地域を襲うコロナショック
コロナと戦う地元企業
有限会社 湯宿だいいち

地域を襲うコロナショック<br> コロナと戦う地元企業<br>有限会社 湯宿だいいち

コロナ禍でダメージを受けた観光業
会社・雇用を守り抜くために奮闘する

宿泊業界は経営破綻も相次ぎ、コロナ禍の打撃が大きい業界の一つだ。道内の温泉宿でも屈指の評価を得ている「湯宿だいいち」も例外ではない。中標津町の観光資源でもある養老牛温泉を守る、覚悟を持った戦い。

インタビュー:長谷川 周栄(はせがわ しゅうえい)
有限会社 湯宿だいいち


コロナによる影響はありましたか

 北海道緊急事態宣言が出てからはキャンセルが相次ぎ、苦しい状況が続きました。

 昨年9月の決算では前年度比を3割ほど落とした結果です。休業のあった4、5、6月は半分以下、7月も半分程度でした。9、10、11月はGoToトラベル事業(以下ゴートゥー)や道民割などの支援もあり前年を上回ることができました。当旅館はインバウンドや道外、札幌圏のお客様が多いのですが、ゴートゥーが始まると釧路や北見など近隣のお客様も増え、地元のお客様も2回、3回と足をは運んでいただけるケースが増えました。しかし12月の感染拡大で、年末年始は動向が厳しく赤字を出しながらの営業となりました。

 北海道が自粛を促してきたというところもありますが、今年に入り1月18日に臨時休館を決めました。道外のお客様もいらっしゃるので従業員を守るためにも休館という判断を下しました。

安全対策はどのように取り組んでいますか

 スタッフはもちろんですが、すべてのお客様に検温を実施し、定期的な換気やマスクの着用、手の触れるところの消毒、部屋の稼働を減らし密を避けられるようにするなどの感染予防対策に取り組んでいます。昨年の春に改装をして食事処を広くしていたのもタイミング的に良かったです。

経営対策はどのようことをしましたか

 売り上げが落ちていく中でも会社、そして雇用を守らなければいけません。全国旅館ホテル生活衛生同業組合という組織の中で道東支部青年部長を務めているのでその人脈を活かし、補助金や助成金の情報を仕入れ申請したり銀行の融資など、とにかくやれることは全てやりました。ゴートゥーもスムーズに運用できるようにいち早く登録し、集客に繋げることができました。

 隣町の弟子屈町では昨年2月に、川湯温泉旅館組合が町に陳情書を提出し、3月に宿泊補助事業が可決されました。国や北海道よりも早く、官民一体となり観光支援に予算をつけた弟子屈町の対応は素晴らしかったと思います。

 川湯温泉旅館組合の話を知り、中標津町旅館組合に陳情を提出しましょうと話を持ちかけました。しかし組合との話し合いはコンセンサスが取れず、中標津町旅館組合として中標津町に陳情をあげることを断念致しました。

 私も会社を守らなければいけないので、昨年4月末に当旅館として、中標津町役場に陳情書を提出致しました。

 ゴールデンウィークを挟んだこともあったのかもしれませんが、回答には考えていたよりも時間がかかり、企業としての方向性や資金調達の目処が立たず、もどかしい日々となりました。

 5月14日に中標津町から陳情に対し回答を頂きましたが、要望は受け入れらず非常に残念な結果となりました。

 観光が基幹産業である弟子屈町と地域に旅館が1つしかない養老牛では、対応に差があることは仕方がないのかもしれません。中標津町から、経営基盤安定化給付金を頂きましたことは感謝しています。

 コロナ禍で動きが止まっている観光客を、この町にどう呼び込んでいくのかは、これからも町とともに考えていかなければなりません。

今後の取り組みはどのようにお考えですか

 感染拡大が落ち着けばまたゴートゥーが再開されます。期間中は一時的にお客様が増えると思いますが、その後の対策をどう練るかが大事です。4月には、露天風呂付きの客室を2つ増やします。お客様が戻ってくるという考えよりは、より多くのお客様に情報発信を続け、新しい客層を取り込んでいかなければなりません。

 中標津町は観光が経済の柱ではないですし、ホテルもビジネスが中心です。観光においては、自分たちで動いていくしかありません。

 今はSNSを利用し、国内だけではなくインバンドをより多く取り込めるような広告宣伝を企画しています。どう集客を強くしていくかという次の一手を考えています。会社、雇用そして養老牛温泉という観光資源を守るため、これからもチャレンジを続けていきたいと思います。



※GoToトラベル事業
 宿泊を伴う、または日帰りの国内旅行の代金総額の2分の1相当額を国が支援する事業。給付額の内70%は旅行代金の割引に、30%は旅行先で使える地域共通クーポンとして付与される。