オープンしてから苦戦の連続の中試行錯誤しながらとってきた戦略とは

オープンしてから苦戦の連続の中試行錯誤しながらとってきた戦略とは
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昨年5月オープンしたサーモンプラザが集客するために試みてきた取り組みとは

インタビュー:藤本 隆司(ふじもと たかし)
渡邊清掃株式会社 会長 ネクストプラス株式会社 代表取締役


標津町に新しい憩いの場を。その思いで作られた新しいレストランサーモンプラザ テラス。オープンしてからの7ヶ月は、メニュー構成やイベントなど、集客のためさまざまな試みを行ってきた。一見高級路線とも思われたレストランがとってきたのは、従業員の意見も取り入れながら柔軟に変化させることだった。


オープンから7ヶ月経って

サーモンプラザテラスに来店されるリピーターは増えてきています。お客さんが慣れたこともありますが、気軽に入れるようになってきたと思います。建物の作りが少し入りにくいイメージがあったようですが、利用していただいているうちに敷居が下がってきているようです。その勢いに拍車をかけられるよう、メニューの変更と料理の出し方の見直しをします。
料理長の意向もあり、お客さまには待たされている感覚にしたくないということで、サラダ、スープ、デザートまでがセットになっています。コーヒーなどの飲み物も通常は他の店では別メニューになっていることが多いのですが、それもセットなので使用している食材などの関係もあり必然的に値段が上がってしまっています。
待つ時間は許容範囲内で収まっていますが、今の形では夏の回転が悪くなってしまいました。例えばウェイトレスが1組のお客さまに最低7回はお料理を持っていくことになるので減らす工夫をするとか、ものによっては単品としてセットとは別にすることで、回転率が良くなるように変更しようと考えています。単品にすることによって価格を下げることもできるので、もう少し利用しやすいようになるのではないかと思います。初年度ですので、かけた経費に対してフィードバックを数字として出すのは難しいかもしれませんが、ある程度効果はあったのではないかと思います。基本的にはまずは知ってもらう、覚えてもらうことが大事なのですが、社内では宣伝広告費にかけすぎだという声も結構ありました。しかし広く知ってもらえるようにしなければいけません。建てたから分かってくれるものではないと考えていたので、一定の効果はあったと思っています。
売り上げは予想の8割程度です。初年度ということで、色々な部分で経費をかけていますので、トータルとしては赤字です。大半は人件費ですが、福利厚生には力を入れるようにしています。冬休みも結構長くて、半月くらい休みます。しかし、パートの方も多いので休みは多いけどその分は収入がなくなってしまいますから、1週間分は有給にしました。そうしないとパートの人たちもモチベーションが上がりません。特に今の若いスタッフはなくてはならない人材になってきてますから、今後もしっかり対応していこうと思います。

イベントを何度か行いましたが、反響はありましたか

キッチンカーフェスティバルや演奏会を行いました。演奏会は1週間で席数が埋まりましたので、好評だったかなと思います。ただ、2回ほどやってみて出た課題が、来てくださるお客さまの年齢層が高いことです。1回目はジャズピアノ、2回目はクラシックピアノを開催したのですが、年齢層は40代から上でしたので、若い人たちの好みの音楽とは少し違うんだなという印象でした。
演奏会はディナーでおこなうので、料金設定は自ずと高めになるのですが、逆にもう少し高くてもいいのではないかという声もいただきました。そういった面も含め、全体的なやり方を来年から変えようと思っています。
1月末くらいにストリートピアノを設置予定で、お客さまが自由に弾けるようにします。食事中なので中にはうるさいと思う方もいるかもしれませんし、出費もありますが、集客に繋がる方法のひとつとして設置を決めました。

思い描いていたレストランと現実との違いはありましたか

当店はフランス料理をベースにメニュー構成をしていますが、それでは敷居を高く感じる方が多いので、そういう部分での難しさと、建物自体が敷居が高い雰囲気なので最初は戸惑っていた方が多かったのですが、1度来てくださったお客さまには味がいい、ロケーションがいいと言ってくださっています。現在約7割と圧倒的に女性客が多いです。こういった特化したレストランでも一定の需要はやはりあるんだなと改めて感じています。また、来店されるお客さまの範囲が広がってきていて、釧路や根室、網走、北見からも来ています。
3~4回来ている方も多くリピーターが多い印象です。昼と夜では客層が全然違います。ディナーは年齢層が高く、ランチは若い人たちが多いです。30~40代を中心にたまに20代がいて、休みの日は若い方が多いです。
一度に利用される単価も変わってきていて、ディナーは最初3、500円から始めましたが、その価格で注文する方は全くいらっしゃいません。最低5、000円からです。たまにはお誕生日などで家族でディナーに来ることもありますが、通常は50~70代前後の方が多いです。
最近は何人かで食事に来る方も多くなっていて、大騒ぎしている方もいます。15~20人で来て、貸切状態で楽しんでいる方もいます。

新しいメニューがどんどん増えていったイメージがあります

オープンがGWだったので、手が回らなくて一時的にカットしたメニューもありました。ただカットしたらそのままメニューがなくなってしまったのは失敗でした。
もっと若い人たちに食べてもらえるメニューを作ろうということでハンバーガーを取り入れました。お客さまからアンケートをとって、やっぱり標津らしいメニューを作ってほしいという要望が多かったのもあります。どうせ作るならインパクトあるものにしようと考えました。何10年も前にアメリカで食べたハンバーガーで感動したことがあります。その時の印象が強くて、それを作ろうと思い試作をはじめました。最初は直径15センチだったのですが、試作を重ねて12センチに落ち着きました。大きめなので食べきれないだろうと思いながら作ったメニューでしたが、みなさん完食して帰られるのでびっくりしています。
料理長がフレンチのシェフなのですが、都会であれば人口も多いですから、ある程度売れます。しかし、こちらではあまりメジャーとは言えない料理を提供していては売れません。ここはホテルではなく、一般客が来て食べるところですから、その辺の意識を変えてもらうよう色々試行錯誤してもらいました。

ある時期から若い女性従業員に企画を任せるようになりました。何かきっかけがあったのでしょうか

女性であることもそうですが、何より感覚が違うと思いました。何度も皆で話す機会を作ってるうちに、彼女たちのアイデアを聞いて、実際やってみたら結構高確率で企画が当たるんです。キッチンカーを一堂に集める企画の話が出た時、私はキッチンカーで食べたことはほとんどありませんでしたし、食べに来る人がいるのかも正直疑問でした。手配や準備は全てやるからやらせて欲しいと言われ、任せてみました。すごいと思いましたね。ピアノの演奏会も、若者向けの企画してくれないかと言われても、こちらはどういった人を呼べばいいのか分かりません。
こちらで企画したイベントにしろ、彼女たちが考えたイベントにしろ色々な方たちとの交流が生まれたので、この先どんな方が来てくださるのか楽しみです。

今後の目標をお聞かせください

まず演奏会の定着です。地元の方にも結構反響はあります。2〜3ヶ月に1回のペースで行いたいと思っていますが、同じ人で何回もやるわけにはいかないと考えていますので、演者を探すのが大変です。もちろん、この前の人にもう1回やってほしいという声もあるので、タイミングを見てやれればとは思います。期待しているのはストリートピアノです。あちこちのピアノを弾いて回っている人が結構いると聞きました。有名な方でも、ある時突然来て弾いていく。SNSでストリートピアノがあるところを探して歩くらしいですね。ピアノ屋にもストリートピアノを置くと、人が集まりますよと言われました。
あと、固定客はいますが、夜がもう少し定着してくれればと思います。
ここに来て良かったと思ってもらえるよう、受け入れ側でそれをいかにくみ上げて町とも話し合いをしながら体制を整えるかが、これからの課題になってくると思います。

(取材/2022年12月22日)


ハンバーガーやキッチンカーフェスティバルなど、オープン当初は想定していなかったスタイルに変化していったサーモンプラザ。ディナーでは当初のスタイルを貫きながらも、若い層を取り込むため、おそらくこれからも様々な方法が取られるだろう。


【店舗情報】
まちの駅 標津サーモンプラザ テラス
電 話 0153・85・7125
営業時間 ランチ 11時〜14時
     カフェタイム 14時〜17時
     ディナー 17時〜20時(要予約)
定休日 水曜日
標津郡標津町北1条西6丁目1・2