地域の魅力が息づく夢と情熱に満ちたビジョン

地域の魅力が息づく夢と情熱に満ちたビジョン

インタビュー: 椙田 圭輔(すぎた けいすけ)
合同会社 しゃけを 代表社員


未利用魚のカジカを活用するべく「THE北海道だし」へと展開し、地域の魅力を発信している「合同会社 しゃけを」の椙田氏。地域の課題と向き合い、新たな価値を創造することを目指した取り組みとはどのようなものか。


どのような経歴を持っているか教えていただけますか

私は中学卒業まで標津町で過ごし、札幌の高校、京都の大学へ進学しました。北海道を離れてからも、いつか標津町に戻り起業すると決めていたので、仕事はその時に役立つスキルが身に付くものを選択してきました。印刷やパッケージ業界での経験を積んだ後、ルタオ等17社をグループ会社に抱える一部上場企業へ転職しました。私はそこで藍染めの原料「タデ藍」を機能性食品として展開する事業を任せていただきました。藍は食文化には馴染みの薄い素材でしたが、古くからの生薬としての価値に着目し商品化したのです。そして、そのことが藍の産地である徳島県の地方創生にもつながりました。

また、会社員として働きながら、アメリカンフットボールの選手としてXリーグでプレーしてきました。目標を設定し粘り強く努力する心構え等は、フットボールを通じて得ることができたと思っています。

なお、退職して起業した後も、前職の会社からは業務委託というかたちで藍に関わる仕事を受けさせていただいています。また、有難いことに前職のお取引先様ともつながりがあり、自身の事業にも協力してくださっています。私の夢を応援し、柔軟な働き方を認めてくれた前職の会社と社長、協力者の方々には心から感謝をしています。

未利用魚であるカジカを活用した商品「THE北海道だし」について、どのような考え方やアプローチを持っていますか

前職の藍の商品化で学んだ「その土地ならではの素材を新たな価値のある商品に生まれ変わらせ地域振興を行う」という考え方が、現在の標津町でのビジネスのベースとなっています。

子どもの頃から親しんでいた美味しい「カジカ」が市場で評価されず未利用魚となっていることに着目し、北海道の魅力が詰まった「THE北海道だし」を創りました。北海道の郷土料理である「かじか鍋」「石狩鍋」「三平汁」にヒントを得て、カジカはもちろん、鮭節、真昆布、椎茸などの素材を組み合わせて、新しい味わいを実現。出汁は軽量で常温保存でき賞味期限も長いことから、お土産市場向けに適したアイテムでもあり、北海道の魅力を発信するのにも相応しいと考えています。

開発にあたっては、地域の漁師に協力していただきました。海の食品ロスを減らし漁師の収入にもつながる商品を展開することで、持続可能な漁業の推進に貢献したいと考えているからです。

販売については、全国、海外での展開も視野に入れていますが、まずは地元の店舗に置いていただきたいと考え、1店舗ずつ足を運び、商品特長や想いを直接伝えています。また、開発の経緯や商品の魅力、だしを活用したレシピ等をSNSや紙媒体で発信。全てが地道な手法ではありますが、商品に込められた想いに共感しファンになってくれる方を地域にたくさん作ることで、「THE北海道だし」が愛され誇りに思っていただける商品に成長すると思っています。そして、そのような中身のある商品を全国・海外展開していくことが、本当の意味での地域活性につながると信じています。

未利用魚を活用した「THE北海道だし」

どのような要因があなたの標津町への愛情と関わりを形成しましたか

標津町は私にとって中学3年生まで過ごした大切な場所であり、町への愛情は私の心に深く根付いています。北海道を離れて全国で仕事をしている時も、故郷への想いが消えたことはありませんでした。

両親が地域の文化や歴史を大切にする学芸員として活動し、幼い頃から遺跡や自然に触れる機会が多かったことも、私の歴史や大自然への興味を育くんだ要因となっていると思います。

また、多くの友人の存在も非常に大きいです。幼い頃から山・海・川で友人と遊んだ経験は、私の価値観や性格を形作る上で欠かせないものとなっています。帰省時には、友人たちが仕事の機会を提供してくれたこともあります。この時代に地方でビジネスを始めることは挑戦的なことではありますが、町への想いや友人知人たちの存在が私の原動力となり、前へ進めているのを感じています。

これからも、私を育ててくれたこの町で、地域の課題に向き合い、地域の方々と協力し課題解決型の商品展開を行っていきます。町の魅力を全国に広める大切な役割を果たしていきたい。地域経済や漁業の活性化に貢献したい。海の豊かさを守る活動を続けていきたい。そして何より、食を通じて地域を笑顔でいっぱいにしたい。その為にこれからも、挑戦の意欲を持ち続け、標津町とともに成長し、新たな価値を創造し続けていく覚悟でいます。

(取材/2023年8月7日)


未利用魚であるカジカを活用し、地元の食文化や素材を活かすアイデアは、地域の持続可能な発展を促進する素晴らしい試みだ。地域資源を活用して地域振興を図る、彼の努力と決意が標津町にとって素晴らしい未来を切り開く一助となることを願う。


【企業情報】

合同会社 しゃけを
TEL 0153-85-7557
本店 標津郡標津南6西2丁目1-17
事務所 標津郡標津町字伊茶仁87-1