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コロナ禍で見えてきたもの
もう一度、古き良き伝統を。
コロナ禍で「ハレの日」需要に打撃。
休業要請、イベントの自粛、全国的に苦境に立たされる写真館。
地元写真館にコロナ禍の今を聞いた。
インタビュー:荒木 功(あらき いさお)
スタジオアラモード 代表取締役
コロナによる影響はありましたか
この度のコロナ禍の中でお亡くなりになった方に対してご冥福をお祈りいたします。現在、闘病中の方については早く回復されることを望んでおります。
4月20日の北海道の緊急事態宣言で、営業をしないでくださいという項目の中に写真館も含まれていたので1ヶ月ほど休業していました。4月と5月は休業をしていましたので売り上げは前年の半分以下と非常に厳しい状況でした。9月末から10月くらいの七五三の記念撮影も感染を恐れ、不要不急の動きが身に着いてしまっているのか来客数は減少傾向です。
成人式も中標津と別海は延期となり、標津町は中止ということで、前写しは前年並みの動きはありましたが、当日の予約は半分がキャンセルとなり厳しいスタートとなりました。売り上げとしては困りますが、各教育委員会で延期もしくは中止としたのは正しい判断だと思います。
札幌や東京から帰省して成人式に出席する人が集えば、ウイルスをまき散らしてしまうことになるのは目に見えているので、教育委員会の判断には拍手を送りたいと思っています。
それほど多くはないですが、今までは釧路や北見の写真館で撮影していたお客様が感染が怖いのでとご予約をして頂けます。暗い話題ばかりですが、そのようなお客様がうちを選んでくれたことはうれしく思います。
休業要請を受けどのように感じましたか
未知のウイルスだった去年の入学シーズンでは、どのようなウイルスかはっきりとわかっていなかったので、そこは大きく網をかけて休みなさいと言った北海道知事の判断は、どこの都道府県よりも早かったので素晴らしい判断だったと思います。こういうことはやり過ぎるくらいやっておいて後でやり過ぎちゃったけど判断が良かったという方が良いと思っています。それに対して後から科学的根拠はどこにあったのかと文句をいう人たちも政治家の中にはいますが、知事があそこで早く判断したおかげで感染数がぐっと下がったという事実があるのだから後から文句つけることではありません。写真館というのは赤ちゃんを写すときは50センチくらいの距離であやしながら写します。七五三撮影では着替えする時にお客様のすぐ側で作業しなければいけないですし、休業要請の対象となるのは仕方がなかったと思います。
ウイルスについて解明されてきている現状では、換気や予約数を減らすこと、マスクの着用、お客さんが帰った後にテーブルなどアルコール消毒するというような対策をとれば休業要請という厳しい判断は必要ではなくなったかもしれませんが、あの時はそれで良かったと思います。
コロナ禍で見えてきたこととして、この地域だけではありませんが、たった1ヶ月の休業でも多くの飲食店や中小企業が廃業してしまうという現実に直面し、日本の経済のあり方が間違っているのではないかと思います。企業としては半年、1年間の休業に耐えうる資金を蓄えておかなければならないと思いますが、海外企業の進出やグローバル社会という構造が、利益を落として商売をしなくてはならないという、矛盾を生み出しているのではないでしょうか。
消費者もこだわりがなく、安ければ買うという消費価値観が浸透しています。日本の社会で心のこもった手作りのものや工業製品の技術など、古くから続いてきたメイドインジャパン品質が失われきたと感じます。
写真館で使用する和傘も日本製はありません。和傘を作るには竹の骨を作る職人、紙を作る職人、それを傘の形にする職人、漆を作る職人という技術をもった方が必要です。海外製の安い和傘風のものが売れることにより、価格は安くはないですが品質の良い和傘が売れなくなり、職人の生活は成り立たなくなります。職人たちは高齢化するが、次を任せられる世代がいなくなってしまい、和傘を作ることができなくなります。海外製の和傘は華やかで今風のデザインではありますが、ペラペラで傘の裏が写る撮影には使えません。
もう一度日本の産業は汗を流し、手をかける労働、技術に対ししっかりと対価が得られる社会にならなければいけないのではないかと思います。
安全対策はどのようにしていますか
休業が明けてからも1ヶ月ほどは営業時間を短縮し、手洗い、うがい、アルコール消毒などの感染予防対策を講じて営業していました。6月22日から営業時間を平常に戻しましたが、いつもなら30分に1件、1時間に2件のご来店の予約を取っていましたが、撮影がスムーズにいかない場合に密になってしまいますので、予約は1時間に1件と変更して引き続き感染対策を取りながら営業しています。100日や1歳、七五三の撮影など小さなお子様を撮る時や、枚数が多くなりそうな時は1時間半と長めに設定して、営業中の決められた時間の中でなるべく予約を少なくして対応しています。
行政に対して思うところはありますか
周辺の町では事業をやっているところに北海道とは別の支援があったのですが、中標津町はありませんでした。町の財政を考えると難しいとは思いますが、うらやましくはありました。飲食店や宿泊業が厳しいのはわかりますが、それ以外の業種でもコロナの影響を受けて売り上げ減に苦しんでいる業種もあるというところを、もう少し広く現場をリサーチして欲しいです。
ここ30年くらいの間に地震や津波などの災害がいくつもあって、それぞれの被災地の避難場所で水がなくて困っているという報道を何度も目にしました。トイレが使えないから排泄物を手作業で処理しているということが現実に起こっています。
中標津町の小学校を建て替えるという時に、意見をいう場があり、避難所になる場所でもあったので、手押しポンプの設置を要望しましたがお金がないと却下されました。自衛隊が来るから大丈夫という回答でした。自衛隊が出動している被災地でも起こっている事象ですが、本当にそれで良いのでしょうか。コロナ禍で災害が起こると、手を洗う水がないという状況によって感染の拡大に歯止めがかからなくなる恐れがあります。各町内会に1つというかたちでも良いので設置をご検討頂きたいです。手を洗う水、水洗トイレに流す水、それが自分で手押しポンプで得られるということは非常に大切なことだと思います。
町内の飲食店でお客さんが来ないからテイクアウトでがんばろうという動きがあったのは自主的な動きでとても素晴らしいと思います。しかし、組合や商工会に入っていないお店や、スナックのように対面でなければなりたたない業種に対しても、業界全体で手を差し伸べて助けてあげて欲しいと思います。
組合や商工会に入ってないからあそこは関係ないではなく、困っている時には手を広げてみんなで助け合って、組合や商工会という仕組みがありますからこれを機会に加入を考えてはどうですかと仲良く乗り切っていこうという気持ちがあったらうれしいなと思います。