ウィズコロナ ─ 医療・介護・子育ての現場から②
利用者と家族の不安、職員の不安を取り除くために

ウィズコロナ ─ 医療・介護・子育ての現場から②<br>利用者と家族の不安、職員の不安を取り除くために

ウィズコロナ ─ 医療・介護・子育ての現場から②
他に類を見ないレベルの感染症の蔓延の中とられた対策とは

利用者と家族の不安、職員の不安を取り除くために

高齢者ほど重症化しやすいと言われる新型コロナウイルスから、利用者と職員を守るために手探りで始めた感染防止対策と、そこから見えた大切なこと。

【取材】社会福祉法人 中標津朋友会/中標津りんどう園 施設長
犬伏 善則(いぬぶせ よしのり)


手探りの中での防止対策

 新型コロナウイルスの一番大きな影響を受けたのは、ご家族さんとの面会ができなくなったことです。

 今年の冬もインフルエンザが流行ったために面会を禁止していましたが、収まってきたので面会を解禁しました。しかし、その直後の2月25日に新型コロナウイルスの影響で厚生労働省からも通達があり、再び禁止することになりました。それが今日まで続いています。同時にZOOMを利用したオンラインでの面接に関しての提案があり、当施設では即導入をしました。直接触れ合ったり、顔を突き合わせての面会ができないことは利用者さんや家族にとっては大きなストレスとなりますので、各事業所で頭を悩ませたと思います。

 ソーシャルディスタンスや咳エチケットなど、感染対策を講じながら面会していただけるのかを考え、飛沫感染を防ぎながらもすぐ近くで顔を見ることができる方法として窓越しでの面会も行いました。ただ、集中すると密を作ってしまうので時間をくぎりながらの面会となりました。

 マスコミではさまざまな報道がされていましたし、さまざまな噂も聞こえてきます。当時はどのようなウィルスかもわからない状態ですので、正しい情報なのかどうか、またどういった対策か望ましいのかを見極めようと会議を毎週開いていましたし、現場でも職員同士で正解のない状態で委員会を何度も行い協議しました。

 感染防止対策を取りながらも利用者さんやご家族のための面会方法がないか、たとえば、飛沫による感染防止だけではなく、手を触ったり、涙が出てしまった時にハンカチやティッシュを渡すなどの接触はご遠慮頂かなければいけません。そういった時には職員がおこなうなどの配慮をしながら方法を前向きに協議しているところです。

 また、利用者さんは施設の中で生活するだけではなく、外出する機会が結構あるのですが、なかなか外出できないのもストレスになっていると思います。少しでも緩和するために対角線上に窓を開けて換気しながらちょっとしたドライブをおこなう。密にならないように中庭を散歩したりバーベキューをするなどの取り組みもおこなっています。


利用者と職員の安全を考えて

 やはり利用者さんの安全第一を念頭に各職員が感染症対策をしっかりとおこなう必要があるので、感染症対策委員会の中で練りに練って作った行動指針があります(図1)。指針ではマスクや手洗いはもちろんですが、自分がいつ媒介者になるかもしれないという警戒心を常にもつよう促しています。

 多少調子が悪かったとしても頑張ってしまう人もいるので抵抗感がある職員もいると思うのですが、そこは必ず自己申告するようにしています。毎日3回の検温の習慣化を図っていて、平熱より高い場合は電話連絡してもらい上司の判断を仰ぎ、場合によっては休みにします。どうしても自分が抜けることで他の職員の負担になることを危惧してしまうと思うのですが、まず無理をしないこと、我慢をしないことが大事であることを徹底しています。

 自分のためでもあるのですが、なにより利用者さんのためですし、他の職員のためでもありますから、体調万全な状態で仕事にあたる必要があります。

 これまでもインフルエンザをはじめ、さまざまな感染症や食中毒の予防のためにおこなってきたことではあったのですが、マスクや手洗いを徹底することの重要性が改めて非常に大切であることを再認識できたと思いますし、意識しておこなうことが大事な視点だと思います。

 ウイルスは利用者さんが持ってくることはありません。持ってくるとすれば施設の外で日々生活する職員です。この仕事は、利用者さんを離れて見ているようなソーシャルディスタンスはできませんので、職員のストレスは非常に大きいと思います。

 東京にしろ札幌にしろ、職員本人や家族がどうしても私用で行かなければいけないとなった場合、もし行った先で感染していたらどうしても濃厚接触になってしまいますから、そのへんの葛藤が非常にあると思います。知らずに施設に入って持ち込んだらどうしようと。職員は非常に悩んでいるところです。

 お子さまがいる職員も多く働いていますので、家庭でも職場でも非常に気を使っていると思います。修学旅行に行かれるお子様をお持ちの職員もいるのですが、やはりぎりぎりまで悩んでおられました。修学旅行は教育としても非常に大きな役割を持っていると思いますので、悩まずに子どものためを思って判断するようにと話しています。

 最後に、私たち僕たちの仕事は利用者さんの元気や笑顔を引き出すことが大事なところです。マスクをして顔の半分近くを覆ってしまっていても、職員の心意気として少しでも最高に笑みを出せるように、しっかり笑顔で対応することがプロとしての大事なところだと改めて思いました。