橋梁の無償メンテナンス
生活の安心・安全のために
中標津建設業協会 第3回インフラメンテナンス大賞 特別賞受賞
インタビュー:三宅 正浩(みやけ まさひろ)
中標津建設業協会 会長/山洋建設株式会社 代表取締役
中標津町「明日に架ける橋」プロジェクトの設立
笹子トンネルの天井落下事故が起こった後、トンネルだけではなく、様々な構造物の維持・管理が今まで以上に重要であることを再認識したことで、国土交通省は平成26年度以降、日本中の自治体に対して同一基準で5年に一度橋やトンネルの点検や診断を義務付けました。
中標津町が管理する橋は95橋ありますが、メンテナンスを行うための予算や技術者が不足している中、高い水準での点検・診断を5年に1回行うことが本当に可能なのか町でも課題を抱えていました。町と私たちとが意見交換を行っている中で、協力体制をもって行っていきましょうという話になり、官民協働でプロジェクトを立ち上げました。
平成18年4月、西澤雄一元中標津町長と故 小針弘前会長(小針土建株式会社 前代表取締役)の時に、中標津町と中標津建設業協会との間で、災害時の緊急対策として「公共・土木施設における災害時の協力体制に関する実施協定書」を締結しており、その際にどの地域をどの会社が担当するかを6ブロックにエリア割りをして担当企業のグループ化を行なっていました。プロジェクトで行う橋梁点検もそのブロック分けを利用し、この活動が災害時の際の速やかな連携と対応にも繋がることを町に提案させていただき、平成26年5月に「中標津町が管理する橋梁点検業務の協力体制に関する実施協定書」を結びました。これによって建設業協会に所属する全ての協会員44社から約200名がボランティアで毎年点検を行なっています。点検終了後は8月4日(橋の日)に町長に結果報告書を提出しています。
また、このプロジェクトを行うことで橋本体や構造部、前後の道路、橋梁護岸部の状況を常に把握することができますし、何か小さな不具合を見つければその場で補修を行うこともしています。
生活の安心・安全に繋がるために ─ 連携強化と自覚
5年に1度の法定点検の場合は特殊な資格や同等の経験と知識が必要になってきます。当時私たちにはその資格はありませんでしたが、それぞれが1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士、1級電気施工管理技士、1級管工事施工管理技士などの施工管理の各分野の資格を持っていますので、その知見を活かして点検を行なっています。
また、国道を管理している北海道開発局の釧路開発建設部中標津出張所の方に無償でプロのコンサルタントを呼んでいただいたり、国道の管理を行っている専門家である職員の方に研修をさせていただいたり、講義と現地に赴いての研修を行なっています。そのため技術力や知識の向上にも繋がっていると思いますし、さらに言えばインフラをメンテナンスするという姿勢が、皆様の生活の安心・安全に繋がるという自覚の向上にも繋がっていると思います。
なにより、本当に技術力の高い開発局の方々や町の職員の方々の協力がなければ、このプロジェクトは成立しなかったと思いますし、開発局、町、また業者間の連携強化にも繋がったと思います。
子供たちへの啓蒙と次世代の人材育成
建設業協会として、次世代の人材育成として、小・中・高校、そして支援学校に声をかけさせていただいて、現場見学会を行っています。橋に限った話ではなく、最初は体育館の建設を見学してもらいました。橋は流石に小学生には危険なので中学生以上を対象に行いました。巨大酪農施設の見学など建設業の現場を知ってもらい、橋の建設やメンテナンスが必要なこと、また、建設業の役割やそのやりがいについて伝えています。
第3回インフラメンテナンス大賞 特別賞受賞
これまで3回行われてきた中で、北海道からの受賞は3件、第1回時の農林水産省部門で優秀賞を受賞したNPO法人北海道魚道研究会、今回の第3回では釧路の国際バルク戦略港湾設備検討会が国土交通省部門で優秀賞を受賞しています。大臣賞に次ぐ特別賞を受賞したのは中標津建設業協会が初めてになります。
50周年の節目を迎えて
今年で中標津建設業協会は創立50周年を迎えます。この記念すべき節目の年に、今回の受賞は花を添えることができたと思っていますし、橋梁点検での技能や知識を得るための専門的な話や、専門家を招いていただいた開発局の皆様や、同じプロジェクトで協力して活動を行ってくださる中標津町の職員の皆様、さらにこのボランティアに積極的に参加してくださる会員企業の職員の皆様には、本当に心から感謝しています。
さらに、50年の歴史の中で様々な地域活動、例えば森林公園の間伐事業や運動公園の外周整備活動などに取り組み、現在の中標津建設業協会の礎を築いてくださった諸先輩方の思いを私たちは引き継いでいます。
現在活動しているメンバーで今回のような成果、国土交通省をはじめとした各省庁が行う「インフラメンテナンス大賞」に於いて国土交通省部門の大臣賞に次ぐ特別賞をいただくことができたので、とても誇らしく思っていますし、地域の皆様の安心・安全のために今後も継続していきたいと思います。