「墓じまい」─ 残される遺族への想い。
インタビュー:加藤 伸(かとう しん)
加藤石材 株式会社 代表取締役社長
核家族化、少子化が進み、墓の維持が困難になったとして「墓じまい」する人が増えている。 引き継ぐ人がいなくなり管理ができなくなると、現在の墓が将来、無縁墓となって荒れてしまうことを防ぐため、墓を閉じる。お墓を管理する子孫がいない方の「終活」の一環としても注目されている「墓じまい」。現状を聞いた。
増えている墓じまい
墓じまいとはお墓を片付けて墓石を撤去したうえで更地にし、墓地の管理者に敷地を返すことです。そしてお墓の中に納骨してあるご遺骨を取り出し、私どもはお客様の事情や状況に応じてお寺の合葬墓や個別墓、霊園の合葬墓などにご遺骨を納める永代供養や散骨、手元供養など、道内はもちろんですが全国各地に幅広くパイプを持ち対応しています。
核家族化が進み夫婦だけ、ひとりだけの世帯も増え、これまで家の跡継ぎがお墓の承継者でしたが跡継ぎがいない、実家のお墓は遠方にあり管理していくのが難しい、経済が疲弊し墓が維持できないなど、お墓の維持が困難な世帯が増えています。
昨年の胆振東部地震では家も壊れ、お墓も壊れ、建て替えの費用が負担できないという理由から墓じまいをする方も増え、今年に入り全道各地から120件を超える受注を受けています。3年前から年間で1.7倍づつ増え続けています。
生死観の変化
現在の墓地からお墓参りしやすい別の新しい墓地へ移転したいという相談も多くあります。故郷が遠方で管理ができなかったり、ご自身の引越しなどの理由が多いですが、これも核家族化、少子化による承継者不足という社会的背景によるものです。
葬儀においても変わってきていて、病院から葬儀場に行かず火葬場に向かい、ごく親しい方だけで火葬のみを行う「直葬」や、直葬を行い火葬場で遺骨を合同墓に入れる「ゼロ葬」なども増えていると聞きます。これはお葬式にお金をかけられないという理由もありますが、死生観が変わってきているのだと思います。遠いご先祖から続いてきた家の意識や家族や親族の絆への意識が希薄になってきています。
多様化する供養
日本人の死や墓に対する考え方はどんどん変わってきていますが、先祖があるから今があるとお墓を大事にする方もまだまだたくさんいらっしゃいます。死生観や宗教観が多様化する中で供養というものも多様化しています。
ライフスタイルや今後のライフプラン、経済的な状況などを考慮して自分たちに合った供養方法を選ぶうえでも、まずはどのようなものがあるのかを知ることが大事だと思います。
供養の多様化により、さまざまな方法がありますが、お墓を守る人、そして墓じまいをする人、そこには先立つ人や残される人への思いがあります。当社としても、その思いにお応えできるよう、経験をいかしつつ、既存のお墓の形態や様式にこだわらない、ニーズにあわせた新しいお墓や供養のかたちに対応しています。