新町長にこれからの標津町を聞く。

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コロナ禍の中での就任と新たな体制でのスタート

インタビュー:山口 将悟(やまぐち しょうご)
標津町長


出馬の経緯

 42年間の行政経験を活かして、育てていただいた皆さんに恩返しをしたい。生まれ育った町のために働きたいとの強い思いがありましたし、前町長から引き継いでやってほしいというまわりからの要請もあり、その期待に応えたいというのがありました。選挙中は自分の考えや町に対する想い、自分「らしさ」を出していこうとしていました。誠心誠意という言葉が好きなのですが、誠実さが自分らしさかなと自分では思っています。
 コロナ禍のためInstagramやFacebookなどのSNSを活用して公約や自分の考えを発信しました。 

町長が考えるこれからの政策

 金澤前町長がおこなってきた行政のいいところは引き継いで、新たに取り組むことは取り組みたいと思っています。

 標津町では、『人口減少時代に挑戦する政策パッケージ』として生まれる前からご高齢になるまで、それぞれのライフスタイルを支える政策を展開してきていますが、町の人にとって素晴らしい政策だと思っているので引き継いでやっていきたいと思っています。

 それにプラスして、未来にむかって考えなければいけないことは多くありますので、取り組んでいきたいです。

コロナ禍の中でのスタート

 選挙公約の中で町民の皆さんに安心していただくために、希望者には抗原検査をする仕組みを作りたいと掲げました。前回の議会で補正予算において、町民1人あたり千円の負担で抗原検査を受けられる体制を作りました。やはり町民の皆さんは自分が新型コロナウイルスに感染していないか本当に心配されています。

 例えば仕事で札幌や東京に行って帰ってきた方が、家の中でも家族とは違う部屋に1週間いなければいけなかったというお話も聞きましたので抗原検査を受けていただいて、安心して暮らせることが必要だと思い取り組ませていただきました。

一次産業の課題とこれからの取り組み

 標津の漁業は鮭が中心となっていますが、不漁がかなり続き、危機的な状況といってもいいぐらいです。漁業に携わる方々が鮭の資源回復を図る、あるいは新しい魚種を見つける、または付加価値の向上を図るなどに対して積極的に支援をしていきたいと考えています。立て直していかなければいけない問題ですので、漁業関係者とは現在のことだけではなく、将来どうしていかなければいけないのかも含めて話をしており、先を見据えていきたいと考えています。

 現在若い方々が、魚の付加価値を高めるために様々な取り組みをされているので、ぜひ応援していきたいですし、頑張ってほしいと思っています。

 農業についても、現在は割と安定していると思うのですが、温暖化が進むにつれ、本州でとれなくなったものを北海道で生産するような時代になってくるのではないかなと思います。

 水産業も含めてですが、温暖化に対応したことを考え、20年後、30年後を見越して考えていかなければいけないと思いますし、先を見据えた取り組みも必要だと考えています。

人口の減少と子育て支援

 先ほども話に出た『人口減少時代に挑戦するパッケージ』は北海道でもナンバーワンの支援だと思っています。今後も継続していき、若い方が安心して子育てできる環境を作っていくのが一番だと思っています。

 また、環境だけではなく住むところがなければならないと思っています。子育てのためには戸建ての住宅に需要があると考えています。アパートというよりは、若い方も含めて戸建ての住宅。これは町が直接やるのではなくて、民間の力を活用して整備していきたいと思っています。

 そのため、例えば民間事業者に町有地を貸し出し、建設費に助成をおこなうなどの支援をしていきたいと考えています。そういう形を取ることで家賃を抑えるなど負担を減らすようにし、戸建ての住宅需要に応えていきたいなと思います。

 子育て支援策や住みやすい環境を作る政策が人口減少の流れを少しでも緩やかにする一番の方法だと考えています。

福祉のサポート体制

 福祉や介護についても行政だけではやれることに限界がありますので、現在行っている「あんしんサポートセンター」のような高齢者や障害者の方々のちょっとした困りごとも、町民のボランティアで支える仕組を発展させていければと思います。

 例えば神棚を飾ることができないとか、粗大ゴミが出せないとかなどのちょっとした困りごとに対応することで、安心してうちの町で暮らしていていただきたいと思っています。

初期診断を的確に行うための医療機器の整備

 大切なのは初期診断だと思います。そのための医療機器の整備をおこない、初期診断をした上で必要な医療機関に行っていただく。そのためにも体制の充実が大切だと考えています。

 標津町は久留米大学(福岡県)から継続的に医師を派遣していただいており、内科4人、外科1人という本当にありがたい体制になっています。継続的に医師を派遣していただけている中で、思い切った医療機器の導入・整備をしていきたいと思っていますし、これまでもやってきたと思っています。

コロナの影響と冷え込む観光の立て直しを見据えて

 観光については本当に冷え込んでいて大変な状況にあると思います。先日、今まで別々だった観光協会、エコツーリズム推進協議会、標津町地域協議会という団体が中核となり「南知床標津町観光協会」としてひとつになりました。

 観光の受け入れ窓口をひとつにすることで、アフターコロナに備えて体制をつくることが必要でしたし、日本遺産で「サケの聖地」として認定されましたので、これを活用した広域観光を進めていくことを考えています。

 今は観光客が沢山訪れることができる状況ではありませんが、今後に備えてどういう観光のあり方がいいのかなどを今の段階で行い、すぐにでもスタートできるような体制を整えていきたいと思います。

標津町の財政状況

 財政に関して標津町は健全にやってきていると思っています。それは事業の取捨選択ができているということと、有効な財源を使ってきたということがあります。引き続き、効果的なことに対しての財源の利用を心がけていきたいですし、そのためにも有効な財源を探していくこともやっていきたいと思います。

 先ほどの話にもありましたが、民間の力も借りて町民の皆さんと一緒にまちづくりをしていきたいと考えています。それによって財政的に助かる部分もあると思いますし、できるだけ効率的な財政運営、効率的な事業運営をしていきたいと考えています。

地域における標津町のあり方

 標津町は酪農と漁業の生産の町といっても過言ではないと思います。これから日本の人口は減っていくのだと思いますが、世界的には人口が増えている中で食糧の問題はとても大きいものだと思います。

 日本も食糧自給率を高めていかなければいけませんし、その中で一次産業の町として日本の食料を支えるような一次産業の活発化あるいは安定。これが標津町の役割ではないかなと思います。

役場内の環境改善への取り組み

 起こったことは深く反省しておりますし、それはしっかりと受け止めております。明るい職場、働きやすい職場を作っていくのが自分の役割だと思っています。私自身もできるだけ職員の皆さんと会話をしていきたいと考えていますし、職員間の情報共有も大事だと思っています。つい先日も向こう4年間の政策協議を各課とおこないました。

 今までは課の長と私とで行っていましたが、他の職員にも公開することにしました。そうすることによって他の課の情報が把握できるようになります。色々な仕事の方法があることを知ることもできて、お互いが切磋琢磨することにも繋がると思いますし、働きがいにも繋がると思っています。

 また、人事評価も非常に大事だと思っています。これは人を評価するシステムではなく、ここ1年の自分がどういう仕事に携わり、課としての目標はどういうところにあるかをしっかり話し合える場です。そうすることで自ら計画を立てて働けるようになります。そのためにも課内・課外のコミュニケーションが非常に大事になってきますので、有効に活用していきたいと思っています。

災害時の体制を整えるための取り組み

 標津町には現在2人の職員が気象予報士として働いています。それを活用して町民のみなさんに正しい情報を提供していくことや防災教育をおこなっていくことが重要だと考えています。標津高校の生徒さんがユネスコスクールの認定を受けて防災活動の学習をしています。学習をした高校生が今度は中学生に教える。そういった取り組みを現在おこなっています。

 また、通常の防災対策はもちろんおこなっていかなければいけませんが、災害が起きた時のことも考える必要があります。災害が起きた時に住宅がなくなった方々へ提供する仮設住宅も、日本ムービングハウス協会と提携しまして最大500棟を準備いただける協定を結びました。災害があった場合のゴミ処理問題も重要です。全国でも災害ごみのことは時々問題になっていますが、有事の際にどういう分別をしてどこに集積するのかなどもあらかじめ決めておき、いざというときに困らない体制を作っておくため検討に入っているところです。さらに、ボランティアセンターの体制もきちんと整えておくということが非常に大事ではないかなと思っています。

新しい資源の可能性

 ノリウツギというアジサイ系の木があり、和紙の梳く際に材料になるものです。和紙を梳く時にのりは非常に大切で特に北海道産ののりがいいと聞きました。先日、文化庁と伝統的な和紙を作っている長野県の吉野町の関係者から連絡があり、和紙を守るためにもぜひ標津町でノリウツギの採取あるいは栽培に着手してもらえないかお話をいただきました。そこで現在、試験栽培を町内の苗木業者さんが行っています。その和紙は、国宝級の文化財や世界的な文化財の補修に使われる和紙で、日本の伝統文化を守ることに寄与できるという観点でも楽しみに思っています。

 文化庁の方が、栽培がうまくいって提供できるようになった際には、標津町で採取した様子などを世界各国の美術館や博物館に映像や写真として発信したいとのことで、和紙文化を支える町として世界的にも知名度が上がる可能性がありますので、今後に期待しているところです。

(取材/2021年8月20日)


標津町長
山口 将悟 (やまぐち しょうご)

生年月日 昭和34年9月16日
年齢   62歳

経歴
昭和53年 4月 1日 標津町役場就職
平成 5年 4月 1日  総務部企画振興課企画振興係主査
平成 5年 7月19日 総務部企画振興課振興係長
平成16年10月 1日 企画振興課主幹(課長心得)
平成18年 4年 1日 総務課長補佐
平成22年 4月 1日 総務課長
平成24年 4月 1日 会計管理者兼総務課長
平成25年 8月 1日 総務課長
平成27年 4月 1日 農林水産課長
平成28年 4月 1日 農林課長
平成29年 7月14日~令和 2年12月17日 副町長
令和 3年 6月24日 町長就任