中標津町に専門学校を。 開設に向け動きを続ける取り組みを追う!

中標津町に専門学校を。 開設に向け動きを続ける取り組みを追う!

 神奈川県の横浜市を拠点に専門学校などの事業を幅広く運営する学校法人岩谷学園が外国人留学生を対象とした日本語学校を中標津に開設すべく準備を進めている。2021年4月の開校を目指し、現在は道に各種学校としての認可を得るため、申請の準備を進めている。

 将来的には地元の高卒者も通える専門学校を開設する構想もあるこの計画について学園側に話を聞いた。

佐藤 嘉記(さとう よしのり)
学校法人 岩谷学園 本部 戦略広報企画局 部長


入口と出口を作り留学生を受け入れる

 2年前から中標津に視察に訪れ、学校設置の実現に向け模索してきました。学校というのは難しいもので長いスパンで維持できる見込みがなければ設立することはできません。学校法人は公益法人といえど私学のため、鉄道と同じで私たちで経営を成り立たせなければいけません。

 今は少子化の時代なので学校の設立が難しくなってきています。学校の設立には入口と出口が重要でそれなしでの学校の存続は厳しいものとなります。今の留学生の募集状況を調査し、しっかりと需要が見込めるかどうか、学生のアルバイト先があるかどうか、住む場所があるかどうかなど、まずはその入口の環境を整えることが大切です。そして出口、就職先はあるのかもちろん全員就職できなくても何割かは地元に根付いて生活していけるような流れを作らなければ結局うまくいきません。専修学校というのは大学とは違い、地域と連携し、地域と密着した学校運営をすることが本来の姿です。そういったことを地元の方々、経済界中心にお話を伺い視察を重ね、結果としては中標津で充分やっていけると考えています。先ほども言いましたが今は少子化の時代です。留学生なしで専修学校は成り立たなくなっているのが現状です。

 留学生とはどういう人たちがくるのか、経験のない地域では技能実習生と留学生が同じ捉え方をされていますが、留学生の受け入れは国の基準が違います。日本語はN4の認定を受け、会話することができなければいけません。経済的にも日本で学びながら生活するための費用が必要なので銀行残高証明書、両親などの収入証明書などで審査され、中所得者以上、日本でいう昔の高度経済成長時代の大企業の部長以上の所得がある家庭でなければ入学することができません。経済的な問題、言葉の問題なども技能実習生とは全然違います。

 そういった生徒達を受け入れる日本語学校を第一段階として設立し、留学生受け入れの基盤を作り、それから地元の高校生も通える専修学校を設立するという流れを作っていきたいです。


地方でも日本語学校は成り立つのか?

 私たちが拠点を置く岩谷学園は神奈川県横浜市の中心部にあります。そこでは現在600名の外国人留学生を受け入れています。

 日本語課程を終え、そこから大学や専修課程への進学、中には日本語を勉強するためだけに来ている生徒もいるので帰国する生徒もいます。専門課程では全国から日本語学校を卒業した優秀な人材が集まり、就職内定率は86%です。他の大学や専修学校の留学生の就職内定率は全国平均では3割程度で、出口が大事というのはそういったところにあります。

 専門課程では、留学生の募集をすると160名の募集に対し現在は400名ほどの応募があります。それだけの倍率があるから中標津の入口が確保できるというベースラインはあります。今のうちの教育スタイルは横浜だけでは限界がきているので、地域貢献という意味合いでも地方への展開は考えていました。都会では味わえない全く違う環境というところに意味があり、地域の特性をいかに活かせるかが成功の鍵となります。もうすでに海外に行った際に中標津を紹介しながら日本語学校ができたら通いたいかというアンケート調査を行なっています。ベトナム、ネパール、インドネシアなどの日本語学校では、あくまでアンケートではありますが約200名の生徒が来たいと回答しました。道東の自然環境という魅力を含め、地元の良さを活かせる学校であれば生徒は集まると考えています。


今後の課題

 学校法人として運営するので道に各種学校として申請を出し、来年の4月までに入管の告示校としての申請を出します。それを来年の春までに終わらせ、審査が通ってそこから正式に募集活動に入ります。

 都道府県によって違いますが北海道の場合は一年半かかります。開講の半年前に内示が出ますが実際に申請が通るのは学校の場合はギリギリになるので再来年の3月です。来年の5月には審査が入る予定なので、それまでに学校の設備を整えなければいけません。

 教職員の問題もあります。運営もあるので横浜から当初最低2人は連れてくる予定です。あとは地元での採用を考えています。IターンやUターンで日本語教師資格を持っている方がここで働いてくれるとうれしいですね。中標津に日本語学校ができるということを全国に告知して募集をかけようと思います。

 日本語学校は制度が強化され、4年生大学を卒業し、なおかつ日本語教師養成講座を修了しなければ日本語教師資格を得ることはできません。今は不足していて、教員が集まらないから学校が作れないというところもあります。ぜひ地元の方で働いてみたいという方がいらっしゃれば、札幌で資格を取ることができるので挑戦してみて欲しいです。

 今はまだ2021年4月の開講に向け申請の準備をしている段階ですが、開校時には留学生を50名受け入れることからスタートし、5年かけて倍にできればと考えています。日本語学校は2年制なので1学年100名で200名の留学生が集まれば、その先の専修学校経営が安定します。人口減少を防ぐためにも地元の子供達が活躍できる場を作り上げることがここでの私たち高等教育学校の役割だと思います。地元の方々と一緒に地域発展のためにも協力し合い、計画を進めていきたいと思います。

※N4
日本語能力試験にはN1、N2、N3、N4、N5の5つのレベルがあり、一番優しいのがN5、一番難しいのがN1となる。