利用者の笑顔を曇らせないために新たな仕事を。
コロナ禍でも休業できない障がい者施設。
利用者が作る商品は全く売れなくなってしまった中、
どのようにこの1年を乗り越えてきたのか。
インタビュー:吉田 拓也(よしだ たくや)
一般社団法人 中標津障がい者自立支援センター ウィルビー 代表理事
コロナによりどのような影響がありましたか
ウィルビーでは店舗での商品販売もありますが、商品の売り上げの80%以上はネット注文を受けての地方発送です。コロナの影響を受けそのほとんどがなくなってしまいました。
キャンディブーケは結婚式やピアノの発表会など、お祝い事に使っていただいたりプレゼントするために購入する方がほとんどですので、会いに行ってお祝いをするムードでもなく、うちの商品を使っていただけないという状況です。昨年の11月、12月に少し落ち着いてきて、ピアノの発表会などもおこなわれるようになったので、少し商品が動き始め売り上げも戻るかなと思った矢先に、他地域でのコロナの感染拡大が再びはじまり、再び中止が相次ぐようになってしまいました。この地域だけではなく本州の方でも発表会やお誕生会などが中止になったということで、ネットでの注文もキャンセルが相次ぎました。
バザーなどへこちらから出向いての販売もあります。例年であれば年間で15~20回くらいは販売させていただいていましたが、昨年は1回もなく完全にゼロになってしまいました。今年の春先にあったバザーの予定も中止となりましたので、しばらく今の状態が続きそうです。
昨年は年間の販売での売り上げは95%以上減と大幅に下がってしまいました。
どうやってこの1年乗り越えてこられましたか
ただ、昨年は大阪に本社のある企業さんから新しい仕事をいただくことができました。受注伝票を入力するパソコン作業です。東京、大阪の社員が分散して出勤し作業にあたっているらしいのですが、かなりの件数があり社員だけでは手が回らないからお願いしたいということで、北海道でもできる作業として業務をやらせていただいています。
はじめのうちは受注伝票が、1日に約50~60件で1時間から2時間の作業でしたが東京・大阪の緊急事態宣言をきっかけに1日300~350件の入力依頼が来るようになり利用者さんの勤務時間である4時間、5人体制でずっと入力作業をしてもらっている状況です。大阪の出荷時間が2時までと決まっているのでそれまでに終わらせなければいけません。今まではゆっくりと作業できていましたし、昼食も定時にきちんととることができていましたが、今では入力作業が終わるまでは定時の食事時間には食べれなかったりと、利用者さんには負担をかけることになっていると思います。
身体などの障がいを抱え、外の作業に行けない利用者さんに通年の作業としてお仕事をいただけているのでありがたいです。利用者さん自身も責任ある仕事を任されたとやりがいを感じて仕事をしてくれています。
その仕事のおかげで商品の売り上げが落ちた分は少し補えたかなと思っています。
美掃会社さんや農家さんへの派遣もおこなっています。こちらの仕事に関してはあまり変わらず仕事をいただけています。感染対策をしっかりしたうえで、各町の企業さんから去年同様にお仕事の依頼をいただきました。基本的に外の作業がほとんどですので、密になることもなく仕事にあたることができました。
施設運営費として、毎日の利用者さんの働いた人数や時間を提出し決まった単価に沿って国が2分の1、町と道が4分の1ずつ毎月支払われます。しかし、その運営費から利用者さんに対して給与の支出をしてはいけない制度になっています。
そのため、利用者さんの給料は事業の売り上げから出さなければいけません。利用者さん自身で授産しなければいけないということです。そのためには事業の売り上げと支援の両立が必要となります。職員が支援しながら一緒に作業をして利用者さんの授産につなげていくことになります。
利用者さんに仕事がなくなるということまでにはなっていませんが、全体でみると売り上げ自体は落ちてしまった形です。
現在12名の利用者さんがいるのですが、給料も前年度と変わらずに支払うことができました。うちの事業所は給付金を受け取れるほど落ちてはいませんでしたし、事業所の維持は厳しいながらもこれまでの蓄えで埋め合わせをしながらなんとかやってこれたかなと思います。
国から福祉事業所の職員1人に対して5万円の給付金が支給されました。いつからいつまでの期間の仕事に対しての5万円の給付なのかと不明な点はありましたが、がんばってくれている職員に対して支給できたのはありがたかったです。
どのような対策を取ってこられたのでしょうか
職員と利用者さんには朝の検温とアルコールで手を消毒、マスクの着用を徹底しています。対外的に来るお客さまに対しても体調を確認させていただいています。昼食に関しては、これまで12時に全員一斉にとっていたところを、2回に分けてずらしてもらいながら食事してもらうようにしました。
最初の頃は、マスクが手に入りにくく探すのも大変で、どこに売っているか皆で情報を集めながら探したりしていました。見つけたとしても値段が高くてなかなか買えずに困ったときもありました。商品を作る作業にあたっている利用者さんは、基本施設内にこもって作業することになるので、なかなかマスクの確保には苦労しましたが、国や中標津町からマスクや消毒の寄付を何回かいただき助かりました。
店舗の営業を休んだりテレワークなどで対応することができる企業さんもあると思いますが、うちのような障がい者施設はそれがありません。利用者さんの収入確保のため可能な限り開けてくださいという指導のもとでやっているので休むことができません。北海道からの指導を守りながら気をつけるしかない状況です。この1年は利用者さんと職員には地方に行かないように、買いものに行くにしても混む時間を少しずらしていただくなど、強制はできないのでお願いをしてひとりひとり心がけてもらっています。職員や利用者さんに大変な思いをさせている部分は多いのですが、皆さんそれを守ってくださったり協力してくれています。
コロナの影響は少なからずありますが事業売上と支援の両立ができるよう、これからも色々なことにチャレンジしていけたらと思います。