寿宴のスタイルはそのままに
料理提供の強化と新たな挑戦
会場を商品として提供していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でほとんど利用がない状態に。手探りながらも宴会場だから提供できる料理で乗り越えるべく奮闘していた。
インタビュー:菊池 憲一郎(きくち けんいちろう)
株式会社 寿宴 代表取締役
コロナによりどのような影響がありましたか
寿宴の事業は主に『宴会』『婚礼』『法事』『家族の祝い』『貸館』になります。
昨年の緊急事態宣言に入った直後から、受けていたお客様からの予約が全てキャンセルになり、約1年に渡り『宴会』のご利用がほぼなくなりました。3~4月の歓送迎会シーズンはもちろん、5~6月に行われる各団体様の総会においても書面総会になり、懇親会を行うことにはなりませんでした。婚礼部門においても昨年受けていたご予約は日延べとなりましたが、式の日取りを決める『着地点』までには至っておりません。結婚式の問い合わせも頂いてはおりましたが、どのお客様もコロナの影響で足止めを余儀なくされる状況です。
法事部門においては、案内状から当社で作成しています。昨年は初めて法事を行わない旨の案内状を作ったというケースもありましたが、6月以降は少人数ではございますが件数も戻ってきました。多少スタイルが変わり、法事後の会食ではテーブルを囲むことなく、読経後に折詰を持ち帰って頂く形が多くなってきました。
家族の祝いについてはお子さんの誕生日や、還暦をはじめとする長寿の祝い等、家族の集まりについてはコロナ禍でも多くのお客様にご利用して頂いております。コロナの影響下でもお客様に安心して頂けるよう最善の注意は払っておりました。換気、消毒、検温の徹底。団体様の会合においてはソーシャルディスタンスを守るために広いスペースを確保した会場提供、ZOOM等インターネットを活用したウェブ会議にも対応できるよう環境を整えました。現在、ウェブ会議のご利用が多くなってきております。
例年であれば、10月辺りから忘年会の予約が入ってきますが、昨年は12月になっても予約の電話はなりません。また、早い時期から予約されていたお客様も決定にはなかなか至らず。心のどこかで年末には通常の状態に戻っていて忘年会シーズンを忙しく迎えたいと期待していましたが、忘新年会シーズンに予約は入りませんでした。創業以来初めての経験でした。
収入減からどのような事業の対策をおこないましたか
お客様のご利用が少しずつ戻ってきていますが、やはり売り上げには大きな影響が出ています。一番大変だったのは4月で、前年比の90%以上の減少となりました。
年間を通して大幅に売り上げがダウンしている中で、雇用調整助成金や、持続化給付金等の補助もしっかり受けさせて頂きました。少しでも収入を得なければならないと思い宴会が入らないのなら寿宴の宴会料理をテイクアウト、デリバリーで提供しようと宣伝させて頂き、タクシーイーツの力添えもありまして多くの皆様にご利用されています。年末には長年やっていなかった年越しオードブルの販売にもチャレンジしています。今後もテイクアウト、デリバリー事業での料理販売をさらにステップアップしていきたいと思っています。
また、昨年は寿宴にとって新たに焼肉部門をスタートする年となりました。寿宴向いの炭火焼肉雅々(がが)を前経営者様より当社で引き継ぐことになりました。売り上げが大幅に落ちている中で、焼肉部門は大きな力となっています。今後、雅々で寿宴のメニューを提供させて頂くことも視野に入れてがんばっています。
寿宴としての事業のスタイルを大きく変えることは難しいですが、当面は今までのスタイルを保ちつつ、今ある商品を強化し発信していこうと考えております。
この一年、本当に周りの仲間をはじめ多くの皆様に助けられています。『お!寿宴のみんながんばっているな!』と地域の皆様に感じて頂けるよう努力して行きます。売り上げが落ちていない飲食店はありませんし、飲食に限らずどこも大変な状況にある中、同業者や友人と助け合いながらこの危機を乗り越えている途中だと感じております。『喜ばれることに喜びを』をモットーにポジティブ&チャレンジの思考で日々がんばっています。