総合的なアプローチと、柔軟な戦略の転換のために
インタビュー:篠田 巌 (しのだ いわお)
別海町商工会 会長
別海町が現在抱えている問題点や課題についてお聞かせください
今は新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、さまざまな産業が変化しています。特に小売業の経営者の方々は、原材料の値上がりや経費の増加に悩んでいると思います。
仕入れから製品のコストまで、経費が高騰しています。これらのコストをどのように商品価格に転嫁していけるかは、非常に難しい問題です。特に、価格の上昇を消費者に転嫁することは容易ではありません。
このような物価が急上昇している状況では、売り上げも上がりにくいでしょうし、人手不足も問題です。多くの人々がこれに悩んでいるのは理解しています。ただ、個々の事業によって捉え方が異なることもあるでしょう。
個人商店の場合、人手不足に対処することができるかもしれませんが、資材や仕入れの価格上昇で価格を上げることが難しく大きな課題となっています。大規模な企業やチェーン店の場合も同様だと思います。多くの職員が働いている状況で、コストの増加をどのように吸収するのか、こうした課題は、産業全体が共通して直面している問題です。
このような状況下で、各事業者は自身の状況や特性に合わせて対策を講じる必要があります。価格転嫁だけでなく、新たなビジネスモデルの検討や効率化の取り組みも検討することが重要です。同時に、業界全体で情報共有や支援体制の強化が求められると考えています。
また、酪農や畜産の人手不足も問題ですし、飼料や電気代の高騰など、経済的な課題もあります。特に、産業クラスターや畜産クラスターの償還支払いの時期が重なることで、関連する方々の経済的な負担が増え、大きな打撃を受けています。そのため地域における消費に繋がりにくくなり、その影響を危惧しています。
このような状況下で地域経済を支えるためにも、地元の商品やサービスの利用を促進する取り組みが大切です。商工会の方針として、8月におこなわれたビールパーティーや商品券の配布など、地域内での売り上げ向上を支援する試みをおこなっています。
さらに、2024年度問題として運送能力が減少することも大きな問題です。これにより物流の問題が顕在化し、物価の上昇にも影響を及ぼす可能性があります。一次産業を基幹産業とする地域では物を生産するだけでなく、加工や流通も大切です。場合よっては生産物が潤沢に消費者まで届かず経済に影響を与える可能性があります。
このような課題に対処するためには、自治体や地域の組織が協力して対策を練ることが必要です。地域経済の持続的な発展のためには、様々な産業や関係者が連携して取り組むことが求められていると言えるでしょう。
─ 地域経済の発展または持続のために、今後どのような取り組みが必要だと考えられていますか
地域特産品や観光資源を活かして地域振興を図る取り組みは、地域の名前や魅力を広めるうえで重要です。ふるさと納税を通じて別海町の名前が知られ、その地域の特産品や魅力が注目を集めていることは、地域振興にとって良い方向に進んでいる兆候と言えます。
より多くの人々に知ってもらうためには、その魅力をアピールする手段や場を提供することが大切です。例えば、地域の食材や料理を活かしたイベントや体験型の企画、地域の歴史や文化を紹介するツアーなどが考えられます。
また、観光協会や地元の組織が、地域の魅力を広く発信するための取り組みも重要です。地域の特産品や観光スポットの情報をウェブサイトやSNSなどを通じて発信することで、多くの人々に知ってもらえるチャンスが広がります。
地域内外の人々が共に楽しめるイベントや体験を提供することも考慮に入れています。多くの人々が参加しやすいイベントや体験は、地域への興味や関心を高める一助となると考えています。
また、地域振興の観点から、観光や地域交流を通じての地域経済の活性化や消費の拡大を図る取り組みは非常に重要です。特に、ふるさと納税制度の改正や制度の厳格化が行われている中で、地域振興のためには新たなアプローチや戦略が求められています。
商工会が観光協会や自治体と連携して、地域の魅力や特産品を積極的に発信し、交流人口を増やすことは、地域経済の活性化に寄与します。特に、観光や地域交流の機会を提供するイベントやプログラムの企画や運営によって、地域の名前や魅力が広がることで、新たな消費者が訪れる可能性が高まります。
さらに、地域内外からの移住を促進する取り組みも再度検討する価値があります。移住を通じて地域に新たな人材が流入し、地域の活性化や賑わいが生まれることがあります。そのためには、住環境や生活環境の整備や魅力的な暮らしの提案が必要です。
観光協会や商工会が連携して地域振興を進めることは、地域の結束を高める一方で、外部からの視点やアイデアを取り入れる機会を提供することもできます。新たに就任された観光協会長とも連携をとり、地域の商工会や観光協会などの組織が主体となって地域振興や問題解決に取り組むことは非常に重要だと考えています。
ただし、地域振興や問題解決は短期的な取り組みではなく、長期的な視点と持続的な努力が求められます。課題を解決し、魅力を高めていくためには、地域住民、行政、経済団体などの協力が欠かせません。
インフラが整備されていない地域では、安心して暮らすことができません。生活の基盤となる持続的なインフラ整備は、地域の発展やコミュニティ形成において非常に重要です。特に、災害時には地域内で迅速な対応が求められるため、それに関わる業者が存在しないと地域の安定性が損なわれる可能性があります。
そのため、自治体や地域の経済団体は、インフラ整備や設備業者の確保に関する計画や戦略を策定する必要があります。特定の業種や施設が地域経済にとって重要であることを認識し、その維持や成長を支援する仕組みを構築することが重要です。
また、教育や情報提供を通じて、地域の若者や関心のある人々に対して、インフラ整備に関わる業者の役割や重要性を伝えることも大切です。地域での働き方や事業の展望についての情報を提供し、これらの分野への関心や志向を高めることで、将来的にその地域に専門的な人材が集まる可能性が高まります。
最終的には、地域の利益や将来への展望を考慮しながら、地域全体で協力して取り組むことが必要になります。地域住民、事業者、行政、経済団体などが連携し、地域の課題やニーズに対する適切な戦略を共有し、実行していくことで、地域の健全な発展を促進することが可能だと考えています。
総合的なアプローチと、柔軟な戦略の転換が必要です。今後も地域の特性や課題に合わせて、観光振興や地域経済の活性化に向けた取り組みを進めることで、持続可能な地域発展を実現できると思います。短期的な目標だけでなく、長期的な展望を持ちながら計画的な戦略を立て、着実に実行していくことが、地域の健全な経済発展につながるでしょう。
商工会でも人手不足が深刻だとお聞きしました
他の業種同様、商工会も人手不足の影響を受けています。そのため、現在業務の効率化に取り組んでいます。組織全体が効果的に運営され、持続可能な活動を続けるためには、以下のようなアプローチを考えています。
まず、業務の見直しとアウトソーシングを取り入れることです。業務の中で効率を向上させるために、業務プロセスの見直しや再構築を行うことが重要だと考えています。外部の専門業者に特定の業務を委託することで、負担を軽減することができます。
次に優先順位の設定と適切なリソース配分です。限られた人手と時間を最大限に活用するために、業務の優先順位を設定し、重要な業務にリソースを集中させることが大切です。無駄な業務や二重作業を排除し、本質的な活動に集中できる環境を整えることが目指されます。
専門家のアドバイスを活用することも考えています。中小企業診断士などの専門家に相談し、業務の改善策や効率化のアドバイスを受けることが役立つのではないでしょうか。経験豊富な専門家の視点から新たなアプローチやアイデアを得ることができればと思います。
同時に組織内のメンバーに対して業務の効率化のために、新しいスキルの習得の機会を提供し、能力を向上させることが大切です。継続的な学習と能力の向上は、組織の成長と活性化に寄与します。
さらに、組織内のコミュニケーションを活発化させ、メンバー同士が協力し合う文化を作ることが大切です。助け合いや知識の共有を通じて、組織全体で課題に取り組む姿勢が育まれます。
そして新たなメンバーの採用や研修プログラムの提供を通じて適切な人材の確保と育成をおこない、将来のリーダーや専門家を育成することが重要です。
商工会や地域の組織が持続可能な発展を遂げるためには、柔軟な対応と継続的な改善が欠かせません。変化する状況に適応しながら、効率的な運営を目指して取り組んでいくことが成功の鍵となるでしょう。
商工会内でプロの経営者や得意分野を持つメンバーが業務改善や効率化に向けて取り組むことが大切です。現代のビジネス環境は変化が速く、新たな技術や方法論を導入することで、組織の競争力向上や持続可能な運営が可能になります。
(取材 2023年8月23日)