新たなアプローチで若い世代に響くホテルを魅力的な施設に。

新たなアプローチで若い世代に響くホテルを魅力的な施設に。

インタビュー:桑田 圭佑(くわた けいすけ)
株式会社K・エンタープライズ 代表取締役/有限会社 希粋商事 代表


古くから中標津町で営業を続けてきたホテルベルサイユ。新たな経営者に経営を譲り新しいホテルとして生まれ変わろうとしている。現在、建物が老朽化していることもあり、修繕・改装を進めながら営業している。これまで帯広を中心にホテルの運営をしている代表の桑田氏に、ホテルベルサイユのこれからを聞いた。


ホテルベルサイユの経営を引き継ぐこととなった経緯をお聞かせください

当社は札幌を拠点とする取引先の企業を通じて、このホテルの経営を引き継ぐことに決めるきっかけを得ました。中標津やその周辺地域への興味は以前からありました。中標津に関する話は何度も聞き、その中にはここが閉店するという情報も含まれていました。こうした情報を聞いて、私たちはその事業を引き継ぐ意欲を抱くようになりました。

最初は函館や札幌など他の地域についても同時に検討していましたが、取引先が関わっていることから中標津への訪問が実現しました。この訪問の際には、当時の経営者とも会うことができ、この仕事を始めた経緯や、経営に関する価値観、想いなど多くの共通点を見つけることができ、共感し親しくなりました。

ここは温泉が湧く土地であるという事実は大きな魅力でした。私は温泉ビジネスに興味を持っており、この要素は重要なポイントでした。また、サウナや温浴施設の需要が現在増加しているという市場の状況も、このホテルの経営を引き継ぐきっかけになりました。さらに、中標津はビジネスホテルやラブホテルの数は限られており、将来的な需要に対応する余地があると感じました。

現在帯広を中心に3店舗経営していますが、帯広には多くのホテルが存在しており、ラブホテルも飽和状態と言えるほどの数があります。古いホテルは少しずつ閉店していくケースもある一方で、まだまだ営業を続けているところも存在します。中標津のホテル数が限られており、今後も増えない状況は、魅力となりました。

現在考えうる課題や改善点はありますか

この業界は、当たり前ですが365日24時間稼働する必要があります。独自のトラブルや困難も存在します。それでも、災害時の対応や、事件や事故の問題など、様々な状況に対処しなければならないことがあります。24時間体制で対応しなければならない責任感や、設備投資の必要性は大きな課題です。

私はこの業界は一からのスタートでした。まずは土地や建物を購入し新しいホテルを立ち上げる。そして古い施設は修復をおこなう。この点が困難でありながらも魅力的でもあります。成功はすぐには訪れませんし、1年や2年で目標に到達するわけではないことも理解しています。

現在、改装計画は着実に進行中ですが、正直なところ、まだ試行錯誤の段階にあると言えます。私たちはラブホテルの顧客基盤を拡大していく必要があると考えています。そのため、主にその部分に注力して取り組んでいます。

どのようなものが地域に適しているのか、その模索を続けています。地域に適した施設とは何か、必要な要素は何かを見極めるため、努力を重ねています。結局のところ、地域の住民が喜んで訪れてくださる要素が、お客様にとって一番大切なポイントです。この視点を大切にしながら、どの部分に重点を置くべきかを考えています。

業界を見ると、若い世代の利用率が増えつつあると感じています。ただ、その一方で年配の方の利用が減少傾向にあることもまた事実であり、特にコロナの影響で減少したと考えています。

これまで帯広で培ってきた経験を踏まえながら、地域の特性と将来の展望を念頭に置きつつ、若い人たちが地域にとどまり、地域と共に成長していくことが不可欠だと考えています。また、他地域の方や観光客を呼び込み地域社会への貢献を果たす存在として、新しいホテルの在り方を模索している最中です。

改装・修繕を進めているようですが、どのようなホテルになるのでしょうか

現在、来年の改装に向けて着々と準備を進めています。デザイナーとの緊密な連携のもと、地域の特性に合ったユニークな要素を提供するための工程を進行中です。

このプロセスで、地域の特色や住民の声を大切にし、ホテル内装のデザインを具体化しています。利便性やデザインの特性を考慮し、新たなアイデアや視点を取り入れるためにも、デザイナーとの協力を積極的に検討しています。現在、デザインの方針については外部の専門家と相談しています。こうしたアプローチを通じて、予算内でホテルを改装し、魅力的な施設に仕上げることを目指しています。

改装すれば、新しい顧客が増える可能性があると考えています。年配の顧客が減少しているため、新しいアプローチが求められています。特に若い世代に向けて新しい提案をすると反応が良く、情報がSNSを通じて広がります。この結果、若い顧客が増えていると言えるでしょう。

例えば、バブルバスやカラオケなどのアミューズメント要素、豊富なフードメニューなど、今の基準となっているアイデアがあります。これらの新しい要素があれば、顧客が喜んでくれると考えています。

業界全体において、もう少し変化が求められているように感じます。現在、レジャーホテル協会に加盟していますが、この組織が業界全体をどう導くかも大切なポイントです。風俗営業許可など法的な問題も含め、コンプライアンスへの対応が求められています。ただし、この業界は古くからのスティグマがついており、どうしても業界全体が風俗と一緒に見られてしまうこともあります。ですが、ラブホテルは風俗とは異なる存在であり、顧客に対する考え方も異なると考えています。業界全体が今後どのように進化していくかは未知数ですが、私自身は新しいアプローチを探りながら、お客様の価値を提供していきたいと思っています。

(取材/2023年8月22日)

合同会社 ホテルベルサイユ
TEL 0153-73-2345
標津郡中標津町俵橋11線北3