人手不足問題を解決するため老舗飲食店がとった方法とは

人手不足問題を解決するため老舗飲食店がとった方法とは

60年に渡り町の食事処として営業してきた福住総本店。これまでの営業形態から大きく舵を切り、定休日を増やし配膳ロボットを導入。思い切った舵取りをすることになったのは、未曾有の人手不足が原因だった。

インタビュー:佐藤 秀俊 (さとう ひでとし)
そば処福住総本店 代表


今の人手不足を、どうみていますか

 4町で見ると、人口が少ない標津町は、中標津が近いですし働くところが沢山あるので、標津町の地元で働くという人と中標津町まで働きに行こうという人に分かれるので、標津町の場合は他の3町から見ても人口の割合に対して働く人手が足りなくなる場所だと思います。
さらに、以前であれば最低でも5年くらいは働いていたところ、3年と働く期間が短くなっていました。昔なら10年くらいと長い期間働く人が多かったのですが、今は長くても3年がいいところです。

 特に副収入を得ようとするパートに限った話ですが、コロナ禍になって、今までと違う働き方になってきたと思います。コロナ禍で、仕事をしに出たくない、外に出るのは控えようという人が増えたように思います。でも生活もあるから短い期間で働けるところを探して、例えば夏場だけ働き、冬は働かない。遊びに行きたくても自由に行動できるわけじゃないですし、この1~2年で「1年間生活できるぐらい短期間働いて収入を得てしまえば、1年間やっていけるんだ」という人が増えました。

 教える期間は経営側にとっては負担です! やってもらいたい仕事はまずはゼロから3割程度覚えることからくらいから始まって、大体形になったなと思った頃でやっと6割程度。やっとこれからというところで辞められてしまうので、すごく負担がかかっています。そういった状況が続くと雇用主の方も警戒してしまいます。

なぜ定休日を週1日から2日間に増やしたのでしょうか

 人が少ないことで、現職スタッフの負担が増えてきます。仕事の時間はいつも通りなのですが、やってもやっても仕事が終わらなくて、いつもの倍ぐらいの時間に感じてしまいます。負担が大きくなってくると、体力的にも精神的にも辛くなってしまって、モチベーションがかなり低くなってしまいます。

 人員不足ではシフトも回せなくなってくるので、1人の働く時間がどうしても多くなってきます。ミスも多くなりますし、疲労がどんどん溜まってくると、仕事を辞めるか辞めないかまで追い込まれてしまうので、それをどう改善していくかがお店側の課題だと思っています。

 このような負の連鎖は業務にも影響が出てくるので、断ち切るためにも苦渋の決断ではありましたが、現場の負担を減らすために定休日をを週1日から2日間にすることを決断しました。

 今後を見据えても人口が少なくなってくる町では、働き手の人数は拡大する要素がありません。そのような町で営業を続けていくと、ひとりひとりの勤務時間がどうしても法定労働時間をオーバーしてしまいます。それは絶対に防がなくてはならないことです。

 休みが週1日だったものを2日間にするにあたり、一番に考えたのは今までの定休日プラス1日をどこで休むかということでした。通常であれば1週間のうちに一番売り上げの少ない日に定休日を持っていくのが普通の考え方だと思います。日曜日は一番混む曜日なので、その翌日に休みを取る月曜日を定休日とし長年やってきました。

 当店独自のイベントである火曜日におこなっていた「そばの日」は、今年で14年目に入ります。長く続けてこれたのは、ずっと楽しみにしてくれているお客さまがいて愛用してくれているからですし、本当にありがたいと思っています。混む日曜日に働いて翌日の月曜日は休み、火曜日はお客さまが多く来店してくださる「そばの日」でした。

 しかし、スタッフが少ない状態では、疲れをとりきれずに、また仕事に就かなければなりません。働くスタッフが疲れを溜め込まないようにしなくてはいけないと考え、定休日の翌日をさらに休みにして、連休で休ませるのが最善だと考えました。そうすることで精神的にも体力的にもケアできると思いましたし、下がっていたモチベーションを再び上げて欲しいという思いで「そばの日」は火曜から水曜に変更し月曜・火曜の連休で定休日にしました。

 正直、火曜日だった「そばの日」に来てくださっていたお客さまが、水曜日に来店してくれるのかという不安もありました。しかし、結果として従来通りに来店してくださり、平日のイベントは動かせることが結果的にわかりました。

配膳ロボットの導入も、スタッフの負担軽減の一環なのでしょうか

 配膳ロボット導入に関しては、スタッフが少ない中、混んでもスタッフの負担を減らす目的のほか、体調不良や冠婚葬祭などのスタッフの急な休みにも対応できるように導入を決めました。これまではスタッフ同士でカバーし合えていたんですが、それがほぼ不可能に近くなってきています。

 人間ほどの働きができるわけではありませんが、不調にならない限り営業時間中休まずに可動してくれます。今後は、人と機械をうまく組み合わせるシステムを作り上げる必要ががあると思っています。

 また、タブレットを使用したオーダーシステムも導入します。コロナ禍もあって非接触型のシステムとして使用するお店が増えていますが、スタッフ不足の中でのカバー用アイテムだと認識しています。

 配膳ロボットは、80~100往復している日もあるので、スタッフの仕事をカバーする働きをしてくれています。今までは手で運んでいたものをロボットが運んでくれて、スタッフが合間に注文を取りに行っていたところをお客さまがタブレットで注文してくれるようになると、時間にも余裕が生まれます。タブレットで注文して、配膳ロボットが料理を持っていく。スタッフの負担がかなり減るのが一番のメリットかなと思っています。

(取材/2022年12月20日)

老舗の取り組みは、人手不足の解消に一役買いそうだ。他の飲食店にも影響を与える可能性もあるだろう。

【店舗情報】

そば処 福住 総本店
営業時間 11時〜19時30分
TEL 0153-82-2305
定休日 月曜日・火曜日
標津郡標津町北1条東1丁目1-2