旅人が気軽に泊まれる宿を標津町で提供したい。
これまでの旅で経験したことを活かして
インタビュー:亀田 亮太(かめだ りょうた)
TOMARI STAY AND CAFE オーナー
どのような宿にしようと考えているのでしょうか。
本当は今年の9月にはプレオープンしようと思っていたのですが、先日大雨だったときに浸水がひどくて、今年中のオープンを諦めて来春オープン予定にしました。
カフェと民泊ができる場所になります。僕も住んで空いている部屋にお客さんが泊まれるという形で、繁忙期には1棟貸しも考えています。ターゲットとしてはファミリー層というよりは、バイクと自転車と釣りの人がメインです。僕自身も全国を回っている中で知ったことですが、標津に来たいという人は案外多くいます。でも安く泊まれるところがなくて駐車場で車中泊している人が結構多いので、そういう人たち向けの安い宿を提供したいと思ったことが、始めたかった理由です。
今まで観光地で働くリゾートバイトをしながら日本各地を回っていました。最初がニセコで、その後、愛知や長野、沖縄へも行きました。そこで宿の清掃や調理補助など色々な職種を経験してきたのですが、今までやってきたこと全てが今回のカフェと民泊に活かせていて、今までの経験で無駄なことは1個もないなと感じています。最初からそれを狙ってたわけではなかったのですが、結果として全てが活かせているので得られたものは大きかったと思っています。
少し前には長野県の白馬村にいたのですが、海外の人がとても多いこともあって旅行者を受け入れるような仕事がしたい、宿をオープンしたいと考えていたら、たまたま中標津町のushiyadoさんにお声がけいただいたので、オープン時のマネージャーとして働くことになりました。
宿というのはオーナーによってその宿の色が違うので、自分の色を出すには自分でやるしかないと思い、ushiyadoをやめて物件探しをしてやっと見つかったこの空き家を利用して宿をやることにしました。
1階がコーヒーとカレーを出すようなカフェ。住居スペースである2階を民泊の宿として使うような形で考えています。釣りに来た人が釣った魚を冷凍して送ったり、自分で捌ける所が標津町にはありません。そこで釣り人もターゲットにして、泊まってもらったらキッチンで自由に捌いたり自由に使って欲しいと思っています。
また、看板を設置してバイク旅の人など飛び込みで来る人が使えるような宿にしようとも考えています。コロナ禍ということもあって、他人と一緒に泊まることをあまり好んでいない人が今は多くキャンピングカーでまわる人も多いのですが、知り合いとキャンピングカーを止めるところがあまりないよねという話になったので土地の空いているところに水道を作り、電源を確保して、キャンピングカーを停められるような場所にしようかとも考えています。
ご自分で民家を改修されているのですね。
オープンする際は自分で改修しようということは何年も前から決めていました。漆喰とかも知り合いが家を建てるときに、手伝わせてもらって職人に教えてもらうなどしていたので、今それが活きているかなと思いながら、楽しくマイペースでやっています。
5月くらいから1ヶ月間、クラウドファンディングでたくさん協力を得ることができました。その資金でペダル式だったトイレを変えたり、改修の費用にあてることができました。カフェのドリンクチケットや地元の海産物をリターンとして出していたのですが、8割はリターンなしの応援のみのプランにして下さったので、多くが手元に残ることになり、本当にありがたかったです。
経営方針や宿としての方向性についてお聞かせ下さい。
色々な宿を見てきましたが、経営のために人を雇って人件費を払う、固定費を払うためにターゲットじゃない人を受け入れなければいけないというオーナーの葛藤があって、それが本来の利用者にとってつまんなくなっていく理由になっていました。旅人だけ受け入れたいのに、続けていくためにはそういう訳にもいかなくなっていくんです。そのために方向性がブレちゃう宿を多く見てきました。ターゲットである宿の方向性ををずらしたくないので、基本的に1人でやりたいと思っています。生意気だって言われるのですが、そこだけは譲りたくないなと思っています。
一般的にネットなどで出てくる口コミや評価が低くても、見る人が見れば「楽しそう」に変わります。万人受けはしないとしても、そこはこだわってやっていきたいなと思ってます。
今のところ冬季休業を予定していて、ここで夏〜秋に働いて、冬は海外へ旅行してまた春から営業するという形にしたいと考えています。
標津で民泊を行うことのよいところはどこにあるとお考えですか?
町から出てぽつんと一軒家だけあるので、圧倒的に他人を気にしなくていいですし、朝はちょうど朝日が北方領土沿いからのぼってきます。そういう景色を見たいという人は結構多いです。僕は道外の知り合いが多いのですが、実際それだけを見に来たいという人も結構多いんですよね。
そのことについては地元の人とギャップがあるように思います。標津の何がいいの?と言われることもあるのですが、逆に何もないのがいいんだ!と主張していきたいですね。
それが標津の人に広く知ってもらうことができれば、下の年代でもここで何かやりたいっていう人も出てくるんじゃないかなと、またそこに繋げることができればと思っています。
(取材/2021年8月20日)