持続可能な食糧供給と農業の維持発展のための協力体制を築く

持続可能な食糧供給と農業の維持発展のための協力体制を築く

農業経営の持続的な発展のため、堅実に基盤を固め前進を目指すために、地域社会や関係機関との連携を強化。

インタビュー:北村 篤(きたむら あつし) 
計根別農業協同組合 代表理事組合長


クラスター事業ではどのような取り組みが行われましたか

平成27年から始まったクラスター事業は、未来に向けた重要な一歩でした。生産基盤を単に集約するだけでなく、昭和40年から50年代に建てられた牛舎から、新たなスタイルへの転換が実現されました。国の支援を受けて牛舎を刷新することで、これまで以上に効率的な運営が可能になりました。特に搾乳ロボットの導入による生産規模の拡大は、離農の問題にも対処する一環として大きな役割を果たしました。離農者の生産基盤を受け継ぎ、永続させることが私たちの使命であり、地域全体の安定にも寄与しているのです。

ただし、コロナ禍の影響は否応なく受け入れなければなりません。生産の抑制もある中で、それでも私は皆さんに生産を続けていただきたいと願っています。この困難な状況こそが、私たちの努力がより一層必要とされていると感じる瞬間なのです。

近年、建物の価格が高騰しており、この動向は生産額に大きな影響を及ぼす要因となっています。生産の規模が収益に影響を与える中で、資金を借りて投資を行う際には、償還計画の整合性を注意深く考える必要があります。国の支援を受けながら、堅実に基盤を固め、確実な前進を目指す覚悟を持つことが大切です。

現在の生産抑制について、その理由と背景をどうお考えですか

新型コロナウイルス感染の広がりにより、人々の移動が制限され、インバウンドの減少などが大きな要因として浮上しました。緊急事態宣言による臨時休校で学校給食が取りやめとなり、牛乳の需要が減少。このバランスの乱れこそが、生産抑制の背景です。特に牛乳や乳製品の需要低迷は、農業全体の収益にも大きな影響を与えています。

クラスター事業によって生産基盤を強化しましたが、生産抑制により採算が伸び悩む状況が出てきました。生産基盤の整備と償還計画の進行は大切ですが、投資を行った生産者たちにとって、生産の拡大が難しいというストレスが浮かび上がっています。さらに、生産資材費の上昇も状況を複雑化させています。飼料や水道光熱費などのコストが上昇しており、これが経済的な負担となっています。

私たちはクラスター事業を通じて基盤整備を行った事業者が着実に活動できるよう支援しています。組合員に向けて説明会を開催し、個別の面談を通じて最適な方針を見つける取り組みを進めています。現状を正確に把握し、適切な判断を下すことが、将来の不確実性に向き合う鍵です。過去の生産抑制の経験を踏まえつつ、目標の達成に向けた進展状況や方針を検討し、確実に前進していく決意を持っています。

酪農経営において、現在どのような課題や問題点があると考えられていますか

価格転嫁に関しては、着実な進展が見られつつありますが、まだ改善の余地があると考えています。収支のバランスや需要と供給の調整が肝要であり、特に国内産品において価格転嫁を実現し、消費者の認識を向上させるためには、情報発信が欠かせません。この重要な課題に向け、組合は一丸となって取り組み、消費者の理解を得るための努力を惜しまない姿勢を示しています。

組合は年間を通じて目標の設定や方針の変更に努めていますが、方針転換は経営者たちに大きな影響を及ぼすため、慎重な検討が求められます。次期計画についても、すでに4月から段階的に取り組みを進めており、目標に向かって着実に前進する予定です。

酪農経営を支えるための働き手不足の原因は何だと考えられますか

根本的な問題は少子化です。酪農経営だけでなく、コントラやTMRセンター、農協など、広範な分野で人手不足が深刻化しています。人口減少と高齢化の潮流が後継者不足を一層深刻なものにしています。この問題に立ち向かうためには、スマートな技術の導入も不可欠です。

持続可能な農業経営を支えるためには、魅力的な収益面を確保することも大切です。クラスター事業の展開により、担い手が増えたと感じています。経済的な安定がなければ、若い担い手の流入も難しくなります。

生産の基盤を維持するためには、生産額と生産量を増やしていくことが必要です。現状を克服し、より多くの生産を実現することが、未来への投資です。

将来に希望を持てるようにするためにどのような取り組みをされていますか

農業の重要性は、食料安全保障の観点からも強調されており、持続可能な農業の確立が喫緊の課題となっています。食料供給を安定させるためにも、農業経営の持続的な発展が不可欠です。政府や地域社会、農業関係者が連携し、将来にわたって安定的な食料供給と農業の維持を実現するための努力が不可欠です。

一件当たりの農地保有量には限界があり、これ以上の離農は厳しい状況です。私たちは地域で中心的な一次産業である酪農を維持していくことが求められていると考えています。過去には生産抑制の経験もありましたが、今回のような状況は経験のないものです。将来にわたる持続可能な食料供給と農業の発展のために、私たちは協力し、努力を惜しまない覚悟で進んでゆきます。皆さんのご協力により、消費拡大やその他の支援に心から感謝申し上げます。

(取材 2023年8月7日)