インタビュー:佐藤 嘉記(さとう よしのり) 岩谷学園ひがし北海道日本語学校 校長
菅野 三夫(かんの みつお) 岩谷学園ひがし北海道日本語学校 副校長
コロナ禍における日本語学校の現状
2021年度当校は、1学年50名の定員に対し、47名を合格としました。ですが入国管理局の審査の結果、クリアした生徒は6名という残念な結果となりました。新型コロナウイルスの感染拡大で、その6名も入国できていません。
生徒たちは、それぞれが住む地域で、課した課題をもとに勉強しています。その課題を基に週1回リモートで当校の教員が確認しています。地域によってはネット環境の整備が遅れていますので、リモート対応というのも簡単ではありません。
近年、時期や地域にもよりますが、日本の入管許可率が落ちていると私は感じています。国の制度なので、こちらからどうにかできるものではありません。全国専門学校日本語教育協会の理事として、協会の運営にも携わっていますので、発言の機会がある際には申し入れをし改善に努めています。できたばかりの学校なので、より厳しく見られているのかもしれません。入管許可率の低下は全国的な問題で、横浜で運営している学校も同じことが言えます。
当校の運営は学校法人ですので、新型コロナウイルスの影響で採算が厳しいという状況であっても補助金等はありません。中小企業が運営する日本語学校であれば、補助金や雇用調整助成金を受けることも可能です。
日本語教育機関だけを運営している学校では、コロナ禍で非常に厳しい局面を迎えており、規模縮小や廃校となるケースも増えてきました。岩谷学園は、日本語学校だけではなく様々な事業を展開していますので、今のところ影響は少ないですが、この状態が長引くと経営に影響が出てくると思います。
9月から来年度の生徒募集が開始となります。通常であれば当法人の人間が各国で入試を行うのですが、この状況ではできません。Webでの入試で対応することになります。
学生のいない施設
活用状況とは
現在は職員が在中し業務をしています。付帯事業でこの地域に住む外国の方が、日本語を学びたいと1名通学されています。日本語を勉強したいという問い合わせは他にもあるのですが、日常会話ができるくらいでよいというような塾やサークルの感覚で問い合わせしてくるケースがほとんどです。
日本語検定をとれるレベルの正しい日本語を教育する学校なので、少し話せるようになったから卒業というわけにはいきません。正しい日本語を学びたい方であれば、日本人でも入学可能です。
中標津町内にある鶴亀寮という学生寮は、通学する生徒がいないので学生の利用はありません。空けておいても仕方がないので、現在は光回線の整備に携わる業者さんの宿泊に一部お貸ししています。寮は40名の生徒が宿泊できるよう整備されています。50名の定員まで生徒が揃えば新たな宿泊場所を探す予定です。
連携協力協定
地域に明るい未来を
今年の4月1日に神奈川県教育委員会と中標津町教育委員会が連携協力協定を結びました。校長と学園本部の折笠副本部長は中標津町長に任命を受け、経済交流特使としての活動もしています。
協定は、中標津農業高等学校と神奈川県の5つの農業高校と1つの水産高校が相互に連携し、生徒の資質・能力の向上を図り、産業人材の育成と地域社会の発展を目的としています。今年度はコロナ禍で交流活動はできませんが、神奈川県の生徒たちが修学旅行や研修旅行で中標津に訪れるということがこれから出てくると思います。
神奈川県にはこちらのような最先端の酪農施設はありません。農業高校に入学する生徒は増えていますが、卒業後の農業酪農系の就職先がありません。子供たちが研修などでこちらを訪れ、ここで働いてみたいと思ってもらえると地域にとって非常に良いことだと思います。
全国的に人口減少は予測よりも早いペースで進んでいます。日本語学校の生徒もそうですが、協定を結んだ神奈川県の学校の生徒たちがどんどんこの地域で就職し、活躍してくれる環境ができれば、中標津は道東の基幹都市となる可能性があると思います。
住民の方々からは、学校の存続をご心配いただいたり、生徒たちとの交流を楽しみにしているというようなお声をいただいております。次年度は少しでも多くの生徒が入学できるよう、より一層の努力をしていきたいです。
(取材/2021年8月23日)