれています。3人で活動することが多いのですが、YouTubeの生配信時にはみんな集まって話をしたりしています。
生放送は金曜日の夜7時半と決めています。配信の日は時間を逆算してセッティングや準備をするのですが、全員本業がある中での活動なので、時間を合わせなければなりませんし、その日は毎月あわただしいですね。
現地へ直接足を運んでの撮影はとても楽しいです。生配信はリアルタイムでコメントが入ってくるので、見ている人とコミュニケーションが取れるのがおもしろいです。さらに周知をしてたくさんのコメントをいただけるようなチャンネルにしたいと思っています。
例えば西春別から尾岱沼まで撮影に行くとなると、非常に遠くて簡単に行ける距離ではありませんが、繋がりを作る必要もありますし、なにより多くの方に知ってもらう必要があります。それも含めて楽しみながらやっています。
なにより別海町は広い町なので、町と町が遠いこともあり、例えば西春別の方が尾岱沼のことはよくわからないということが多かったりします。ひとつの町でありながら情報の共有が難しい町です。この広い別海町の中で、点と点が線でつながるような活動をしていきたいと、みんなで話しています。そのためもあって、遠くても尾岱沼や上春別へ足を運び撮影をおこなっています。
今後活動していく中で、メンバー全員別に仕事があるため活動に限界があります。また、予算面でも今は全く収入源がありませんので、どこかでマネタイズできる環境を設計しないと、たぶん長くは続かないと考えています。現在行っている活動とは別な形でマネタイズできる方法も考えていきたいと思います。
Next-BETSUKAI