小売業から製造業へ再構築。標津町に新たな価値を作る

小売業から製造業へ再構築。標津町に新たな価値を作る

インタビュー:柴田 俊之(しばた としゆき)
魚柴(柴田海販) 代表


標津町で魚介類や加工品を取り扱い販売してきた魚柴が、移転と業務の再構築をおこなう。過去加工場で働いてきた経験や、日常感じてきたことから、いつか目指すようになった、二次産業として進む道とは。


移転のきっかけと経緯をお聞かせください

店舗が手狭になってきたのが主な理由で、移転を考えるに至りました。現在、町内のある水産加工場から工場の一角と冷凍庫、店舗を借りています。移転先は、建物の裏が海に近く海水を引きやすい、とても良い場所にあります。海水がないと生きたホタテなどの海産物は駄目になってしまいます。海水が出続けていると酸素も供給されますし、長生きします。この条件が必要だったため、なかなか移転できないでいました。

これまで長く借りてきた加工場は本社が金沢の会社で、いつまでもその場所を借りられると保証されていないことも移転の理由のひとつです。しかし今回、良い空き物件を譲っていただけることになったのが決め手になりました。借りている工場、店舗は自由に活動はできません。売り上げを伸ばすためにはもう少し広いスペースが必要で、活動がしやすくなります。また、現在お店と工場が別れている状態なので、人が分散してしまいます。例えば、3人が出勤する場合、現状では3人が同時にいることは難しく、その点も考慮して移転を決断しました。

昔勤めていた水産加工場の元の経営者の方にはよくしてもらっていたのですが、電気料金などの高騰で賃料が上がってしまいました。冷凍庫も元のスペースよりも狭くなりました。自立の意味もありますが、現在支払っている金額を考えても、自分の物件に投資して、そこで店舗兼工場として売り場面積を広くしようと考えていました。

これまでは市場から工場へ、工場から店舗へと行き来も多いですし、店舗で商品を作るよりも、工場で作った方が広くて作業がしやすいです。それでも店舗に持ってきて作業することが多いです。ただ、結局は持って帰らなければいけないですし、競りが終わった後には工場に戻り、こちらに必要なものを運んだりと行き来することが常態化しています。人材も簡単に確保できなくなっていますし、スタッフが分散せずに1ヶ所で仕事できる方が効率的です。

お店も狭く、納品業務などの売り上げが多いので、店舗の売り上げが多少低くても構わないと思っていましたが、売り上げを伸ばせるなら伸ばした方がいい。そのためには、やはり自社の物件でないと難しいです。これを機に個人事業から法人に移行する予定です。補助金が採択され、忠類に使っていない大きな冷凍庫があったので、それを直しました。すぐにでも動かせる状態になっています。
昨年、標津漁業協同組合が、各所に仕事を割り振りしたのですが、うちも頂いた仕事が結構あって、学校給食への納品もそのひとつです。借り入れは増えてしまいますが、店舗兼工場になると売り上げが間違いなく増えることは見えています。

標津で揚がっているものを主軸に考えており、扱うものは現地の鮮魚や買える魚介類がメインです。今後は、直販の店舗はこれまで営業しながら、酒のアテになるような、たこわさびやほやの塩辛、その時々の旬の生のものを原料とした生珍味の製造を考えています。

そのために小売業から製造業へ事業再構築に取り組んでいます。元々手狭だったので限度がありましたが、工場で作る商品量なども増やします。もちろん仕事量も増えてしまいますが、少ない人数を分散させつつ集中させることで、ちょっとした加工品なども効率よく作ることができると思います。

ただ、今働いているパートさんたちの年齢が高くなってきているので、若い人材の確保が課題です。

移転後の展望や目標をお聞かせください

標津で日の出を見たいとなった時、泊まる必要があります。漁を見学したい方や知床に行く場合も同様で、どこかで1泊しなければなりません。しかし、仮に前日から標津で1泊したとしても、朝食べる場所がありません。

釣りの方には、これまでも朝から釣った魚を捌いたり、捌き方を教えたりしていました。この辺りには朝食べることができる店がないので、できれば朝早い時間から始めて、漁が終わった後や釣りの帰りの方や、ホテルや旅館を出た後などに朝昼食を食べられる場所にしたいですね。朝7時頃に海鮮丼が食べられる。そういうスペースを作作りたいと思っています。

刺身はこれまでも提供してきましたし、僕らが得意としていることを集約する感じです。原価は比較的安いので、手間と時間はかかるかもしれませんが、実現可能ですね。商品を作る際のロスも海鮮丼などに使えば、安く提供できると思います。ロケーションが良い場所なので、ちょっと食べるのにいいのではないかと思います。

イートインや製造業をおこないながら、新たな特産品の開発もしてみたいと思っています。地域ならではの食材や商品をもっと充実させていきたいです。

また、水産物の価格を今よりも適正な価格で買い付けるというロジックも作れるのではないかと思っています。製造するには原料が必要なので、安い魚を仕入れることが不可欠です。しかし、単に仕入れるのではなく、目的があり仕入れたいから買うという方針に切り替えると、価格が少し上がることもあります。原料がないと作れなくなってしまうため、底値になる前に購入しなければいけません。これは地域や1次産業にとっても重要なことだと考えています。何でも安く買うのではなく、目的を持って原料の仕入れができるようになっていくことが大切です。その工程で出るロスなどはリーズナブルな価格で提供するなどして、良い循環が生まれればと良い思います。

(取材/2024年1月25日)


【店舗情報】
魚柴(柴田海販売)
電 話 090-1528-9032
営業時間 9:30〜16:00
定休日 不定休
標津郡標津町南4条東1丁目1-17