新サービスの導入で
コロナ禍を戦い抜く
新型コロナウイルスの影響で外食産業の多くが苦しむ中、全国的に「焼き肉店」の好調さが注目されている。
地元焼き肉店ではどのような影響があったのか?
インタビュー:富崎 仁友(とみさき よしとも)
炭火焼肉 金龍 代表取締役
コロナによる影響はありましたか
北海道の緊急事態宣言が出される前の昨年1、2月と、緊急事態宣言が明けた6月から11月までは前年を上回る売り上げでした。しかし、3、4、5月の3ヶ月は大幅に売り上げを落としたので、年間ですと前年に比べ10%程度落ちました。
4月に昨年から準備を進めていた帯広店がオープンとなりましたが、コロナ禍でのオープンとなり、厳しい状況が続いています。
2月末に北海道の緊急事態宣言が発表され、稼ぎ時の3、4月に来店数が減少し、帯広店のオープンも重なり、売り上げが大幅に落ちた時は気が狂いそうになりました。スタッフも多く雇用していたので、スタッフの生活を考えると、なかなか休業に踏み切れず、4月中は苦しいながら営業を続けました。
雇用調整助成金の話は出ていましたが、本当に出るのかという不安もありました。根室のハローワークにしか、雇用調整助成金に詳しい方がいなかったので、根室にも足を運び詳しく話を聞いたり、中標津でも時間を取ってもらったりと早い段階で申請を出すことができたのは良かったと思います。
安全対策はどのようにしていますか
焼肉店は排気ダクトがあるので換気も良いですし、個室だったことも功を奏し、6月以降の売り上げにつながったのだと思います。各テーブルに消毒液を設置して、スタッフのマスク着用、毎日の店内消毒、ご利用後のテーブルは都度消毒し安全対策に取り組んでいます。まだ新しいお店ですし、清掃は丁寧に行なっていたのでお客様に安心してご来店頂けたのかも知れません。
9月にご自分のスマーフォンでメニューを注文できる、モバイルオーダーを取り入れました。今までは個室に電話がついているので、それを利用してご注文を頂いていましたが、都度消毒はしていても、素手で触ることに抵抗があるお客様もいらっしゃると思います。自分のスマートフォンであれば安心してご利用頂けると思い、導入を決めました。
スマートフォンをお持ちでないお客様は使用できないので、電話でご注文頂きますが、ご来店された約9割のお客様がモバイルオーダーを使用してご注文頂けます。当初は戸惑うお客様も多かったですが、一度覚えてしまうとスムーズに注文できますし、モバイルオーダーの方が良いというお客様もいらっしゃいます。
お客様とのコミュニケーションという部分では、薄れてしまいますが、コロナ禍では接触を少しでも避けなければいけないので仕方がありません。終息後もモバイルオーダーは継続しますが、料理やドリンクを運ぶ際、会計時などにお客様とコミュニケーションを計り、サービスの向上に努めていきたいです。
昨年12月に再び都市部で感染が拡大したことにより、お客様の動きが鈍くなっています。この状況がいつまで続くのかは見通しが立ちません。
今は守りに入る時期なのだと思います。スタッフも高校生アルバイトが卒業するので増やさなければいけませんが、また緊急事態宣言がでるかもしれません。今はなるべくギリギリで対応し、人件費も抑制が必要です。
モバイルオーダーを導入したこともあり、少ない人数でもお客様を待たせず対応することが可能になったということは幸いしています。
今後の対応はどのようにお考えですか
仕入れ、仕込みの量というのが難しくなってきます。今まではデータに基づき、曜日や天候で来店客数を予測し、仕込みの量を調整していました。しかし、再び客足が鈍化してきた今、来店客数の予測がきかず、調整が困難です。
仕込み後の食材を余らせてしまうと、まかないで食べる、あるいは廃棄しなければなりません。そうしないために仕込みの量を少なくして、なくなったら売り切れというようなかたちをとって、対応していくしかないと思っています。
寿司屋のような生ものを扱う飲食店でしたらあたり前のことですが、帯広で飲食店経営をしている仲間の話を聞くと、しゃぶしゃぶ屋や串揚げ屋などでもそういった対応をしているようです。
食品ロスは社会的に問題にもなっていますし、焼き肉店のみならず、そういった対応を取る飲食店が増えてくると思います。
収束後にやりたいことはありますか
収束にはまだ時間がかかると思いますが、お客様が少ない今こそ、スタッフ同士のコミュニケーションに時間をあてられます。社員、パートの再教育、新メニューの開発などお客様に喜んでいただける引き出しを増やすことに、時間をかけて取り組むことができます。
接客の質やサービスの向上、そしてブランド力を高めるというところは常に取り組んでいますが、経費をかけて、収束後はもうワンランク上のサービスを提供したいと考えています。
ネットも含めた広告展開や、キャンペーン等もやっていきたいです。今は外出を自粛されているお客様が、1日でも早く笑顔で食事を楽しんで頂ける日がはやく来て欲しいと思います。