インタビュー:館下 裕典 株式会社 館下印刷 専務取締役
古くより、近隣の住民同士が互いの近況を確認や体調に不安のある人の状況確認をしたり、町内会内の清掃活動やお祭り、老人クラブのようなサロン的役割、葬儀の際に協力しあってきた町内会。近年中標津町では加入率が加速的に落ち、ついに38%と4割を切った。歯止めをかけようと町内会連合会では、新たな取り組みを始める。
町内会員割引制度実施の経緯をお聞かせください
町内会に入っていてもメリットがないとよく言われています。今は葬儀も町内会ではやらなくなりましたし、このご時世、町内会に入ってて何があるかと、若い人たちは何かメリットがないと入らないとも言われます。そこで、会員のために何かメリットを作るといいのではないかと思い立ったのが始まりです。
中標津町全町内会連合会の佐々木会長も言ってましたが、今回の施策をやることによって、町内会員がどんどん増えていくという大きな期待はしていませんが、これ以上町内会の加入者が減ることの歯止めになればという思いで、始めました。
商工会様のご協力をいただいて、商工会のお便りの中に協賛店募集のご案内をさせていただいたところ何店か申し込みをしていただきました。
町内会員が少しでも多く協賛店で飲食屋や買い物をすることで、どちらもウィンウィンの関係であればいいと思います。
連合会から協賛店に対して補助や補填はあるのでしょうか
あくまでもお店の善意で協賛していただいています。この制度自体はすぐ終わるものでなく、長く継続していきたいですし、これからも協賛店を増やしていきたいと考えています。お店にとって無理のない範囲で協賛をいただきたい旨のお話をさせていただいて、それぞれ違う形で協賛をいただいています。
当初は5%~10%程度割り引いてくれたらとこちらの思いを伝えると、飲食店でそれだけ割引くのは大変なことなんだと言われました。
3~4%程度であれば、カードで支払いをするお客さんに対して手数料が同等かかるので、現金のお客さんであれば割り引いてもなんとかできるというお話をいただいたので、それを基本にスタートすることになりました。
準備を進める中、埼玉県の春日部市で同じような取り組みを行っているという情報を佐々木会長が見つけました。それぞれのお店で、できる範囲の特典を会員が受けることができるというもので、協賛しているお店の一覧表を見せてもらい、割引にこだわらないでもできることに気づき、お店にもお話をさせていただきました。
各町内会がどういった考えかにもよりますが、新しく引っ越してきた人などに、こういう取り組みをしていることで声をかけるきっかけにはなると思っています。
中標津町の町内会の加入率はどのくらいなのでしょうか
中標津町は町内会の加入率が38%と他町に比べて非常に低くなっています。
今回の取り組みに対して、全町連の会議の中で、こういうことを始めようと決議をしました。それぞれの町内会長の中でも当然様々な意見や考え方があり、町内会はサービスを受けるようなものではないのではない、メリット・デメリットを目的に入るものではないのではないかという意見も出ました。
確かにそれはわかるのですが、何もやらずにこのまま加入する人が減っていくよりは、何かアクションを起こしながら、加入者を増やさないといけないと考えています。
町内会に入っていないことには、そのこと自体伝えることができませんし、少しでも町内会員が減っていく歯止めをかけながら、地域の結びつきを大事にし、災害があった時など、困ったことの助け合いのために町内会があることを広めていければいいなと思います。
回覧板を回すことひとつとっても、回覧板がどこかの家で止まってしまえば、どうしたんだろうと様子を見に行くなどのきっかけにもなりますが、加入数が少なくなると、そうはならなくなってしまうので、一助になればという思いがあります。
チラシを配布されましたが、何か変わったことはありますか
12月10日にチラシの配布をおこない、協賛店の申し込みを20日締め切りとし、翌月からホームページ上で公開すると謳っていました。その後新しく1件のお申し込みがありました。
少しずつ参加店が増えていけばいいとは思っているのですが、こちらからアプローチしていかないとと思っています。チラシの配布は、協賛店にとっては宣伝と認知のお役に立てることにはありますが、毎月チラシを入れることはできませんので、今はホームページ上でPRしていくしかないと思っています。
協賛店の中には、初見のお客さんが来てくれたお店もありましたので、今回のようなアプローチがあれば、協賛店にとっても参加するメリットになると思います。
会員はこの制度をどのように利用する形になるのでしょうか
利用する際に、会員証をお店に提示することになります。
11月末に全町連の会議があった後、そこで初めてカードが各町内会の会長さんに渡ったので、まだ配られてないところもあります。
配布が遅れている町内会もまもなく各家庭に配布されると思います。
制度開始後に見えた課題等はありますか
制度自体に関係はありませんが、役場から町内会員に配布物などがあります。しかし、町民の38%の人しか見ていないことになります。それで本当にいいのかと思います。
町の配布物や、学校の広報誌、消防・警察の広報誌などいろいろ配られてはいます。今は町内会の回覧を通して配布していますが、半分以下しか伝わっていません。現在全戸配布ができるのは広報くらいなので、そこに移行をするべきなのか、町内会はもっと別な形の中での活動の方が良いのか。
災害などが起きないと町内会の大切さがわからない、理解できないみたいなところも正直あると思います。災害があって初めて地域の助け合いが必要だと実感できる部分がきっとあると思うのですが、そうなる前にどうやって理解してもらえるかがなかなか難しいところです。各町内会で、炊き出しなど災害が起きたときのための訓練をしてます。十勝清水で5年くらい前に、台風の影響で川が氾濫したことがありました。その後、町内会の加入率が少し高くなったそうです。
色々な割引制度などがありますので、この町内会員割引制度がもっと充実したものにしていかなければいけないと思います。
(取材/2023年1月26日)
町内会員割引制度は、加入率低下に歯止めをかけることができるのか。この先、答えが出る。